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2020年04月05日20:07

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ショーケンの埋もれていた傑作

 萩原健一さんの一周忌ということで、CSのTBSチャンネルで1984年頃に放送されていた『ガラスの知恵の輪』が放送されていて、あまり聞かない作品だったので録画して観てみた。

 パントマイムを使うサンドイッチマンの男が、ある日、人気若手女優がベテラン俳優と密会の待ち合わせ場所を伝えているのに遭遇する。
 男はある事情でその情報を友達の芸能週刊誌記者に伝えてしまう。
 そのため若手女優はマスコミの取材攻撃に会い、女優活動が困難となり、その影響で母が死んでしまい、ベテラン俳優とは遊びの恋だったと知らされ、精神的に苦しんでしまう。
 男はそんな若手女優の姿を見て罪悪感に苦しむ。
 そんなある日、男は若手女優と出会い、それから親しい関係となってしまう。

 この作品で萩原さんは都会慣れした『前略おふくろ様』の片島三郎のような強くなく、不器用なやさしさを持つ青年を演じている。
 それにプラスして若手女優を不幸にしてしまいお詫びをしたいのだが罪悪感からくる怖さのため言い出すことができない弱い男を演じる。
 自分の状況から抜け出そうと苦しみもがく、ふっと見せる狂気さという風に今まで観てきた萩原さんとは違ったキャラクターで、演技としてどうしようかという気持ちを出すのではなく内に秘めて若手女優と接する姿は、悲しさも感じ、こうゆう立場の人間のリアルさをも感じる役であった
 でも、それゆえに男から哀愁を産み出し、その哀愁を通じてに愛着ある男にもなっていた。
 また一つ、萩原さん、凄い演技を観たということで新たに発見したという感じである。

 また萩原さんはパントマイムを得意としている設定なので、見世物としてのパントマイムと自分の心情を語るためにおこなうパントマイムという風に使いわけてマイムをやっている。
 そして、マイムは心情を上手く表現していて、ドラマにとても有効なものとなっていた。

 一方、若手女優を演じるのが大竹しのぶさん。
 マスコミの攻撃、熱愛していた相手から遊びと言われたショック、取材攻撃の流れで母を無くしてしまう。
 若いゆえにそれらを受け止められず精神的に弱くなる女優を好演していた。
 その上、マスコミの追跡から助けてくれえたということで、事件の発端を作った男と知らず萩原さんを頼り切る姿は若い女性の弱さを強くしていた。

 そんな二大俳優の良さを引き出す脚本を書いたのは大御所、倉本聰さんである。
 倉本さんは強烈な取材で精神を追い込まれる若手女優を通じて、自己満足正義に走り人の心に土足で入り込むようになったマスコミ批判を描いている。
 そして、それとともに、頼られているのに罪悪感で心を開けない男と女優の精神的接近を厳しさをも含めた清き姿で描いている。

 萩原さんと大竹さんの演技、倉本さんの脚本と六話という短い話数であったが、とても心に残るドラマであった。
 萩原さんが出演、倉本さんが脚本作品なのに、なぜ、このドラマは話題されないのかが不思議であった。
 それくらい、このドラマはオイラにとって心に強く残った作品であった。

 最後に、児島美ゆきさんも忘れられない。
 萩原さんの男とは相思相愛で結婚間近という感じのある女性を演じる。
 男を強く愛し、それゆえに男が若手女優と接するようになって、自分から離れていくのではという恐怖と嫉妬を、淋しさも感じさせて好演していた。
 児島美ゆきさんは『ハレンチ学園』の明るいイメージがあったけど、こんないい演技ができる女優さんだったのかと知って驚いてしまった。

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