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2020年09月30日08:07

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母は死なず

『母は死なず』1942年公開、成瀬己喜男監督、入江たか子、菅井一郎、藤原鶏太(釜足)、沢村貞子、轟夕起子、藤田進、ら。
母(入江たか子)を失った息子(小高まさる)には道を外させまいと父親(菅井一郎)自らが襟を立て懸命に子育てし何とか大学迄進学させる中、運良く安定した生活に慣れ怠惰を貪ろうとする気配を垣間見せた息子(大人になり→斎藤英雄)に対し ここぞとばかりに亡き妻の死因を伝え真っ当に生きる道を教え諭す、というお話。これまで数々の菅井一郎を観て来ましたが、生活苦から見事に立ち直り 民間研究所所長として成功を収めた男の道義と執念を演じ切った菅井一郎に今回初めて遭遇したように思います。工面して何とか息子に参加を叶えてやった10日間の林間学校中に、病中の妻(入江たか子)が自ら死を選択したのは、「家族の足手まといにはなれないから」とする遺書が映し出されます。遺書には「こんな事に挫けず息子を立派な日本人として強く育てて下さい」旨のメッセージも続いていましたが、戦意高揚を狙う戦時下に河内仙介著「遺書」を原作とし、而も職人 成瀬己喜男が請け負うとこのような仕上がりになるのでしょうか。1938〜45年辺りに製作された作品に対してはどうしても「戦時プロパガンダ」というレッテルを先ず張ってしまう感想も多いようですが、私は演者達や製作者達の息吹きを少しでも感じたいのでそういう時代の作品も機会ある限り目にしたいと思っています。父と息子が束の間の休日を、吉田松陰所縁の松陰神社(世田谷)や日光・中禅寺湖(松陰の墓がある)等で過ごす非日常には陽が降り注いでいました。それにしても入江たか子、壮絶でした。「私はこれでも武士の娘、祖母は西南戦争で自害しました」と張っていた伏線にドキドキしました。奥に秘め何かを訴えるような視線はやはり独特です。若き轟夕起子も見れてよかったです。
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