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2012年10月20日18:00

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A Hazy Shade of Winter

 『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』というテレビドラマをご存じだろうか。

 当時、売れっ子だった野島伸司が脚本を手掛けた94年のドラマで、いじめを受けた主人公の少年(堂本剛)が物語の中盤で自殺してしまい、後半は主人公の父親の復讐劇になるという非常にセンセーショナルな内容だったと記憶している。多感だった一時期の僕は、ご多分に漏れずすっかり影響を受けてしまった。(こうして「中二病」は作られる。本当に中二だったし)

 そのドラマの挿入歌が、サイモン&ガーファンクルの“冬の散歩道”だったこともしっかり覚えている。「の名曲」として一般的には認知されている曲だけど、僕はドラマの影響でそんな風には全然思えなくなってしまった。サイモン&ガーファンクルにしては珍しく力強いビートを伴った楽曲で、一見爽やかな12弦ギターのリフも、僕にはどこか暴力的な匂いを感じずにはいられない。

 いじめ問題が再び社会問題化してきた今だから言うわけではないけど。例えるならその「匂い」とは、多感な思春期を送る10代の少年(少女)が、その不安定さゆえにいとも簡単に仲間にそそのかされ、望んでもいない暴力にあえなく加担してしまう。そんな集団心理における、危うい空気感そのものについての匂いだ。

 人間の健全な情緒、あるいは社会的な規範とは、成長しながら次第に身につけていくものだと思うけれど、10代の少年少女は心身が未成熟なゆえに、簡単に誘惑に流され、またそれまで育んできたイノセンスも一瞬のうちに失ってしまう危険性を孕んでいる。もっとも、多かれ少なかれ誰しもがそうやって周りを傷付けながら、あるいは自分も傷つきながら、多くを学んで大人になっていくわけだけど、その変化がドラスティックなのが10代という時代。
 

 白いウサギのように傷つきやすいそのまっさらな心が、世俗にまみれることで泥ネズミのように汚れていく…。その瞬間は皮肉なことに、儚くも美しい。“冬の散歩道”の12弦ギターのように、蒼く、美しい。
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