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2019年04月08日12:43

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Flowers in the Dirt/Paul McCartney

 エルヴィス・コステロとの共作が話題となったことで、80年代のポール・マッカートニー作品(なにかと評判が悪い)としては、比較的人気の高い本作『フラワー・イン・ザ・ダート』。

 エルトン・ジョンを高く評価していたのは、意外とポールではなくジョン・レノンの方だったという逸話にも象徴される通り(実際にエルトンとジョンはコラボもしている)、音楽家というのは自分とは好対照な作家に惹かれるものだろうか。ポールは今は亡きレノンの面影を、どこかレノンに通じるところのあるひねくれたアイロニーに満ちたコステロに求めた。

 “マイ・ブレイヴ・フェイス”や“ユー・ウォント・ハー・トゥー”に顕著なように、ポールらしい親しみやすいポップなメロディ・ラインに、いかにもコステロ的なひねくれたフレーズが合いの手のように飛び出してきて、なかなかおもしろい曲に仕上がっている。
 ただコステロとの共作は4曲のみであり、アルバム全体の印象を大きく左右するほどのトピックスには成りえていない。

 全体的なサウンドの質感としては、スネアの硬さや、跳ねた鳴りだったりが、いかにも80年代感を体現している。正確に言えば、80年代から90年代に移り変わる過渡期的なサウンド。(余談だが、“マイ・ブレイヴ・フェイス”におけるギターのリヴァーヴの掛かり方が同時期のスピッツにソックリ。つまり彼らが影響を受けた80年代的なネオアコってこと)。
 そして80年代的なゴージャスさを体現するように、トレヴァー・ホーンやデヴィッド・フォスターなど当時一世を風靡したプロデューサーを複数あてがうことによって、楽曲毎に作風が異なり、わかりやすく「幕の内弁当」的なバラエティー豊かなアルバムに仕上がっている。

 この辺の「プロデュースされ過ぎたポール」は彼の長いキャリアではちょくちょく顔を見せるが、これを是とするか否とするかは長年のファンでも意見が分かれるところだろう。個人的には、ビートルズ時代のころの「手作り感覚」というか、なんでも自分たちでやってしまうというDIY精神―――ゼロ年代以降の価値観で言えば「インディ・バンド魂」が好きだったので、それが失われてしまっているのは残念な気がしないでもない。

 ただし前述したように、「親しみやすいグッド・メロディを量産すること」、つまりポール・マッカートニーという作家のもっとも良き部分はなにひとつ失われることなく、高いレベルで結実しているのも事実。結果、作品のゴージャス感も相俟って、なんだかんだで長く楽しめる飽きの来ない作品集に仕上がっていると思う。
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