NWFがアメリカにいつまで存在していたのか?には諸説あります。
経営不振に喘いでいた団体の共同オーナー兼エースレスラーのジョニー・パワーズが猪木に敗れNWF世界ヘビー級ベルトを失ったのが73年12月。
猪木は1回目のストロング小林戦を終えたばかりの74年3月21日、オハイオ州クリーブランドに飛び、アーニー・ラッドと防衛戦を行い1-1の引き分け。
プロレス評論家の流智美氏によると実質的なNWFの最終興行はこの大会と言われています。(パワーズがこの大会を最後にNWFの興行から手を引いたのは確か)
しかし、アメリカで発売されていたプロレス雑誌「レスリング・レビュー」初め複数の雑誌にはNWFはNWA、AWA、WWWFと並んで世界4大王座の一つとしてオフィシャル・レスリング・レーティングス(選手のランキング)が発表されており、当時のゴング誌には欄外に毎月掲載されていました。
他にモースト・ポピュラー(人気部門)、モースト・ヘーテッド(不人気部門)のランキングもありました。
猪木にNWF世界ヘビー級王座を奪われたパワーズはもう一つのベルトである北米ヘビー級王座を看板に興行を続けていた、というのが当時の定説でした。
また74年にはNWFで試合をしていたエリック・ザ・アニマル(レッド)、キラー・カール・クラップ、ジートとボロのザ・モンゴルズ、カール・フォン・ショッツ、クルト・フォン・ヘス、ハートフォードとレジナルドのラブ・ブラザーズ、ラッドらが新日本のリングに参戦しており、どうやらこの時期まではNWFは有名無実化ながら細々と興行を開催、もしくはプロモーションとして選手を派遣していたと考えるのが妥当です。
以前別の連載にも書きましたが75年にケーブルTVのオーナーでありプロ野球アメリカン・リーグのシカゴ・ホワイトソックスのオーナーであったエディ・アイホーン氏のスポンサードを取り付け、パワーズともう一人のオーナーであるペドロ・マルチネスがIWAの旗揚げに関与。ミル・マスカラスを王者にして東部地区へ侵攻を開始。
75年の7月10日にはWWWFの本拠地であるニューヨークからハドソン川を挟んでほど近いニュージャージー州ジャージーシティ・ルーズベルトスタジアムでマスカラスvsイワン・コロフのIWA世界ヘビー級選手権試合をメインに22000人の観客を動員。
ビンス・マクマホン・シニアを震撼させています。
このIWAの興行にパワーズを初めモンゴルズ(IWA世界タッグ王者)、ラッド、エリック・ザ・レッド、ラブ・ブラザーズ、ヘス、新日本には来日していませんがNWFのトップランカーだったブルドッグ・ブラワー(IWA北米ヘビー級王者)が出場しており、この時にNWFはIWAへ事実上身売りして解散したものと考えます。
ではタイガー・ジェット・シンはNWF世界ヘビー級王者となって、どこで防衛戦をやっていたのか?
これについては不明な点が多々ありますので改めて書きたいと思います。
シンに虎の子のNWF世界ヘビー級王座を奪われた猪木はビッグ・ファイト・シリーズ終了後、韓国へ遠征。
3月27日ソウル市奨忠体育館では大木金太郎のインターナショナル王座に挑戦し両者リングアウトの引き分け。
4月4日、蔵前国技館で開幕した第2回ワールド・リーグ戦では開幕戦で大木のヘッドバットの奇襲に1分16秒リングアウト負けという厳しいスタートとなりました。
結果1位がクラップ、2位に猪木、坂口、大木、S小林の4人が同点で並ぶ混戦となり、5月16日日大講堂での優勝決定戦では決勝トーナメント第1試合で猪木が小林をグラウンド卍固めで撃破。
続く第2試合は日本プロレス時代の因縁を持つ坂口と大木は両者リングアウトにより両者失格。
この結果猪木が自動的に決勝進出しクラップをまたもグラウンド卍固めで破り2連覇を果たしています。
ワールド・リーグ戦終了後猪木はカナダ・ケベック州モントリオール・ポール・サウベアリーナでシンのNWF世界ヘビー級王座に挑戦。
試合は60分3本勝負で行われ1本目は7分18秒猪木が逆さ押さえ込み、2本目は5分11秒シンが体固め。
3本目は3分47秒猪木の反則勝ちとなりルールによりタイトル移動せず、猪木は再び王座奪取に失敗します
5月30日後楽園ホールで開幕したゴールデン・ファイト・シリーズでは開幕戦でこれまで1月からフリー参戦していたS小林が正式に新日本へ入団を発表しています。
6月16日、仙台・宮城県スポーツセンターで3か月ぶりに北米タッグ選手権の防衛戦が行われ猪木、坂口組がアンドレ・ザ・ジャイアント、ザ・プロフェッショナル(ダグ・ギルバート、後にW☆INGに来た選手とは別人)組に2-0のストレート勝ちで5度目の防衛に成功していますが、アンドレ組は、2本ともプロフェッショナルがフォールを奪われての敗戦でした。
猪木、坂口組が王者時代の北米タッグ戦でテレビ中継がなかったのはブラジルのアンドレ、トニー・チャールス組とこの試合だけです。
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