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2020年07月09日21:52

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The New Abnormal/The Strokes

 ここ数年、自身の別バンド、ザ・ヴォイズで好き勝手やっていたジュリアン・カサブランカス。もはや興味は失ってしまったかに思えた本家ザ・ストロークスとしての7年ぶりの新作『ザ・ニュー・アブノーマル』は、そんな心配が杞憂に終わるほどの、ど真ん中の王道ストロークス・アルバムだった。

 紆余曲折を経て、よくも真ん中にドンピシャで合わせられたな、というのが第一印象。
もともと彼らの音楽はスタイリッシュに細部までデザインされたロックで、若さゆえの初期衝動と、反抗心と、ロック的なセンスとが、微妙なバランスで成り立っている類のサウンドだった、というのが僕の持論。

 だけど、もうすっかりベテランの域になった彼らにとって、加齢と共に「かつての繊細なバランス」を再現すること自体、難しくなってきているはずなのだが…。驚くべきことに本作はアイディアの新鮮さがデビュー作と比してもまったく輝きを失っていない。僕はそのことに心底驚いている。(君は『ヴァーチュー』のやさぐれ具合をみたか)。

 『アングルズ』あたりのころはバラバラだったはずの各プレイヤー同士のコンビネーションにしても、明るく前向きな方向で団結しているように思える。曲調が明るい、という意味ではなく、バンドの意気込みが明るい。
 象徴的なのはシングルの“Bad Decisions”で、まるで80年代のネオアコのような瑞々しさを讃えている。デビューから20年を経てこれだけ初々しいサウンドを奏でるロックバンドは数えるしかいないと思う(ザ・キュアーとかニュー・オーダーくらいか?)。
 余談だが、ビリー・アイリッシュが本作にハマって「1日に7回聴いている」とツイートしたことが話題になっていたが(笑)、そうやって今も若いアーティストに再評価され続けているのは、滅びゆくロック・ダイナソーなんかではなく、現代の耳で聴いても普通にカッコいい数少ないロック音楽のひとつ、と普遍的に捉えられているからなのだろう。

 リック・ルービンをプロデューサーに招いたのも、そんな彼らの前向きさが表れているように思える。本来彼らのようなローファイな音像にはミスマッチな人選に感じられるが、あえてインディー魂を後退させてもメジャー感を優先させる。ルービンらしい音数を絞ったミニマルなプロダクションによって、彼らのプレイひとつひとつそのものの美しさはかえって際立って聴こえるので、これはこれでアリなんじゃないかと思う。

 ゼロ年代以降に出てきたロックバンドの中でストロークスの影響を受けていない人たちはいないと思うけれど、長い沈黙を破って本家がこのような誰もが真似したくなるような模範的ロック・アルバムを作り上げてきたことに、僕は感動を禁じ得ない。

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