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2022年04月25日12:22

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4/22 有元利夫の素描ーその「音楽」の源へ@慶應義塾大学アート・センター

2020年6月25日から8月30日まで「没後35年 有元利夫展 花降る空の旋律」がBunkamuraザ・ミュージアムで開催される予定だった。しかし、コロナで中止。↓
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/20_arimoto/
楽しみにしていた展覧会だったので、すごく残念だった。

素描だけだが、慶應義塾大学のギャラリーでこんな展示がある。
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大学の博物館、美術館、ギャラリーは侮れない。何かのついでに行こうと思っていたらいつの間にか最終日。友人の写真展を見にいくついでもあるから出かける。

大学三田キャンパスの正面にある小さなギャラリー。都営三田線三田駅から行ったが、途中にもっと大きそうな美術館もあるではないか。
慶應義塾ミュージアム・コモンズ…だって。興味ある展示があったら行ってみたい。
https://kemco.keio.ac.jp/
すごいな、慶大!

慶大アート・センター内のアート・スペースは1室だけの小さな展示室で、完全予約制。最終日前日夜にまだ空いていた回13:30をネットで申し込む。受付で名前を告げると部屋のドアを開けてくれる仕組み(外からはまるで見えない。ちょっと緊張)

中の係員が小声で説明をしてくれる。来場者に小冊子を配布していたが足りなくなったので今増刷している、希望者には後日郵送します、と申込用紙を渡された。小冊子はA6くらいの大きさで、そこそこの厚みがあり、図録というより解説書みたいだった。

写真撮影は可。展示室内の壁と中央のガラスケースに小さな紙片やスケッチブックがぎっちり張り出されていて、正面奥には、アトリエのデスクが再現され、有元の言葉が書き出されている。
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有元は将来を嘱望されていながら、38歳という若さで早逝している。夫人も同窓で結婚当初は有元よりも多く受賞していたが夫を支えるために筆を折ったという(←現代でもそんなことがあるのか)。有元没後夫人ははこれら膨大なドローイングを整理し、自らも日本画家、陶芸家として活躍しているという。有元容子さん。
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ルネサンスのフレスコ画のようなマチエールを出した作品は、こんな毛の硬いブラシで擦っていたのかな。他にも絵具に独自の工夫を重ねたという。
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早逝した画家の作品は長生きした画家に比して多くないのが一般的だ。だからというわけではないが、まだ作品にはなっていない構想の欠片をひとつひとつ見せてもらえるのは、余計にありがたい気がする。

有元は鞄の中はもちろんのこと、家のあちこちにスケッチブックを置いて気になるとすぐにスケッチしたそうだ。
身近なもの〜例えば飼い犬や手などを写生したものもあれば、代表作の構想をメモしたのではないかと思われるものもあった。
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有元利夫の、ヨーロッパの中世を思わせるような甘美で厳かで静謐な独特の世界が小さなペン画にも凝縮されていて、すてきだった。
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「音楽、それもバロック時代の音楽が持っている、豊かな感性というようなものを絵画において表してみたい、画面に音楽が漂っているような…。」

アルバムあります。
https://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000120534338&owner_id=2083345

その中から、いくつかをご紹介。
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本作はこちらかなフォト(ネットから借用)

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フォト(ネットから借用)
らせん?の塔の構想も繰り返しある

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フォト(ネットから借用)
向きは違うけれどおなじモデル?

有元がルネサンスのフレスコ画に大いに触発されたというのは有名だが、日本の仏像にも影響を受けている。
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小さい顔と太い腕、体は有元の人体の特徴だ
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本作をどのように仕上げるかなど、イメージが細かくメモされている
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ネットから、これらを元にした本作と思われるものを拾ってみた
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http://www.art-c.keio.ac.jp/news-events/event-archive/artist-voice02/
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新しい展覧会シリーズ「Artist Voice」は小さな展示室1室という施設の特性を生かして、作家の呟きや生の声を感じ取れるようなインティミットな展示を目指すものです。
 第2回となる今回は、有元利夫の素描をとりあげます。有元がピエロ・デラ・フランチェスカなどによるルネサンス絵画を賞賛し、自らの芸術に取り込んだことは有名ですが、彼の素描作品についてはそれほど広く知られてはいません。特に作品として描かれた素描ではなく、ある対象を前にして写生したスケッチや、あるいは作品制作に直接繋がっていくいわゆるエスキースについては、これまでほとんど鑑賞者の目に触れることはありませんでした。しかし素描とは画家が頭の中のコンセプトを初めて現実世界に表現するものであり、完成した作品よりも純粋な着想の表現であるといえます。ある意味作品以上に芸術家の本質に迫ることができるメディウムでもあるのです。
 本展で展示される有元の素描に目をやると、実にさまざまな芸術世界が広がっていることに気づくのではないでしょうか。有元は自らの芸術における素描類の重要性をはっきり認識していました。彼の素描は対象再現的なものではなく、むしろルネサンスの素描に倣ってより線の強さと量感を求めており、上で引用した文章のように、「線」と「量感」こそ、芸術家の想像力が問われる場だったのです。
 有元は「見ているうちにどこからともなくチェンバロの調べが聞こえてくるような、そこに音楽が漂っているような画面」の制作を追求していました。本展に出品される作品は演奏会の音楽ではなく、バロックリコーダーを嗜んでいた芸術家が心の赴くままにアトリエで奏でる音楽に比することができるでしょう。展示室に満たされた静謐な音楽に、ぜひ耳を傾けてみてください。


願わくば、一昨年中止となった有元利夫展をぜひ開催してもらいたい。3年後には「没後40年」の節目にもなる。

4月22日終了

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