mixiユーザー(id:2230131)

2019年12月20日15:07

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Superorganism/Superorganism

 白人と黒人の人種混合バンドというのは過去それなりにあったけれど、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、日本、韓国と、これだけ異なる国にまたがった「多国籍」バンドはスーパーオーガニズムがはじめてなのではなかろうか。

 ただし音楽のジャンルとしては、割と欧米寄りの「ロー・ファイな録音で、フロアライクなインディ・ダンス・ポップ」というところでキレイに収まっているように感じられる。どことなくM.I.A.が出てきたころの無国籍感も漂わせ、寄る辺のないボヘミアンな佇まいはMGMTあたりを連想されるかもしれない。

 むしろ彼らは使っているサウンド/アレンジの方に個性が発揮されており、異常に変調を効かせたヴォコーダー、一部分だけ執拗に繰り返すループ、カット&ペストされたコラージュ・サウンド、ファミコンのような8bit音、フィールドレコーディングされたと思しき日常的なSEなど…。
 まあ、これらもベックをはじめとした色んな作家によって発掘されてきた音ではあるのだけれど、演出というか、組み合わせの妙に彼らなりのこだわりを確かに感じさせる。(コーラス終盤、ブレイク前のここぞ!というときの「ハズシ」アレンジ!)

 一番新しいと思ったのは、前述した過剰なサウンドを数多の実験音楽のように難解にリスナーに提示するのではなく、あるいはM.I.A.のように政治的/攻撃的なアジテートの手段として武装してみせるでもなく、あくまで耳障りの良いポップ・ミュージックに仕立てているところ。
 それこそ子供が口に入れても苦くないようにシュガーコーティングされたポップスで、個々のサウンドだけを取り出せば過激と言ってもいいくらいなんだけど、口当たりがなめらか。奇妙な脱力感すら感じさせる。

 あどけなさとクールさが共存するオロノの声も、この独特な雰囲気作りに一役買っていると思う。本当に、小さな子供がオモチャでキャッキャ言いながら遊んでいるような場面を連想する、かわいらしくて素敵なアルバムです。(意外と楽曲の質も高いよ)

 個人的な思い出になるんだけど。台風の影響で会場に行くのがずいぶん遅くなってしまった、前回のサマーソニックにて。
 一発目に何気なく立ち寄ったマッシヴ・ステージで聴いたのが、彼らとの出会いだった。一気飲みした2杯のビールが身体に吸収されるよりも早く、まさしく水を得た魚のように、その多幸感に満ちたサウンドが全身に素早く吸収されていくのを感じ、「ああ、気持ち良え音だなぁ…。そうだ、俺は渋滞でイライラしていたんではなく、音楽が足りなくて身体が乾き切っていたんだなぁ…」と。あの日ほど「音楽の効能」について実感した日はない。かもしれない。
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