mixiユーザー(id:21379232)

2020年02月19日15:25

36 view

植木雅俊『差別の超克』

 植木雅俊『差別の超克 原始仏教と法華経の人間観』(講談社学術文庫、2018年)を読了。インドにおいて女性は著しく蔑視され、社会はバラモンを頂点とするカースト制度に縛られていた。こうしたヒンドゥー社会にあって釈尊は女性だけでなく、あらゆるカーストに対しても徹底した平等を説いた。
 ところが、教団の男性出家者はバラモン出身者が約半数を占めていたこともあり、釈尊の滅後にバラモン教的な女性観の侵入が余儀なくされ、それは仏教教団の小乗化(保守化・権威主義化)によって促進された。小乗仏教から低く見られた在家の男性や女性たちは、仏教のルネッサンス運動である大乗仏教を支持し、運動の一つとして女性差別思想の超克が挙げられた。大乗仏教の経典では智慧第一とされたシャーリプトラが小乗仏教の代表として登場した。
 『法華経』に導入された変成男子の考えは、バラモン原理主義に配慮した妥協的な表現だが、それは小乗仏教の女性観に固執するシャーリプトラへの当て付けだった。『法華経』の真意は寧ろマンジュシリー菩薩らが語っているように女身のままで仏に成る即身成仏を示すことにあった。したがって、変成男子を男性優位と解するのは、大乗仏教徒の意図したこととは全く別次元へとずれた解釈でしかない。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する