mixiユーザー(id:2230131)

2021年01月21日22:40

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SOUNDTRACKS/Mr.Children

 今回のミスチルの最新作『SOUNDTRACKS』の印象を一言で言うならば、「大人になったミスチル」か(笑)。

 ヒッキーの時に使ったこの安易なコピーを再び使おうと思いついたのは、同じくスティーヴ・フィッツモーリスが関わっている仕事だからという理由ではない(それもあるけど。というか、ほとんどそれだけど)。これまではみずからのピュアさを年甲斐もなく表現し続けた「大人になれない子供たち」だったミスチルだったが、ここに来てようやく年相応の成熟さを身に着けたのだと、感慨深くなった。

 まず、エンジニアリングが変わるだけで、これだけサウンドの印象が垢抜けるものかと驚かされた。フレーズ自体はそれまでと大差ないけれど、一音一音の持つニュアンスが明瞭になった。生々しく、ふくよかなアナログ録音で、細かいディティールにも凝らされていて、明らかに現代的にアップデートされている。音数も整理されていてミニマル。
 とりわけ今回はストリングスが大々的にフィーチャーされてるんだけど、アレンジャーのサイモン・ヘイルの功績もあってか(それもあるけど。というか、ほとんどそれだけど)、従来のように「ただ装飾として薄べったく鳴っている弦」ではなく、ときに暴力的なまで力強く、そして物悲しく鳴り響く弦の響きは、アルバムの「大人」な印象を強く決定づけている。
 あまりに音が良いので(逆に今までがダサかったのもあるけれど)、個人的にはこの座組で過去の何作かをリミックスしてほしいとすら思っている(たとえば『[(an imitation) blood orange]』とか)。

 従来のミスチルのアルバムって、キラーチューンとなる何曲かの派手なシングルを先行させ、バラエティー豊かな他の曲が全体を彩るみたいな、いわゆる幕の内弁当みたいなパターンが多かったけれど(というかほとんどそのパターンだったけど)、今回はそうではない。派手なシングルは少ないし、勿体ぶったアレンジもなし。ソング・ライティング的にも従来の「桜井の鼻歌メロディ」の手癖に頼り切っていない。歌詞の世界観も、どことなく肉体の衰えや人生の終わりを意識したような寂寥感のある曲が少なくない。

 さらに、アルバムのコンセプトとしてもこれといってないし、なにか意味深なモチーフやテーマ設定があるわけでもない。繋ぎのSEみたいな仕掛けも無し。収録時間も少なめ。
 そうやって徹底的にシンプルに削ぎ落としたディレクションが、アルバムとしての統一感を高め、1枚聴き終えたときの確かな満足感をもたらしている。

 このアルバムにおける変化は、彼らの年齢を考えたら当たり前のことかもしれないけれど、ミスチルの音楽として考えると極めて異例であり、それは歓迎すべき転換なのだと僕はかなり前向きに捉えている。
 最高傑作かどうかはわからないけれど、少なくともここ10年の中ではもっとも好感の持てる盤。飽きずに聞き続けています。

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