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2016年04月29日12:07

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ジャンボ鶴田怪物伝説(268)

ジョージア州アトランタのプロモーター、ジム・バーネットは同性愛者として知られており、全日本プロレスにも来賓としてよく来日していました。

リングに上がる時は口紅をさした薄化粧をしていたとされる「怪人」ですが日本テレビの倉持隆夫アナウンサーはバーネットを「タイトルマッチセクレタリー」と番組の中で呼んでいました。

タイトルマッチセクレタリーとはNWA世界王者のタイトル戦を各傘下プロモーターに振り分けることの出来る権限を持つ人物を差します。いわば要人でした。

では、バーネットがなぜその権限を持たされていたのか?

72年、ジョージア地区のブッカー兼レスラーをしていたレイ・ガンケルがオックス・ベーカーとの試合後、心臓発作で急死。

ガンケルはNWAジョージアの株式を40%を所有しており、未亡人のアン・ガンケルは夫の株式をそのまま受け継いでレイの後任に座ろうとしました。

しかし、NWAジョージアの他の株主であったバディ・フラー、エディ・グラハム、ポール・ジョーンズらのメンバーはアン未亡人の持株を売却させ、ジョージア地区の利権をアンから奪おうと考えておりました。

アン未亡人は彼らの謀略にはまり、NWAジョージアの株式を安値で売却させられ、NWAから追放されました。

そこでアン未亡人はASWAという新団体を旗揚げしNWAに報復、レイと親交の深く稼ぎ頭だったジョージア地区のトップ、ジ・アサシンズ(トーマス・リネストウ&ジョー・ハミルトン)がアン未亡人派に移籍。

ジョージア地区に、2団体が出来、アン未亡人に対する同情票もあり興行戦争はNWAが劣勢に立たされ、ジョージア地区がNWA非会員のアン未亡人派によって独占されそうな勢いでした。

サム・マソニックNWA会長(当時)は事の内情は理解していたものの、会長という立場からすればNWAのメンバーの利権を守るのが第一。

マソニックは傘下プロモーターに電報を打ち、トップレスラーを派遣するよう要請しましたが、自分のところの興行第一だったメンバー達はこれを無視しました。マソニックはNWA世界ヘビー級王者ドリー・ファンク・ジュニア、同ジュニア・ヘビー級王者ダニー・ホッジを派遣し物量攻勢でアン未亡人派を叩きにかかりましたが、

アトランタは地元のヒーローが支持を得ておりNWA世界王者が有難がられない傾向があり地元のトップヒールのアサシンズに対しサンダーボルト・パターソン、シスコ・グリマルド、ロベルト・ソトといったカラード(有色人種)のベビーフェイスによる抗争で客を入れており、収益力ではNWAを上回っていました。

興行戦争から2年経った74年、オーストラリアのプロモーターをしていたバーネットからマソニックに連絡があり、アン未亡人のASWAとNWAジョージアの両方の株式を自分が買収する。その代わり、見返りとして自分にNWA世界王者のスケジュール決定権を頂きたい。と提言。

バーネットはオーストラリアで十分な儲けを得ており、オーストラリアのマーケットを売却してアメリカに戻りたい、いわば再投資物件としてジョージアに目を付けた訳です。

マソニックはバーネットの申し出を会長権限で了承、バーネットはアン未亡人とフラー、グラハム、ジョーンズから株式を買収して興行戦争は終結し、アン未亡人はプロレス業界から身を引きました。

これで元々集客力のあったジョージア地区はバーネットの手中に収まり、バーネットはNWA内部での実権を握りました。

バーネットが同性愛者だったことによる差別はあり、他のメンバーからバーネットにスケジュール決定権を与えることに対して反対の声が上がり「サムも老いぼれたか」と言う声も強かったですが、マソニックは自分達の利益優先でジョージアのメンバーを助けなかったことに憤慨、バーネットに権限を付与する代わりに自分は来年(75年)の総会を持ってNWA会長の座から降りる、と自らの進退も賭けました。

NWAの主流派の中で実権を得たバーネットは81年には「可愛がっていた」トミー・リッチを4日ながらハーリー・レイスを降してNWA世界ヘビー級王者に就かせ、同年6月21日にはダスティ・ローデスがレイスを破り2度目の王座返り咲きを果たした会場もジョージア州アトランタでした。

ジム・クロケット・ジュニアが会長を勤めるようになってからも陰の実権者として活躍していたバーネットのテリトリーでフレアーとバックランドがNWAとWWFのダブル・タイトルを賭けて対戦することは至極当然の流れと言えました。

そのバーネットも84年にビンス・マクマホンによる全米制圧が始まると共同オーナーだったジャックとジェリーのブリスコ兄弟と共にNWAジョージアの株式をWWFに売却してしまい、NWA凋落の大きな要因を作ってしまう訳ですから、バーネットにとってプロレスは金儲けの手段でしかなかったことは明らかでした。
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