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2019年10月23日12:31

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Ikoyi Blindness / Kalakuta Show/Fela Kuti & The Africa 70

 フェラ・クティは暑苦しい。彼のビジュアルや思想面含めて、すべてが暑苦しい。彼の吹くサックスの音もまず暑苦しい。“イコイ・ブラインドネス”にて繰り返されるテーマのメロディは、フレーズそれ自体が耳にべっとりとへばりつくようなキャッチーさで、実に暑苦しい。バリバリに割れた録音によるホーンの音も暑苦しい。ボーカルも暑苦しい。あれはボーカルというよりただがなっているだけのようだが、つまり暑苦しい。唐突に挿入されるコール&レスポンスも、女性コーラスなのに清涼感が乏しく、どちらかというと暑苦しい。

 だが、ヒップホップにおけるパブリック・エナミーの音楽が暑苦しかったのと同様、社会の不平を訴えるフェラ・クティの音楽も、どこまでも暑苦しくならなくてはいけない。これは涼しい室内でお茶でも飲みながらゆったり楽しむ類のラウンジ音楽ではなく、民衆の意識を呼び覚まし、爆音で脳を叩き起こし、革命へのモチベーションを促すプロパガンダなのだから。

 というわけで、本作は西洋的価値観にまみれたラゴスの上流階級を批判する『イコイ・ブラインドネス』と、警察にカラクタ共和国を襲撃された事件を元にした『カラクタ・ショウ』をCD1枚にコンパイルした作。やはり、それぞれのタイトル・トラックが聴きどころだが、他の曲も10分越えの大作仕様で、暑苦しい曲が60分パンパンに詰め込まれている。
 
 とは言え、“カラクタ・ショウ”におけるパーカッションとアフロ・ドラムス、そしてギター・カッティングの組み合わせとループの妙は、ある種のクールな洗練さえ感じる。フェラ流アフロ・ビートが遂に完成の域を見た、といっていい完成度。ただこの曲も、後半は暴力的なまでに騒がしいサックスのソロが連発され、行き着く間もない暑苦しい展開。
 今は同時にEW&Fのアルバムも聴いてるんだけど、それと比べてフェラ・クティのアルバムはとにかく疲れる!(笑)これだけてんこ盛りの展開の割に、ベースとなるリズム自体は延々と続くものだから、アルバム1枚通して聴くと正直グッタリしてしまう。だが演奏それ自体のレベルは異様に高く、素晴らしいのだから困ってしまう。

 これは逆に、暑いときに辛い物を食べたり、サウナに行ったりする心境に近いものを感じる。暑い日は、逆に汗を出し切ってしまえば意外とスッキリするもの。
 うだるような暑い夏、汗をかきながらフェラ・クティを爆音で聴くのはいかがだろうか。(季節感まったくないレビュー…)

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