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2020年10月22日19:20

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萬世流芳

『萬世流芳』鎌倉川喜多記念館にて。中華聯合製片公司/中華電影/満映による合作、1943年公開。監督は朱石麟、ト萬蒼、馬徐維邦、張善琨、楊小仲の五人。李香蘭、陳雲裳、袁美雲、高 占非、王引、ら。
私にとって普段は優先度低い中国の映画も、未だ観ぬが上映されるとあっては駆け付けるしかなく、果たして大いなる甲斐がありました。山口淑子としての戦後作品よりも満映製作の李香蘭主演作品を好んではいますが、これ迄観たどの満映作品とも違っていました。満映作品は主に日本人観客を意識して演出されていたと思うのですが、今回は完全に大陸の観客向け作品、現地人になり切った李香蘭の野性味溢れる中国語台詞と抜群の歌唱力溢れる複数のレパートリーを堪能する事が出来ました。お話は、阿片戦争(1840〜1842)敗北百周年記念として、当時の広東で阿片取締りを行いながら英国と戦った英雄 林則徐と周りの女性達について企画されたもの。「萬世流芳」とは万年後迄も芳しい名を残すという意味、らしく。元々は反英だったのが結局は抗日、反日色を帯びて来た、との解説もありますが、反英と感じるのか反日と感じるのか、、については微妙、私の感度が鈍いせいなのかも。李香蘭は阿片窟に出入りしていた飴売りの娘役、 阿片中毒で身を崩しかけていた林則徐の嘗ての学友を支え社会復帰させて彼の妻となる女性を演じていますが、李香蘭を含む三人女性の成就しない恋、献身、微妙な三角関係と女性間の友情も描き、かなりのメロドラマぶりです。全体的に邦画よりも演技は大袈裟ですがこれは想定範囲内。飴を売る為に歌を歌う李香蘭、初めは阿片を讃え勧める歌を歌いながら阿片窟に登場、いつのまにか阿片を諌める歌に変わります。特に大ヒットした「売糖歌」を歌い上げる姿は李香蘭ファンなら見逃してはならないシーンではないかと思いました。上映後に行われた東大名誉教授 刈間文俊さんによるトークイベントでは、「李香蘭と川喜多長政を繋いだ“中華電影”」と題して興味深いエピソードが幾つも紹介され、私の隣ではあの石井妙子さんも熱心に刈間さんの話を聞かれていました。刈間文俊さんは本作品を含む数多中国映画の字幕を付訳されていますが、『オーケストラの少女(米国1937年公開)』におけるディアナ・ダービンが階段から降りながら美声を響かせていたシーン模倣が、『萬世流芳』における李香蘭にも宛がわれていた、と解説。但し、声量では、李香蘭のそれは、ディアナ・ダービンを上回っていた、と絶賛。満州に設立された映画会社「満映」からデビューした李香蘭と、上海に誕生した「中華電影」の最高責任者だった川喜多長政。同じ時代に中国の異なる土地で映画作りに携わっていた二人を結び付けたのがこの『萬世流芳』であった、と。李香蘭のみならず、川喜多長政その人也にも大いに興味を抱かせてくれました。
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