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2021年04月05日19:42

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美徳のよろめき

『美徳のよろめき』1957年、三島由紀夫原作、新藤兼人脚本、中平康監督、月丘夢路、三國連太郎、葉山良二、宮城千賀子、西村晃、北林谷栄、ら。
82年前の今日1939年4月5日は映画法という法律が公布された日らしく、同年10月1 日に同法が施行された、との事。この半年間前後の世の中の動きや駆け引きも興味深いものがあります。さて本作品は、そんな当時と180度変わり果てた世の中で生まれた作品の一つで、上流階級で安定した生活が保証された良妻賢母(月丘夢路)が自身に魔が差した「よろめき」という存在に苦悩する、というお話。中平康という監督名を何処かで聞いたと思っていたら先日鑑賞した『狂った果実(1956年)』の監督でした。原作は未読なのですが、映画脚本内容との解離が大きい作品例だという解説を知るに、やはり原作との比較を味わう事がより映画作品を堪能出来るような気がします。粗野で無節操な夫を演じた三國連太郎は鈍感男を装いながらも妻 節子(月丘夢路)の行動を先刻お見通し済みなのだろうに、という複雑な懐の深さが伝わっていました。お互いに必要不可欠な女友達として節子の親友を演じた宮城千賀子の存在は、節子の恥じらいながらの大胆な行動に強く共鳴し後押ししていた事がよく分かります。月丘夢路と宮城千賀子、甲乙つけがたい妖艶さだったと思いますが。指圧師(西村晃)は身籠りや恋愛感情迄も敏感に察知してしまうのでしょうか? 産婦人科医役の北林谷栄、なかなか渋い役回りでした。気付いていなかった自分自身に気付く、昔のテニス仲間でボーイフレンドの土屋(葉山良二)とプラトニックだけを味わってまた元の生活に大人しく戻ろうとするも自分の思い通りになるとは限らないんですよ、という諭しを三島原作ではどう描いていたのか。。。別れて数か月後、土屋相手に手紙をしたためる節子のペンを握る右手の動きは、キーボードを打つそれとは全く違い血流通った思いを相手に伝えようとする迫力に満ちていました。達筆、速筆に見えましたが、月丘夢路本人の筆なんでしょうか。「貴方と別れた後の苦しみ、自分がどんなに貴方を愛していたか、、、」旨を三枚の便箋に綴り、三つ折にして封筒に入れるかと思いきや、観客に見せつけるような大胆さで破り千切るラストシーンが一応の落とし処でした。本作品に批判的だったと言われる三島由紀夫は名作「金閣寺」を書き上げた後に、この原作を書き下ろしたのですねえ。
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