77年2月10日、日本武道館大会メインイベント、猪木vsタイガー・ジェット・シンのNWFヘビー級選手権試合、フェンスデスマッチ時間無制限1本勝負。
セミの坂口vs上田が上田が余力を残しての試合放棄という観客にはフラストレーションを残す結末で終わっただけに試合は入場時ながら異様な雰囲気に包まれました。
舟橋慶一アナ「桜井さん、この試合の勝敗のポイントはどの辺りだと思われますか?」
桜井さん「はい、ズバリ言えばどちらが打たれ強いか、そういう闘いになるんじゃないかと思いますねぇ」
試合開始のゴングが鳴った早々、猪木をロープに飛ばしたシンが戻ってくるところをカウンターの凶器打ちを喉に一撃、ダウンする猪木をそのままカバーしてレフェリーのミスター高橋はカウント3。
本部席にいた倍賞鉄夫リングアナが弱々しくゴングを鳴らしました。しかし、シンの白い棒状の凶器を発見しこれを取り上げた高橋はシンに対し「これは何だ!?」と詰め寄りました。
桜井さん「これはねぇ、ミスジャッジですね。」
セコンドについた吉田光雄が猛アピール、高橋レフェリーはミスジャッジを認め試合再開。
両者リング上で向き合います。猪木はアリキック、張り手、シンは猪木にボディスラムで投げられながらも腕を離さずグラウンドに移行しアームロックへ。今度はじっくり攻めようというのか。
桜井さん「シンはですねぇ、早い段階で凶器を取り上げられてしまいましたからねぇ、作戦が変わって来ると思いますねぇ、これからインドレスリングの技を出して来るんじゃないですかねぇ」
桜井さんはシンもパキスタンのボル一族同様、インドの伝説のレスラー、グレート・ガマの流れを組むインドレスリングの後継者である、と定義付けをしています。
両者立ち上がってのアームロックの攻防、シンはレフェリーのブラインドを突いて猪木の後ろ髪を掴んで引きづり倒し優位な体勢へ持ち込みます。
猪木はシンのボディにパンチ、キック。シンは猪木の喉笛にチョークからコブラクロー。
舟橋アナ「猪木はこの一戦を前に減量に成功しております。タイガー・ジェット・シンが190cm、113kg、猪木は191cm、112kgが標準でしたが、110kgまで体重を落としており、動きにスピードが出てきています」
シンの執拗なコブラクローをキック、手刀で跳ね返す猪木、シンの両腕をリバース・フルネルソンに捕らえると、弧の小さい猪木独特のダブルアーム・スープレックス、フォールへいくもカウント2でシンがクリア。
そのまま猪木はシンの左腕をキーロックに決めて絞り上げました。
「折れ!折れっ!」リングサイドの観客がエキサイトして野次を飛ばします。
さらに猪木はキーロックから前76年にウィリエム・ルスカとの一連の試合で身に付けた腕ひしぎ逆十字固め。
桜井さん「この腕の攻め方はですねぇ、昨年パキスタンに行ってアスラム(実際に試合をしたのはアクラム)・ペールワンの腕を折りましたですね、その時の攻め方ですねぇ」
実際はアクラム戦で決めたのはダブル・リストロックで「違うだろ!」と言いたいところでしたが、アクラム戦の試合の序盤に確かに猪木は決まりはしなかったものの逆十字固めを見せていました。
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