mixiユーザー(id:2230131)

2020年10月22日12:33

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Rumours/Fleetwood Mac

 男女のカップルがいるバンドはうまくいかなくなる、という話。

 バンド内カップルが2組もいたフリートウッド・マック。だが本作『噂』の製作時、それぞれのカップルは破局直後のバラバラの状態だったらしい(おまけにミックもバンド外で離婚問題を抱えていた。)
 たしかにスティーヴィー・ニックスが文字通りドリーミーな歌声を聴かせる“ドリームス”では既に失われてしまったかつての恋心を儚げに思い出すようなサウンドだし、逆に“オウン・ウェイ”では、涙を振り切って自分をフッた恋人への怒りをギター・ソロにぶちまけている。メンバーによって感情の種類は異なるものの、このアルバムには、バラバラに砕け散った、哀しみ、怒り、孤独、妬み、虚しさ、そういった強い感情が蠢いている。

 にも拘わらず、結果として奏でられた音楽は、不思議とバンドが一枚岩でまとまっているように聞こえる。それも、時折ハッピーなフィーリングすら込められた、ナチュラルで耳障りの良いポップ・アルバムに仕上がっているのはなぜだろうか。

 冒頭の話に戻ろう。男女のカップルがいるバンドはなぜうまくいかないか。おそらく、恋愛関係ができると「恋は盲目」状態になるため、お互い甘やかしたり惚気たりして、厳しい指摘ができなくなるのでは。その結果、ぬるま湯のような呆けたアルバムを作ってしまう。
 かといって、関係性自体ができていないバンドでは、互いに遠慮し合ってコミュニケーションの密度が薄くなってしまい、人間同士がぶつかることで生まれる音楽的コンビネーションも生まれづらい。

 彼らの場合、「破局直後」だったのが逆によかったのかもしれない。かつては深い関係だった男女だからこそ、身体を合わせるように、演奏だって自然とペースを合わせることができる。しかも別れることが分かっているから、無駄な気遣いなんかせず、遠慮せずに主張や指摘ができる。お互いの長所・短所を知り尽くしているからこそ、プレイの美点を的確に引き出し、変な地雷も踏むこともない。仕事仲間としてドライに割り切れる。
 つまり、コミュニケーションを最大効率化した上で、音楽的なコンビニネーションも目減りしていない状態。実はすべてのバンドにとって理想的な状態は「破局直後のカップルがいるバンド」なのかもれない(笑)。

 彼らのインタビューを読むと、「スタジオで音楽作りに没頭することで、夫婦生活の苦痛から逃避していた」と告白している。
 いまさら悪くなった関係を修復させる気はない。だが音楽だけは、だからこそ音楽だけは良い物を作ろう。そのような共通認識だけが彼らを団結させ、鼓舞させ、そして結果的に最良の成果を生むことができた。

 バンドってなんだろう。人間関係ってなんだろう。そんなことを改めて考えさせる作品。(アルバム自体は少し古臭いところがあるけど、佳曲が多く、実に素晴らしいものでした)

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