前作『
ゴースト・ストーリーズ』の姉妹盤という位置づけで、短いインターバルで発表されたコールドプレイの最新作『ア・ヘッド・フル・オブ・ドリームズ』。
平たく言ってしまえば、暗く、静謐で、白と黒のモノトーンな印象だった『ゴースト〜』に対して、本作は明るく、アップリフティングで、カラフルな色彩を帯びた作品。もっと単純に言うと、「陰」と「陽」。
もっとも、そんな風に単純に一方向のベクトルで現在位置を特定できないのが最近のコールドプレイであり、かねてから僕が懸念していた「セレブ方向」というまったく別のZ軸が加わってしまうことで(笑)、このアルバムの解析は少々ややこしくなっていく。
作風としては、前作で培ったモダンR&B的なプロダクションを一部で継承しつつも、基本的には『
マイロ・ザイロト』時代へ揺り戻したような、アッパーなピアノ・ロック/ギター・ロック的なバラッドが全面復活。エレクトロ感も満載で、かなりバラエティー豊かな内容になっている。久々にジョニー・バックランドらしいリヴァーヴの効いたギターも堪能でき、バンドの音が見えやすくなった。
このあたり、プロデュースを務めたスターゲイトの功績がかなりデカい。本当にどの曲もディティールまで趣向が凝らされていて、楽曲事に異なる仕掛け/SEが登場する。だが隅々まで細かく作りこまれていることに感心する反面、同時に没個性的で、メジャーな音で、金の匂いがする、すなわちコールドプレイである必要がまったくない超絶ポップなサウンドに対して、従来のファンは違和感を禁じ得ないはず。自分もまったくそう。前述した「セレブ方向」はMAXにまで達し(笑)、ビヨンセとのたいしておもしろみのない共演“ヒム・フォー・ザ・ウィークエンド”に涙が出そうになった(もちろん悲しい方の涙)。
だが不思議と、楽曲の質、すなわちクリス・マーティン節の泣きメロ自体はそれなりに高いレベルにあるので、アルバムとしての完成度は立派なものに仕上がっている。う〜む。なかなか評価の難しいところではある。
唯一、新鮮な驚きがあったのは、“アドベンチャー・オブ・ア・ライフタイム”、あるいは“バーズ”のリズム面にて発揮された、エレクトロ・ファンクや、ディスコのモダンな解釈。多分に漏れずこれもスターゲイトの入れ知恵だろうが、まさかコールドプレイの曲で踊れる日が来るなんて、『
美しき生命』のころは思いもよらなかったもんな。
ただ、“アドベンチャー〜”で言えば、アウトロは相変わらずクリス節の泣きメロ&合唱コーラスが炸裂してしまい、楽曲のグルーヴィなムードと微妙に合ってない気がするので(笑)、やっぱりこの人はメランコリー専門の人なんだな、と再確認したり。
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