mixiユーザー(id:2230131)

2012年06月25日21:59

526 view

Rocket Juice & the Moon/Rocket Juice & the Moon

 毎度お騒がせなデーモン・アルバーン。今回のサイド・プロジェクトは、レッチリのフリー、フェラ・クティの右腕トニー・アレンという豪華布陣を従えたドリーム・バンド。

 コンセプトは至ってシンプル。フェラとフリーという、世界有数の実力を誇る名手二人にテキトーにジャム・セッションをさせてみたら、そこにどんなグルーヴが生まれるのか。ただ、それだけ。
 たとえて言うなら、モハメド・アリとマイク・タイソンを同じリングに上げたら、もうそれは自然発生的にとんでもない試合が観られるのは誰の目から見ても明らかなわけで。それと同様に、このプロジェクトも一切の準備がなかったにも拘わらず、当然のように凄まじくグルーヴィーな怪物作品が誕生してしまったという。考えてみると身も蓋もないアルバムではある。

 とは言え、「トニーを活かすバンドを作りたかった」とデーモンも語っている通り、実際はフリーがトニーに活躍の場を譲るような格好となっている。トニーのアフロ・ビートの合間を縫うように、フリーがいつもより控え目で、だが確実にツボを心得たふくよかなフレーズを弾きまくる。これぞ変拍子の醍醐味。トニーのタメを効かせたフィルインがまた気持ち良く、それに反応したフリーが素晴らしい相の手を重ねている。

 プロデュースの方向性もわかりやすい。ドラムス本来の音色の豊かさを強調すべく、(バカでかい音量で録音されていることを除いて)、一切の加工が施されてないレアな質感で通している。エリカ・バドゥをはじめとする豪華客演陣が話題になっているが、それもあくまで本作を彩るアクセントに過ぎない。彼らの醸し出すグルーヴは、ときにファンキーであり、ときにジャジーであり、ときにダブっぽくもあり、あくまでリズムに特化した印象。

 そんな全体のディレクション以外にデーモンのやっている仕事と言えば、いつものように鍵盤でメロディアスな旋律を乗せるとか。さすがにリズム一本ではポピュラー・ミュージックとして成立しにくいと思ったのか、なにやら奇妙なビープ音を鳴らしていたり、やり過ぎと思える箇所もたまに見られるが、その試みはおおむね成功しているように思う。
 とりわけリード・トラック“ポイズン”に関しては、旋律の美しさにとうとう堪え切れなかったのか、自分でリード・ボーカルを取っていて、それによってまた一段と味わい深い逸品に仕上がってしまっているのが憎い。ちなみにこの曲でのフリーのプレイは、彼の仕事でもベストのひとつに数えられるはず。

 ここのところデーモンのプロジェクトにハズレはないけど、今回は特に出色の出来だと思う。はじめて本作を聴いたとき、僕はあまりの凄さに笑いが止まらなかった。何十回と聴いても、何百回と聞いた後でも、腰が反応するのを止めることができない。
 マジで、バンドでリズム隊をやっている人ならジャンルはともかく一度は聴いておいた方がいい注目作。
2 4

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2012年06月>
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

最近の日記