もうひとりの人

『もうひとりの人(A Másik Ember)』ハンガリー1987年公開、Kósa Ferenc脚本&監督、ヤカブ・チャバ、ラーツケヴェイ・アンナ、ら。国立映画アーカイブにて。
昨年末に亡くなったコーシャ・フェレンツ監督の息子さんがプダペストから来日、予定にはなかった舞台挨拶をしっかりした日本語でこなしました、この作品は父親の遺言でもある、と。監督をインタビューし恋に落ちた日本人女性が母親、との事でした。二部構成で四時間近い作品、第二次世界大戦末期1944年のハンガリー、と、1956年の動乱ハンガリーの中で、非武装という態度がどこまで共感を得る事が出来るのか、作品中のハンガリー人達や、映画鑑賞者達に問い掛けているようでした。武器を手にすれば即ち殺人者か犠牲者二部なってしまう、という主張に対し、そういった考え方が侵略を許して来た、という若者同士の論争も、ナチの後にはソ連に苦しめられ続けたハンガリー始めとする東欧諸国の戦争体験者の方々にとっては脱力感伴うものであったのかもしれません。1989年東欧革命のトリガーになったとも言われる本作品を指揮したコーシャ・フェレンツ監督は1989年5月の「ヨーロッパ・ピクニック計画」の指導者、そしてその後には16年間国会議員を務めた、との事。近代東ヨーロッパの立役者として覚えておくべき人物の一人だと思います。