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2020年01月24日12:18

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西洋の自死

『西洋の自死(The Strange Death Of Europe)』Douglass Murrey著、東洋経済新報社2018年12月発行。
欧州でキリスト教徒が減り続ける一方でイスラム教徒が増え続ける現象はかなり前から予想されていたものの、人種差別主義者と名指ししながら歴史の逆戻りを許さないような空気醸成に全力を上げて来た勢力≒人種関係産業、が存在して来た、と。著者の出身国である英国ではBrexitと王室スキャンダルが国民国家に対する自信を奪い続けているように見えます。1948年の英国国籍法がトリガーとなったのか? 1958年のノッティングヒル暴動、1997年以降の移民急増、労働党第一次ブレア内閣の難民移民担当相だったバーバラ ロシュ、英国民に対する文化戦争、、「英国で唯一の人種差別主義政党である英国国民党」「どうも自分たち(欧州人)が世界の多くの国々から見れば大いに魅力的である事を少しも解っていなかったようだ(p.55)」、等の英国の悩みが赤裸々に伝えられていますね。同時に本書前半からいきなり、日本でも日常茶飯事になってしまった、日常目を凝らした揚げ足取り、切り取り、言葉狩り、という暴力、そして大和民族の瓦解作戦(そんな言葉は使われてはいないだろうが)に横たわる存在については考え込まされました。第5章「水葬の墓場と化した地中海」で示されているギリシアにおける海岸線の無防備さは、日本におけるそれを思い起こさせてくれます。海に囲まれているから安全なのではなく、海に囲まれているからこそ国境警備が出来ない、という現実から目を背ける事は出来ず、事実上 日本も不法入国野放し継続状態だと改めて思わされました。320ページ、ドイツ語にある「歴史への疲れ=ゲシヒツミューデ」という単語、≒「Müde von der Geschichte」が印象的です。クロアチア人とセルビア人の両親を持ち、今はミュンヘンに住む私の知人から最近メールが来て「欧州は終わりつつある」とのコメントが記されてあり、本書を読書中のタイミングだったので余計にギクリとさせられた次第です。欧州各国で進捗しつつあるキリスト教徒とイスラム教徒の人口比率逆転、進むキリスト教徒の無宗教化とそうはならないイスラム教徒、という現実はもう引き返せそうもないのだと実感させられます。後半で著者が紹介しているミシェル・ウエルベック(Michel Houellebecq)著の「服従(Soumission, 2015」という本、大変気になっているところです。大きな舵取りを誤ったとするメルケルへの批判、あらゆる国の人々と同等に我々(欧州人)も自国中心的になる権利がある、欧州におけるイスラム教徒同士の殺人、例えばアフマディー教団に属するイスラム教徒は祖国パキスタンで迫害されるので大勢が英国に渡って来たがスンニ派のイスラム教徒から殺されてしまうという現実、も生々しい記述でした。保守を受け入れ認める必要がある、しかしハンガリーの「ジョビック党」、ブルガリアの「アタカ国民連合」、ギリシャの「黄金の夜明け」等の本当のファシスト政党に対しては冷静な観察力が必要、だと著者は訴えていました。無心論者だったイタリアのオリアーナ・ファラーチ(Oriana Fallaci)だったが、教皇には信頼を寄せていた、と。宗教と哲学は敵になるのではなく、少なくとも互いに対話をしなければならない、とベネディクト教皇は諭している、と。合法移民と不法移民の境界は今後 更に曖昧になるだろう、かねて疑っていたことの証明として「現状維持してそれに不平を言っている方が、短期的な批判を甘受して社会の長期的な幸福を図るよりも楽なのである」とのコメント、どの邦の政治家でもなかなか言えないと思います。本音を言うと叩かれるので時間稼ぎ、人気取り、沈黙、八方美人作戦に腐心せざるを得ない世界中の99パーセント以上の政治家の心の中を見透かしているようです。確かに、欧州の人々の多くは現代に「疲れて」いるように見えます。同時に、20年位?前に入管条件を緩めてしまった日本、そして“移民受け入れ法”を成立させた最近の日本の将来を本音で語り合える機会がもっとあってしかるべきだと思いましたが。
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