鶴八鶴次郎

『鶴八鶴次郎』1938年、成瀬巳喜男監督、山田五十鈴、長谷川一夫、藤原釜足、ら。
本作品をこれ迄に鑑賞していなかった事に後悔しました。芸事を優先させて自らの恋心を封印する決断、番頭と沁々酒を酌み交わす鶴次郎を演じた長谷川一夫、痺れました。また杉村春子や田中絹代らもそうですが、芸事を演じさせるとより一層輝く山田五十鈴が奏でる三味線や長唄にうっとりしました。自分は彼女を必要としているのに、彼女を幸せにするだけの甲斐性がないと悟った男の心意気、付き人役の藤原釜足と差しで酒を酌み交わさないとやってられませんね。向かい合った藤原釜足も充分に酒の相手をするに可知あるおとこでしたね。芸に関しては一歩も引かない長谷川一夫と山田五十鈴、どちらの意地の張り合いも気持ちいい程にプロ魂を感じさせてくれました。