mixiユーザー(id:2230131)

2020年12月02日12:32

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Pure Heroine/Lorde

 「あらためて10年代の優れた音楽を振り返ってみよう」、第4段はロードです。

 はじめに聴いたときに僕がもっとも関心を持ったのは、彼女の歌声でした。17歳(当時)ならではのあどけなさを残しつつ、同時に大人っぽい艶のある声質。たとえば、イマドキのインディ・ポップらしいチャームと、クラシックなシンガーが持っている風格も併せ持っている。聴こえ方の表情が変わるシンガーという意味では、近年だとラナ・デル・レイが筆頭に挙げられるだろうが、彼女ほど歌い方に作為的なものを感じない。

 そしてそんな魅力的な歌声を彩るのは、シンプルなエレクトリック・ダンス・サウンド。おそらくは彼女が尊敬するジェイムズ・ブレイクからの影響も多分にあろうか、歌声を邪魔しない程度に主張するダークな音色のシンセだったり、四つ打ちが中心だが時折心地良くシンコペートするリズムだったり、とても耳障りが良くて聴きやすい。なにより徹底してポップだ。
 
 ただし意地悪な言い方をするなら、割と近年ありがちなコンサバティブなエレクトロ・サウンドの定型に過ぎず、サウンド自体に関してなにか強い批評性、メッセージ性のようなものは感じられない。
 とは言え、あえて汎用性の高い無味無臭のサウンドに徹することで、まずはロードという独りのシンガー・ソングライターとしての魅力をリプリゼントするためのデビュー作なのだ、というコンセプトなのだとしたら意図としてはわからなくもない。

 ソングライティングについては、音のミニマルさに堂々たる自信を感じる代表曲“ロイヤル”を筆頭に、飾り気がなく正統派で、腰をしっかり据えた見事なポップスがひしめき合っている。それらがアルバム全体に、神秘的でエヴァ―グリーンな輝きを与えている。

 ただ前述したように、奇抜なアレンジメントを排した匿名的なサウンドなのもあいまってか、色彩に乏しく、どことなく印象としてプレーンな感触を与えかねない。
 たとえばヨーグルトでも、ちょっとブルーベリーのソースを足すとか、イチゴなどのフルーツを足すとか、デビュー作だからこそ逆にやぶれかぶれな勢いだったり、色気づいた野心を聴きたかったかもしれない。(歌声は十分に色っぽいんだけどね)。

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