いやあ、若い。若い。おそらく、ビースティ・ボーイズを知らない人が本作『ホット・ソース・コミッティー・パート2』を聴いたら、10代の新人のアルバムだと思ってしまうに違いない。ここにきて30年は若返ったんじゃないかと思えるくらい、フレッシュな盤だ。
デビュー当時から変わらず悪ガキ的なメンタリティを持ち続けていたビースティーズだけど、必ずしもその若さが音楽性まで反映されていたわけではなかった、というのが僕の認識。とりわけ全曲インストだった『
ザ・ミックス・アップ』では、悪ガキとは正反対な大人のためのラウンジ・ミュージックと化していた。このまま彼らもつまらない場所に収まっていくのかと思いきや、MCAの病気療養を経てリリースされた本作のサウンドは、一気に先祖返りを果たしてる。エッジが半端ない。
基本的にはセルフ・プロデュースなんだけど、ミックスにフィリップ・ズダールというフレンチ・ディスコ界隈の人材を起用している。おそらくこの男がキーマン。
そもそも本作は、前作と同じく生演奏をベースに作られた『ホット・ソース・コミッティー・パート1』を一旦はボツにして、新たに録り直したものをパート2と呼んだという非常にややこしい経緯があるらしく、かつての生演奏の名残を随所に感じさせるんだけど、表面的にはそう聴こえないくらいミックスがいじられている。強烈なダブ処理を加えた後に、アンプがジリジリと焦げ付くまでブーストさせたような、獰猛で、野蛮で、殺伐としたプリミティヴなサウンド。「本来ならメジャー・デビュー作『ライセンスト・トゥ・イル』の前に作られるべきだった作品」と本人たちも語っている通り、なるほどたしかにハードコア・パンク・バンドだったころのビースティーズを思わせる(詳しく知らないけど)若き日の暴力衝動に満ちている。
さらに、以前『
ハロー・ナスティ』の評で言及した「ラップの相性問題」も、いつのまにかアッサリ解決していることにも気付かされる。要するに、ブラックなグルーヴを感じさせないビースティーズの下手くそなラップも、このサウンドの上では意外なほどピッタリとハマっているのだ。
ただし、終始一貫して攻めの姿勢を崩さない暴力的なサウンドなので(笑)、さすがに年寄りの僕なんかは最後の方で胃にもたれてしまう感もなくはない。それもあえての選択とは思うけど、サンティゴールドをフィーチャーした南国っぽいムードの“ドント・プレイ・ノー・ゲーム・ザット・アイ・キャント・ウィン”がひとときの清涼剤に思えてしまうくらい。
とかく本作でのビースティーズは傍若無人な若さを取り戻している。完成度云々はさておき、かつては悪ガキだった男子にとっては血肉沸き踊らずにはいられない内容に違いない。俺も若返りたい。
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