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2020年12月26日08:49

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この世界に残されて

『この世界に残されて(Akik maradtak)』シネスイッチ銀座にて。ハンガリー2019年製作、ジュジャ・F・バールコニ原作、バルナバーシュ・トート監督、カーロイ・ハイデュク、アビゲール・セーケ、ら。
日本語タイトルをよく表した作品でした。共にホロコーストで家族を殺められ孤独となった、42歳男性婦人科医アルド(カーロイ・ハイデュク)と16歳少女クララ(アビゲール・セーケ)。筆舌に尽くし難い程のショックと喪失感を抱き続けていた二人が1948年のハンガリーで出会い、共に支え会うという存在意義と居場所を見つけて生き続ける決意を新たにする、というお話し。アルドは知的で常に寡黙、冷静沈着な一方で、見るからに重い十字架を背負い続けているような風情。クララは背伸びし反抗心旺盛というよりも寧ろ見るからに病的に屈折した様な生意気な子供。クララは遥かに年齢が離れた大人のアルドに自分と同じ様な精神的欠落を感じ取り、父を慕うかの様に彼に懐きます。そこには同じユダヤ人であるという民族的シンパシーなのか、家族を皆殺しされて自分だけが生き残ってしまったという罪悪感にも似た背負わされた十字架を相手にも感じ取ったからなのか。。「ロシア語が授業として課せられる、、」という台詞
がありますが、"ナチスドイツから解放してくれたはずのソ連共産が支配を強めて来た"という意味合いでした。調べるとハンガリーでは1949年以降、全ての初等教育において8年間のロシア語教育が義務付けられていた、との事。ロシア語の義務教育は結果的に1989年迄続くのですが、それでも1953年3月5日にスターリン死去を伝えるラジオ放送を聞いた主人公達が、残されたこの世界の為に力を尽くし命を奪われた人達に乾杯するシーンの後、クララがバスに乗って窓から外を眺め続け、生き抜こうとする決心を漂わせながらのエンディングでした。同時にクララが少女から大人へと成長した、と思える幕切れでもありました。「エゲシェゲドレ(乾杯)」「トゥドォム(知っているよ)」「ヨー レッゲルト(おはよう)」「ヨー エサカート(おやすみ)」等の初級単語が作品台詞の中で頻繁に繰り返され、ハンガリー語初級入門編で留まり続けている私に取っては大変有難い作品でもありました。
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