先日、ローリング・ストーンズの『
ダーティ・ワーク』という作品をレビューしましたが、今回はクイーンの84年作『ザ・ワークス』をレビューします。(古いロックばかりですまん)
「綺麗な仕事」でもなく、「汚い仕事」でもなく、シンプルに「仕事」。前作『
ホット・スペース』のブラック・ミュージック路線が振るわなかった反省もあってか、そっち系は完全に封印(個人的には嫌いじゃなかったんだけど)。メンバーのソロ活動など小休止を経た上で発表された本作は、その名の通り、音楽家の仕事人として、ファンの望む音楽を期待通りに職人的に作り上げることに専念したアルバムと言える。
大ヒットした“RADIO GA GA”がいかにも80年代的なシンセが炸裂した変化球ではあるが、それ以外はクイーンのパブリック・イメージに忠実な、悪く言えば保守的な楽曲が揃っている。ただし、前述した“RADIO GA GA”はロジャー・テイラー作、そして南米など英語圏以外で思わぬ人気を博した“ブレイク・フリー”はジョン・ディーコン作、後にライブエイドで圧巻のパフォーマンスを見せる“ハマー・トゥ・フォール”はブライアン・メイ作。
ということで、すべてのメンバーの持ち味をそれぞれ生かした良曲が、しかも均等に収録されているという意味で、バランスの取れた民主的な作品でもある。
唯一、フレディだけは“永遠の誓い”というロッカ・バラッドの佳作があるもののやや低調気味で、むしろ他のメンバーが彼のスランプをなんとか補おうとしてソングライティングの底上げがなされた、という印象を受ける。ただでは転ばない。バンドという集合体はこれだからおもしろい。
というわけで、新味がないという点で、少々「置きに行っている」感は否めないが、どんな状況であろうと聴衆の期待にキッチリと応えて成果を出す。彼らがプロの音楽家としてちゃんと「仕事」のできる集団であることを証明した一作。
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