多方面からその偉大な功績を耳にするものの、「なんかうるさそうな音楽だな」(偏見)とか、「なんか汚そうな音楽だな」とか(失礼)、あるいは「なんか黒っぽい音楽だな」(これは事実)とか思い、なんとなく手に取ってこなかったフェラ・クティ。ついに初体験です。
そんな勝手なイメージと反して、意外と洗練された音楽でした。ファンク・ミュージックの黒さ、その肉体的なグルーヴを体現しつつも、構造としてはインブロヴィゼーションによって演奏されるジャズが基調となっている。演奏スタイルや楽器云々ではなく、構造としてのジャズ。
たとえるなら、JBがソウル畑から出てきたシンガーなら、フェラはジャズのサックス奏者。西アフリカでガラパゴス的に進化した土着的なジャズ(ハイライフ)と、前述したJBからの影響の亜流進化系とでも呼ぶべきか。
そしてなにはさておき、トニー・アレン!フェラ・クティのサウンドのキモとなるのは、みんな大好き(というか個人的に超好き)トニー・アレンのドラミングによって生み出されたアフロ・ビートに他ならない。トニー自体も出自はジャズだし、あのテクニカルで味のあるフィルインは完全にジャズ由来のもの。
だが彼はそこに酩酊的なファンク・グルーヴを注入することで、一気にそれをダンサブルなものに変えてしまった。なのでアフロ・ビートというのは、平たく言ってしまえば「踊れるジャズ」と言えるのではないだろうか。(ホントに平たい説明だなぁ)
もっとも、トニーの音楽的な貢献は計り知れないものの、本作はあくまでフェラ・クティによるフェラ・クティのアルバムなので、残念ながら本作においてトニーはフェラの引き立て役としてバンドの黒子に徹している。
たとえば、トニーが主役だった
ロケット・ジュース&ザ・ムーンに比べて、単純に録音された音量のレベルが小さいってこと(笑)。聴こえてくるのは、とにかくけたたましくバカでかい音量で響き渡るフェラのトランペットだったり、大声でアジテートするボーカルだったりする。だがそれはフェラの音楽において必要不可欠なものでもある。
いいかげんアルバムの話をしよう。本作は、直訳すると「高価なウンコ」(笑)である『Expensive Shit』と、ジンジャー・ベイカーがプロデュースした『He Miss Road』のアナログ2作をCD1枚にコンパイルしたもの。後者については、レイドバックし過ぎていていかにも「カップリング・ウィズ」って感じで、興味深い曲はあるけれどいまいち乗り切れなかった。
なので、前述したようなフェラ・クティ・サウンドの名刺代わりになるのは前者の作品の方だろう。1曲目“Expensive Shit”は、トニーの凄まじい変拍子がインサートされた瞬間から最後までアガり続ける曲だし、2曲目“Water No Get Enemy”はアーバンなジャズっぽい大人なムードで始まったかと思いきや、激キャッチーなフェラのサックスが扇動する。この2曲だけで聴く価値あり!
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