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2021年09月09日05:24

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中国の思惑通りに進む尖閣問題


近年、日中間には多種多様な懸案が山積していますが、日本にとって脅威に直結しやすいのは尖閣諸島問題です。これに関して、中国は、尖閣諸島の領海あるいは接続水域に入ることを毎日のようにやり続けて、「日中間に領土問題アリ」という既成事実の積み重ねを地道に行なっています。

その上で、領土問題があることを認めろ、と日本に圧力をかけ続けるという戦略です。日本が否定しても、客観的にはどう見ても領土問題が起きているように見えますから、残念ながら、中国の思惑通りに進んでいるように見えます。

国際法の教科書や大学の国際政治のゼミと、現実の国際政治は違います。現実の国際政治では、双方の問題が存在すると認めている場合のみ、問題が存在することになるのですが、そんなケースは滅多にありません。その珍しい事例のひとつが、日ロの北方領土問題です。

一方が問題あると主張し、他方がないと主張する場合、外交の世界の現実では、自らが実効支配している側は、領土問題は存在しないと言い続けるのが基本です。たとえば、対馬に関して、韓国の一部の人たちが領土要求をしている。しかし、韓国政府は要求していません。主体はあくまで国家ですから、日韓の間に対馬の領土問題は存在しません。

日本共産党は、全千島二二島の返還をロシアに対して要求しています。1990年代のある時期までは、北海道新聞の世論も、全千島、南樺太の返還でした。しかし、それらは日本政府の見解でないから、北方領土問題とは四島返還のことです。日本の場合、困ったことに、竹島と尖閣が裏表になってしまいました。

竹島は実効支配され、尖閣は実効支配している。どちらか一つならば、一つの論法で良いのですが、この二つでは相反する論法をとらざるを得ません。竹島については、「韓国よ、客観的に見て領土問題は存在するではないか。それだけはお互いに認めようよ。そこからスタートしよう」と主張しています。

だが、尖閣については、中国から、「日本よ、尖閣に客観的に問題が存在するところからスタートしよう」と要求されることになってしまいました。そもそもこの論法を日本が持ち出したのは、北方領土、竹島問題に焦点を当てたからであって、そのツケが、今ブーメランのように返って来ているのです。こんな事になるとは、まったく考えていませんでした。

戦略欠如の自然流と言っていいかもしれません(笑)。いま日本の外務省のホームページを見ると、尖閣は1895年の閣議決定によって日本領になったとありますが、過去は、そのような記述はなかったと言います。この閣議決定が公表されたのは、1952年3月に刊行された「日本外交文書第二十三」においてです。これは秘密閣議決定です。

帝国主義の時代ですから、外国からクレームをつけられるような領土問題は、すべて秘密閣議決定にして、一切公表しませんでした。官報にも出していません。中国側から、「いつ公知の事実になったんだ」と問われると困るわけで、この閣議決定を根拠として持ち出すのは、日本にマイナスにしかならないわけです。

むしろ「1970年代初頭までは中国は尖閣諸島に関する領有権を主張したことがない」とだけ繰り返していればよかったのです。領有の正当性を秘密閣議決定などと根拠に主張しては、立場が弱くなるに決まっています。しかも、外務省のホームページに一度そんなことを書いてしまったので、撤回もできずに自縄自縛になっているのです。

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