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2019年11月18日08:17
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絵画と彫刻
聞いちゃった。
アーティストがなぜ作品を作り続けるのか。
出来上がった作品には表れていない「作るとき」が楽しいこともあるのですって。
描く、そして現れる
画家が彫刻を作るとき
@DIC川村記念美術館
【展覧会構成】
１.絵画の実験から彫刻へ
２.反絵画としてのオブジェ、あるいは彫刻
3.ポップアートとミニマルアート
４.絵画の向こう側：映像と空間
25人のアーティストの
平面/立体の作品がそれぞれ展示されていました。
岡本太郎
→☆エッケホモ ★愛(FRP)
マグリット
→☆感傷的な対話 ☆真実の井戸 ★真実の井戸(富山県美)
クーニング
→☆風景の中の女��(広島県美) ★脚をくむ人物(前澤友作コレクション)
…という具合い。(☆は平面、★は立体作品)
印象に残ったのは、まず【絵画の実験】では
◆ピカソ
→★水浴者(セラミック 彫刻の森美)
粘土板を人物の形に切り取り、両手を前後にひねって立体にしたものです。
平面が立体になった瞬間のようで面白い。
◆ジャコモ・パッラ
→★バルティクタクのバレリーナ(真鍮針金 ふくやま美術館)
続く【反絵画】では
◆山口勝弘
→☆ヴィトリーヌ静かな昇天
油彩の上にでこぼこの地紋があるガラスを貼ったもの。
(平面といえるのか不明。まあ分厚いながら額縁状なので)
ガラスの凹凸で油彩がはっきりとわからないようになっています。
◆リキテンシュタイン
→☆エンタブラチュア��
パステルカラーとゴールドのボーダーが美しい作品。
＊＊＊
トークイベントを聴きました。
写す、そして現れる〜空間のなかへ
長島有里枝(写真家・作家)×石田尚志(画家・映像作家)
【人選】
はじめに出品作家ではないお2人をなぜ呼ばれたか、
その人選理由が司会者から説明されました。
今回の展覧会は20世紀の画家の彫刻の展覧会です。具体的には、ピカソ、デュシャン、ジャスパー・ジョーンズからジャッド
日本の作家として中西夏之、榎倉康二で締めくくる構成になっています。
これがジャンルとして成り立つのか？
まとまった意味があるか？
彼らの創作には彫刻家と違う理由が何かあるのでしょうか？
例えばレンブラントや長谷川等伯は彫刻作品を作りませんでした。
しかしその後のルノワールやマティスの彫刻はあります。
彼らは絵の中だけでは完結しなかった。
その他との関係を考える必要ができたのでしょうか。
本日お越し頂いた石田尚志さんは絵画からパフォーマンスを行なっていらっしゃいます。
絵の中からプロジェクションとして空間に踏み出した先駆者としてお話いただきたいと思います。
また、写真家の長島さんは
あざみ野の展覧会で、木工家具に写真を
焼き付けた作品を出されていて感銘を受けました。
それ以前にも手芸的な縫い合わせたり組み立てたりという作品はありましたが
立体化する要素もあったのでしょうか。
写真は第三者的なものですが、元々はセルフポートレイトから出発されましたので何かを踏み越えた動機等をお話し頂きたいと思います。
【石田さんのお話】
いま大変緊張しています。
自分の中で彫刻が問題になっているタイミングでしたので展覧会は楽しみにしていたのですが、
こうしたことになりまして何か考えて話さなければならない
そして初対面の方と対談もしますし、とややこしい状況になっています。
そこでまず展覧会について書いてきたものを10分くらい読んで、そのあと自分の作品について話させていただきます。
彫刻とは何か、と考えるとまずそれは裏側に回り込むことができるものだということがあります。
絵画にはそのような連続性や影がない。
しかし彫刻には重さや厚みや影があり、触ることを許すような存在です。
光やちょっとした見る角度で印象がダイナミックに変わり、いわば時間が野ざらしでもある。
この展覧会はキュビズムで始まります。
キュビズムは自分の向こうにあるものを、様々な奥行きで描きます。
例えばこれはギターや紙等、それらが触れることのできる場所、自分の手で回転させられる場所で描くという対象との近さがあります。
私にとってのキュビズムとは、そうして絵画そのものの回転に至ったと考えています。時間の集積というか。
ピカソ(のキュビズム絵画)を初めて見たとき目がくらくらするような、目が爆発するような経験をしました。
具象絵画なので「見られている/そこにあるもの」なのですが、時間の相対が平面の四隅で支えきれずに楕円化している。
ピカソの時間の絵画は"青の時代"からみられます。
盲目の人物や目をつぶっている人、こちらを向いていない人が登場する。
およそ画家にとって怖いのは盲目の人を描くことです。なぜなら光の反射を見られないから。
例えばこの絵ではテーブルについている盲目の人が水差しに手を伸ばしている。
モノと手の出会いが描かれている。
手で世界を知る。
腕組みをしている人々は世界と繋がらない。
触ることが絵画を爆発させたのだし、そこに手が介入したということ。
また、青の時代のピカソの絵にはモチーフとして海など水も多く登場します。
僕は大気の震えや時間や音楽を描きたかったのですが
「水」も直接持てないし透明で見えないものです。
今回の展覧会にはピカソの◆水浴の男
という彫刻が出ています。セザンヌを思い出させますね。裏へまわるとパンツはいてなかったりして面白い。
裏と表、といえばアニメーションは
表に鳥、裏に鳥かごを描いたウチワをくるくる回すと鳥ガゴカゴに入っているように見えるおもちゃね、
残像のおもちゃとして始まりました。
晩年のピカソは筆圧の強いドローイングを描いて、下に写ったへこみを少しずつずらして変えて描いたりした。まるでアニメです。
ピカソが映像を作っている記録映画があるのですが
くるくるまわっている。
絵画にはできないことをやろうとしている。
そこから始まるとても豊かな展覧会でした。
(ここからご自身の作品映像の紹介。
2015『渦巻く光』の窓からの光や燃える椅子、懐かしい！)
その後の作品としては
どこに→イサム・ノグチのこけしのある神奈川県立近代美術館外壁に映す
何を→空間に赤外線でかいた軌跡
もう、最終的には踊りでいいのかな、と思います。
超新作ではあるところにセラミックの板をおいてみました。
【長島さんのお話】
今回のお話をいただくきっかけ
になった個展は
知らない言葉の花の名前
記憶にない風景
わたしの指には読めない本
というタイトルです。
私は元々写真家になりたかった訳ではありません。
作品を作っている途中で、たまたま審査員だった荒木経惟氏に勧められて写真家になりました。
文章も書いています。
前述の展覧会では学芸員の天野さんに「書いた本について展示して」と依頼され
なぜ自分が文字の表現をするのか改めて考えました。
写真は目の前にあるものしか撮れません。終わったものも撮れません。
私は子育てが大変な時期、カメラを持って出掛けられない時代がありました。
そんなときに思い出したことがいろいろあって
頭のなかの「見える記憶」を見ながら文章を書き始めたのです。
文字と写真に撮れないものを結びつけて。
でも最終的に文章を日本語で書くと海外で発表できないんですね。
そういったメディアの制限を越えたくて、私の本が読めないひとと一緒に展示を作りたいと思いました。
今回の個展では全盲の人に手伝っていただきました。
写真の見えない人がどうやって鑑賞できるか。
１つの答えが家具に写真を貼ることでした。
私は写真を「物質」だと思っています。
ピアノ、テーブル…自分の家にある家具を単純化して。
貼った写真がモノクロなのは自分で暗室作業をしてプリントできるからです。
壁に貼った手のクローズアップ写真は、半田こずえさんが私の本を読む様子を撮ったものです。
彼女は1歳で視力を失ったので点字が読めるのです。
作品の中ではコミュニケーションを大切にしています。
20歳のデビュー作はセルフポートレイトでした。
これは家族が家の中でいつもしていることをヌードで撮ったシリーズ。
写真はパフォーマンスの記録というか、撮る目的がないと起こらないこと、みたいなものを演じています。
お風呂やさんだったギャラリー(ｽｶｲｻﾞﾊﾞｽﾊｳｽ?)では、この家族の写真を畳の大きさにプリントして、組み合わせて四畳半を作るというインスタレーションをしました。
写真は対象と距離がないとボケてしまいます。
私は隅っこで人々を見ているような子供だったので
盗み見るように撮っていました。
でも人生を重ねると立場も変わってきます。
子供からはお母さんという見られる対象です。
それでは撮りにくい。
写真を展示という形で発表するようになったのは90年代のアメリカ留学以降です。それまでは写真集。
ところが展示したら、額縁のガラスに自分が映るんです。自分を見てから奥の写真をみる、というレイヤーが発生して。
額縁の影がおちる、というところから写真が立体になっていきました。
これは680人のポラロイド写真とその人たちに玉どめを作ってもらった
千人針のシャツによるインスタレーション。
妊娠中に9.11が起きたので、子供が戦争に行ったら、とか戦争のときに女性がどうしていたのか、と考えて作りました。
寅年のひとは多く縫えるとかきまりがあって、680人。
千人針自体に実質的な意味はないのですが持つ人と送り出す人の気持ちを押し上げる効果を持つものです。
これはカラーアクリルを貼って額からはみ出る写真たち。床置き。
あ、写真はいつもフイルムで撮っています。
その方が物質感があるから。
これは祖母の死後、遺された押し花をフォトグラムにしました。
同時に祖母の鏡台の中身、これは写真に撮らずにそのまま並べてインスタレーションに。
写真に撮る必要があるものとないものがあると思います。
【お2人のトーク】
石田(以下石)「全盲の方の話が出てきて驚きました。僕もピカソの青の時代の作品について手と水というモチーフを通して考えていたので。
ひとつのメディアと他のメディアというコミュニケーションの断絶をどうするかは作家の課題ですね。
長島さんはコミュニケーションの問題が最初から大きかったんですね
僕は人を撮らないんで。作品には自分しか出てこない。
最後は踊りかな、と思ったりします」
長島(以下長)「踊り、そうですね。
私は子供の頃バレエをやっていたので、あの感じを出したい、とかどうしても思ってしまう」
石「結局根っこはそこですね。
現代が始まる20世紀はじめには身体に対する冒険があった。」
石「長島さんの写真を見ているとカメラごどこにあるか、どうしてこの角度なのか。
お友だちを撮られたシリーズでは撮っているほうの身体を感じました。
一方フォトグラムはモノ的。
僕は機械が嫌いで、露出計算も友人頼みですし現像もしないので写真の謎を感じます。
この展覧会でお好きだった作品は？」
長「ピカソの裸のおじさんですね。
折角彫刻なのに薄い！(笑)
あとはバッラのダンス。
自分が踊っていたのでダンスって描ききれるのかな、と、思ってしまう。自分が記録を頼まれた時にも違和感があります。踊る人は絵で満足できるのか」
石「ドガは沢山の踊り子を描いていますね。
体の動きや時間…絵ってなんだ？と考えさせられます。
かっこいいキムタクの写真は、キムタクがいいのか写真がいいのか。
ずれている」
司会(以下司)「石田さんの作品は壁や床に投影されます」
石「壁だけでなく床が登場すると向こうまでの距離ができる」
長「壁に作品があるのは変なんですよね。浮いているというか」
石「最初置いてあったんでしょう。なぜ立ち上がったのか」
長「床置きするとモノになる」
石「置いてあると上から覗き込むひ重力が発生しますね。
それこそ小林正人さん？」
(前回のトークにご登場)
それぞれの作品についてのお話が弾みます。
石「デ・クーニングも出ていましたね。
メディウムの作品があって、短い彫刻製作を経て抽象画へ移行した。
移行するのに彫刻があり必要だったのでしょうね。何があったんだろう？」
長「フランク・ステラの作品は絵画でも分厚くて立体感といえかモノ感がありました」
司「ステラは自分で額を作っていました」
石「バッラの絵も額額可愛かったですね。
未来派でスピードとか騒音とかそれまで美の対象でなかったものをやっているのにこんなに可愛い額を作って…最後は家具も作っていたんですよね？」
司「壁紙とか食器とか室内装飾全てです」
石「ジャッドというとんがった現代美術がこんなに豊かだったんだと改めて感じました。
家具の装飾博物館で19世紀の家具をジャッドが並べた展示を見たことがあるのですが
並べただけなのにものすごくかっこよかった。
長島さんの家具作品もピアノとかいいですねえ」
長「私は石田さんの踊るような描き姿が忘れられません。
絵画は静かで動きの少ないものだと思っていたので。
彫刻の方が身体的だと思っていたのがいい意味で裏切られましたね」
石「映像が生まれた時代に画家が描こうとしたのはモノの間の大気や光ですね。
スーラは点描していて寝てしまったらしいけど」
司「スーラは労働集約的でした」
長「描いているところは残らないんですね。
写真も私は画面の外側の見えないところにいます。
セルフポートレイトでも、セルフタイマーをセットして
10秒くらいの間に走っていって作品になっているようなテンションに自分をもっていって
この辺りというピントの位置に行って写るんです。
それが楽しいんですけどそれは写ってない。
皆は結果を見るけど作品はう◯こであって、自分の栄養になったもの、明日の自分を作る栄養は写っていない」
石「わかります。僕もちょっとずつ描いては延々とコマ撮りしている。
すごい量を描いているピカソなんて、色々な栄養を入れてるんでしょうね。
出し方もいろいろ。
なぜこんなの作るんだというのは楽しいというのに尽きますね」
石「作品から入ると作家に会ってびっくりすることがある。
禁欲的な作品を作っている本人にお会いしたら延々としゃべる人だってりして。
今日のトークで皆さんが幻滅しないといいんですけれど(笑)」
【Q&A】
問い。
ずれがあるとのことですがどこまで一致させていますか。
答え。
あるメディアを使う以上、限界はあります。この展覧会の作家たちはそれまでのもので描けなかったものを彫刻にした。
ピカソやカフカが書いていますが、ある人々にとって当時のパリは薄っぺらかった。
表現者は今ここにいることの居心地悪さという身体的なものを確認しようと表現していく。一致するはずはないのです。
答え。
ジレンマというものがなくなったら面白くない。
私がフィルムに拘るのも思い通りになっていないことを期待しているというかそれを楽しんでいる。
相手のことが完全にわかったらもう話す必要がないというのと似ています。
問い。
長島さんに。撮る必要のあるものとないものとは？
答え。
まず過去は写真に撮れません。
そして撮らないものには、今日紹介したものでは
祖母の遺品や祖母の作品がありました。
祖母の作品は撮ると私の作品になってしまいますし、
遺品は空間にモノがあることや触ることの方が大事だと思ったからです。
それでインスタレーションにしました。
モデルを頼まれるのも嫌です。
写真家なのにただの女として、社会の私に対する見方を再生産されるのはいやですね。
問い。
今後の作品について。
石田さんの作品にこれから人物が登場するとしたらどうなりますか。
長島さんの作品として風景など人物が登場しないとしたらどうなりますか。
答え。
詩人の吉増剛三さんや画家のOjunさんと一緒に仕事をさせていただくのですが、そんなときは視線の往復があります。
記録映像というかドキュメンタリーに近いですが。
個人的に友人の写真を撮るのは好きで携帯は写真でパンパンです。
答え。
人物以外に花の写真はよく撮っています。
この先は…わからないですね。
私にとっては人も風景なんです。
先程も質問を聞き返して失礼してしまったんですが、
ひとの話を聞くときもいつの間にか聞かないで見ていることがあります。
＊＊＊
DIC川村記念美術館の広大な庭園は、さきの台風でかなりの被害を受けたのだそうで
いまはクローズしています。
四季折々庭園の散策も魅力だった美術館、はやく復旧できますように。
アーティストがなぜ作品を作り続けるのか。
出来上がった作品には表れていない「作るとき」が楽しいこともあるのですって。
描く、そして現れる
画家が彫刻を作るとき
@DIC川村記念美術館
【展覧会構成】
１.絵画の実験から彫刻へ
２.反絵画としてのオブジェ、あるいは彫刻
3.ポップアートとミニマルアート
４.絵画の向こう側：映像と空間
25人のアーティストの
平面/立体の作品がそれぞれ展示されていました。
岡本太郎
→☆エッケホモ ★愛(FRP)
マグリット
→☆感傷的な対話 ☆真実の井戸 ★真実の井戸(富山県美)
クーニング
→☆風景の中の女��(広島県美) ★脚をくむ人物(前澤友作コレクション)
…という具合い。(☆は平面、★は立体作品)
印象に残ったのは、まず【絵画の実験】では
◆ピカソ
→★水浴者(セラミック 彫刻の森美)
粘土板を人物の形に切り取り、両手を前後にひねって立体にしたものです。
平面が立体になった瞬間のようで面白い。
◆ジャコモ・パッラ
→★バルティクタクのバレリーナ(真鍮針金 ふくやま美術館)
続く【反絵画】では
◆山口勝弘
→☆ヴィトリーヌ静かな昇天
油彩の上にでこぼこの地紋があるガラスを貼ったもの。
(平面といえるのか不明。まあ分厚いながら額縁状なので)
ガラスの凹凸で油彩がはっきりとわからないようになっています。
◆リキテンシュタイン
→☆エンタブラチュア��
パステルカラーとゴールドのボーダーが美しい作品。
＊＊＊
トークイベントを聴きました。
写す、そして現れる〜空間のなかへ
長島有里枝(写真家・作家)×石田尚志(画家・映像作家)
【人選】
はじめに出品作家ではないお2人をなぜ呼ばれたか、
その人選理由が司会者から説明されました。
今回の展覧会は20世紀の画家の彫刻の展覧会です。具体的には、ピカソ、デュシャン、ジャスパー・ジョーンズからジャッド
日本の作家として中西夏之、榎倉康二で締めくくる構成になっています。
これがジャンルとして成り立つのか？
まとまった意味があるか？
彼らの創作には彫刻家と違う理由が何かあるのでしょうか？
例えばレンブラントや長谷川等伯は彫刻作品を作りませんでした。
しかしその後のルノワールやマティスの彫刻はあります。
彼らは絵の中だけでは完結しなかった。
その他との関係を考える必要ができたのでしょうか。
本日お越し頂いた石田尚志さんは絵画からパフォーマンスを行なっていらっしゃいます。
絵の中からプロジェクションとして空間に踏み出した先駆者としてお話いただきたいと思います。
また、写真家の長島さんは
あざみ野の展覧会で、木工家具に写真を
焼き付けた作品を出されていて感銘を受けました。
それ以前にも手芸的な縫い合わせたり組み立てたりという作品はありましたが
立体化する要素もあったのでしょうか。
写真は第三者的なものですが、元々はセルフポートレイトから出発されましたので何かを踏み越えた動機等をお話し頂きたいと思います。
【石田さんのお話】
いま大変緊張しています。
自分の中で彫刻が問題になっているタイミングでしたので展覧会は楽しみにしていたのですが、
こうしたことになりまして何か考えて話さなければならない
そして初対面の方と対談もしますし、とややこしい状況になっています。
そこでまず展覧会について書いてきたものを10分くらい読んで、そのあと自分の作品について話させていただきます。
彫刻とは何か、と考えるとまずそれは裏側に回り込むことができるものだということがあります。
絵画にはそのような連続性や影がない。
しかし彫刻には重さや厚みや影があり、触ることを許すような存在です。
光やちょっとした見る角度で印象がダイナミックに変わり、いわば時間が野ざらしでもある。
この展覧会はキュビズムで始まります。
キュビズムは自分の向こうにあるものを、様々な奥行きで描きます。
例えばこれはギターや紙等、それらが触れることのできる場所、自分の手で回転させられる場所で描くという対象との近さがあります。
私にとってのキュビズムとは、そうして絵画そのものの回転に至ったと考えています。時間の集積というか。
ピカソ(のキュビズム絵画)を初めて見たとき目がくらくらするような、目が爆発するような経験をしました。
具象絵画なので「見られている/そこにあるもの」なのですが、時間の相対が平面の四隅で支えきれずに楕円化している。
ピカソの時間の絵画は"青の時代"からみられます。
盲目の人物や目をつぶっている人、こちらを向いていない人が登場する。
およそ画家にとって怖いのは盲目の人を描くことです。なぜなら光の反射を見られないから。
例えばこの絵ではテーブルについている盲目の人が水差しに手を伸ばしている。
モノと手の出会いが描かれている。
手で世界を知る。
腕組みをしている人々は世界と繋がらない。
触ることが絵画を爆発させたのだし、そこに手が介入したということ。
また、青の時代のピカソの絵にはモチーフとして海など水も多く登場します。
僕は大気の震えや時間や音楽を描きたかったのですが
「水」も直接持てないし透明で見えないものです。
今回の展覧会にはピカソの◆水浴の男
という彫刻が出ています。セザンヌを思い出させますね。裏へまわるとパンツはいてなかったりして面白い。
裏と表、といえばアニメーションは
表に鳥、裏に鳥かごを描いたウチワをくるくる回すと鳥ガゴカゴに入っているように見えるおもちゃね、
残像のおもちゃとして始まりました。
晩年のピカソは筆圧の強いドローイングを描いて、下に写ったへこみを少しずつずらして変えて描いたりした。まるでアニメです。
ピカソが映像を作っている記録映画があるのですが
くるくるまわっている。
絵画にはできないことをやろうとしている。
そこから始まるとても豊かな展覧会でした。
(ここからご自身の作品映像の紹介。
2015『渦巻く光』の窓からの光や燃える椅子、懐かしい！)
その後の作品としては
どこに→イサム・ノグチのこけしのある神奈川県立近代美術館外壁に映す
何を→空間に赤外線でかいた軌跡
もう、最終的には踊りでいいのかな、と思います。
超新作ではあるところにセラミックの板をおいてみました。
【長島さんのお話】
今回のお話をいただくきっかけ
になった個展は
知らない言葉の花の名前
記憶にない風景
わたしの指には読めない本
というタイトルです。
私は元々写真家になりたかった訳ではありません。
作品を作っている途中で、たまたま審査員だった荒木経惟氏に勧められて写真家になりました。
文章も書いています。
前述の展覧会では学芸員の天野さんに「書いた本について展示して」と依頼され
なぜ自分が文字の表現をするのか改めて考えました。
写真は目の前にあるものしか撮れません。終わったものも撮れません。
私は子育てが大変な時期、カメラを持って出掛けられない時代がありました。
そんなときに思い出したことがいろいろあって
頭のなかの「見える記憶」を見ながら文章を書き始めたのです。
文字と写真に撮れないものを結びつけて。
でも最終的に文章を日本語で書くと海外で発表できないんですね。
そういったメディアの制限を越えたくて、私の本が読めないひとと一緒に展示を作りたいと思いました。
今回の個展では全盲の人に手伝っていただきました。
写真の見えない人がどうやって鑑賞できるか。
１つの答えが家具に写真を貼ることでした。
私は写真を「物質」だと思っています。
ピアノ、テーブル…自分の家にある家具を単純化して。
貼った写真がモノクロなのは自分で暗室作業をしてプリントできるからです。
壁に貼った手のクローズアップ写真は、半田こずえさんが私の本を読む様子を撮ったものです。
彼女は1歳で視力を失ったので点字が読めるのです。
作品の中ではコミュニケーションを大切にしています。
20歳のデビュー作はセルフポートレイトでした。
これは家族が家の中でいつもしていることをヌードで撮ったシリーズ。
写真はパフォーマンスの記録というか、撮る目的がないと起こらないこと、みたいなものを演じています。
お風呂やさんだったギャラリー(ｽｶｲｻﾞﾊﾞｽﾊｳｽ?)では、この家族の写真を畳の大きさにプリントして、組み合わせて四畳半を作るというインスタレーションをしました。
写真は対象と距離がないとボケてしまいます。
私は隅っこで人々を見ているような子供だったので
盗み見るように撮っていました。
でも人生を重ねると立場も変わってきます。
子供からはお母さんという見られる対象です。
それでは撮りにくい。
写真を展示という形で発表するようになったのは90年代のアメリカ留学以降です。それまでは写真集。
ところが展示したら、額縁のガラスに自分が映るんです。自分を見てから奥の写真をみる、というレイヤーが発生して。
額縁の影がおちる、というところから写真が立体になっていきました。
これは680人のポラロイド写真とその人たちに玉どめを作ってもらった
千人針のシャツによるインスタレーション。
妊娠中に9.11が起きたので、子供が戦争に行ったら、とか戦争のときに女性がどうしていたのか、と考えて作りました。
寅年のひとは多く縫えるとかきまりがあって、680人。
千人針自体に実質的な意味はないのですが持つ人と送り出す人の気持ちを押し上げる効果を持つものです。
これはカラーアクリルを貼って額からはみ出る写真たち。床置き。
あ、写真はいつもフイルムで撮っています。
その方が物質感があるから。
これは祖母の死後、遺された押し花をフォトグラムにしました。
同時に祖母の鏡台の中身、これは写真に撮らずにそのまま並べてインスタレーションに。
写真に撮る必要があるものとないものがあると思います。
【お2人のトーク】
石田(以下石)「全盲の方の話が出てきて驚きました。僕もピカソの青の時代の作品について手と水というモチーフを通して考えていたので。
ひとつのメディアと他のメディアというコミュニケーションの断絶をどうするかは作家の課題ですね。
長島さんはコミュニケーションの問題が最初から大きかったんですね
僕は人を撮らないんで。作品には自分しか出てこない。
最後は踊りかな、と思ったりします」
長島(以下長)「踊り、そうですね。
私は子供の頃バレエをやっていたので、あの感じを出したい、とかどうしても思ってしまう」
石「結局根っこはそこですね。
現代が始まる20世紀はじめには身体に対する冒険があった。」
石「長島さんの写真を見ているとカメラごどこにあるか、どうしてこの角度なのか。
お友だちを撮られたシリーズでは撮っているほうの身体を感じました。
一方フォトグラムはモノ的。
僕は機械が嫌いで、露出計算も友人頼みですし現像もしないので写真の謎を感じます。
この展覧会でお好きだった作品は？」
長「ピカソの裸のおじさんですね。
折角彫刻なのに薄い！(笑)
あとはバッラのダンス。
自分が踊っていたのでダンスって描ききれるのかな、と、思ってしまう。自分が記録を頼まれた時にも違和感があります。踊る人は絵で満足できるのか」
石「ドガは沢山の踊り子を描いていますね。
体の動きや時間…絵ってなんだ？と考えさせられます。
かっこいいキムタクの写真は、キムタクがいいのか写真がいいのか。
ずれている」
司会(以下司)「石田さんの作品は壁や床に投影されます」
石「壁だけでなく床が登場すると向こうまでの距離ができる」
長「壁に作品があるのは変なんですよね。浮いているというか」
石「最初置いてあったんでしょう。なぜ立ち上がったのか」
長「床置きするとモノになる」
石「置いてあると上から覗き込むひ重力が発生しますね。
それこそ小林正人さん？」
(前回のトークにご登場)
それぞれの作品についてのお話が弾みます。
石「デ・クーニングも出ていましたね。
メディウムの作品があって、短い彫刻製作を経て抽象画へ移行した。
移行するのに彫刻があり必要だったのでしょうね。何があったんだろう？」
長「フランク・ステラの作品は絵画でも分厚くて立体感といえかモノ感がありました」
司「ステラは自分で額を作っていました」
石「バッラの絵も額額可愛かったですね。
未来派でスピードとか騒音とかそれまで美の対象でなかったものをやっているのにこんなに可愛い額を作って…最後は家具も作っていたんですよね？」
司「壁紙とか食器とか室内装飾全てです」
石「ジャッドというとんがった現代美術がこんなに豊かだったんだと改めて感じました。
家具の装飾博物館で19世紀の家具をジャッドが並べた展示を見たことがあるのですが
並べただけなのにものすごくかっこよかった。
長島さんの家具作品もピアノとかいいですねえ」
長「私は石田さんの踊るような描き姿が忘れられません。
絵画は静かで動きの少ないものだと思っていたので。
彫刻の方が身体的だと思っていたのがいい意味で裏切られましたね」
石「映像が生まれた時代に画家が描こうとしたのはモノの間の大気や光ですね。
スーラは点描していて寝てしまったらしいけど」
司「スーラは労働集約的でした」
長「描いているところは残らないんですね。
写真も私は画面の外側の見えないところにいます。
セルフポートレイトでも、セルフタイマーをセットして
10秒くらいの間に走っていって作品になっているようなテンションに自分をもっていって
この辺りというピントの位置に行って写るんです。
それが楽しいんですけどそれは写ってない。
皆は結果を見るけど作品はう◯こであって、自分の栄養になったもの、明日の自分を作る栄養は写っていない」
石「わかります。僕もちょっとずつ描いては延々とコマ撮りしている。
すごい量を描いているピカソなんて、色々な栄養を入れてるんでしょうね。
出し方もいろいろ。
なぜこんなの作るんだというのは楽しいというのに尽きますね」
石「作品から入ると作家に会ってびっくりすることがある。
禁欲的な作品を作っている本人にお会いしたら延々としゃべる人だってりして。
今日のトークで皆さんが幻滅しないといいんですけれど(笑)」
【Q&A】
問い。
ずれがあるとのことですがどこまで一致させていますか。
答え。
あるメディアを使う以上、限界はあります。この展覧会の作家たちはそれまでのもので描けなかったものを彫刻にした。
ピカソやカフカが書いていますが、ある人々にとって当時のパリは薄っぺらかった。
表現者は今ここにいることの居心地悪さという身体的なものを確認しようと表現していく。一致するはずはないのです。
答え。
ジレンマというものがなくなったら面白くない。
私がフィルムに拘るのも思い通りになっていないことを期待しているというかそれを楽しんでいる。
相手のことが完全にわかったらもう話す必要がないというのと似ています。
問い。
長島さんに。撮る必要のあるものとないものとは？
答え。
まず過去は写真に撮れません。
そして撮らないものには、今日紹介したものでは
祖母の遺品や祖母の作品がありました。
祖母の作品は撮ると私の作品になってしまいますし、
遺品は空間にモノがあることや触ることの方が大事だと思ったからです。
それでインスタレーションにしました。
モデルを頼まれるのも嫌です。
写真家なのにただの女として、社会の私に対する見方を再生産されるのはいやですね。
問い。
今後の作品について。
石田さんの作品にこれから人物が登場するとしたらどうなりますか。
長島さんの作品として風景など人物が登場しないとしたらどうなりますか。
答え。
詩人の吉増剛三さんや画家のOjunさんと一緒に仕事をさせていただくのですが、そんなときは視線の往復があります。
記録映像というかドキュメンタリーに近いですが。
個人的に友人の写真を撮るのは好きで携帯は写真でパンパンです。
答え。
人物以外に花の写真はよく撮っています。
この先は…わからないですね。
私にとっては人も風景なんです。
先程も質問を聞き返して失礼してしまったんですが、
ひとの話を聞くときもいつの間にか聞かないで見ていることがあります。
＊＊＊
DIC川村記念美術館の広大な庭園は、さきの台風でかなりの被害を受けたのだそうで
いまはクローズしています。
四季折々庭園の散策も魅力だった美術館、はやく復旧できますように。
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