mixiユーザー(id:21379232)

2020年12月02日16:51

116 view

ジョエル・シュミット『ローマ帝国の衰退』

 ジョエル・シュミット『ローマ帝国の衰退』(西村昌洋訳、文庫クセジュ、2020年)を読了。本書はロマニテすなわちローマ文明の遺産の永続性と生命力を強調し、ローマ帝国はラテン語を介して現代のヨーロッパ、特にフランスに受け継がれていると力説する。著者は英語などアングロ・グローバリゼーションの潮流に対抗し、別個のヨーロッパ流普遍主義を打ち立てようとしているかのようだ。
 ただし、それは好ましくない事実への言及を意図的に省くことによって達成されている。著者はヨーロッパ統合という現代の政治的な綱領にとって都合の良いように歴史を語り直そうとしている。ムッソリーニですら連続性を示す証拠として言及されるが、彼の有名すぎる相方の名前は故意に無視されている。
 シュミットはローマを「寛容で相違に満ちた統合のモデル」と言う。古代ローマ人が表明する「永遠のローマ」理念にシュミット自身も取り憑かれているかのようだ。近年の西洋社会にはシュミットのような考え方をする人間、そして、それを持て囃す人間が一定数いる。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2020年12月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

最近の日記