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2021年11月29日20:05

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11/26 マレーシア・イスラーム美術館精選「イスラーム王朝とムスリムの世界」@東京国立博物館東洋館12•13室

イスラム=中東…というあまりにも貧困な連想しかできない私。しかし、日本から見れば仏教とゆかり深い中国でも、思い起こせば、昔から北京では、漢民族でさえ街の屋台で羊の串焼きや羊のしゃぶしゃぶ鍋を食べていたようにイスラム教徒の習慣が根付いていたなぁ。この度は、マレーシア・イスラーム美術館の所蔵品だと言う。専門の美術館がマレーシアにあるんだね。ほぼ初めてイスラム文化・美術に触れる機会だ。

イスラームとは、7世紀にアラビアのメッカ郊外で預言者ムハンマドを通して啓示された一神教のこと。最初の世襲制イスラーム王朝が8世紀にダマスクス(シリア)に誕生して以来、北アフリカから中国西部、マレー世界にまで勢力を高座に拡大し、主要な14の王朝の興亡を経て現在に至る。

展示では、主要な王朝を地域、年代ごとに紹介してるが、聴き慣れない名詞は地図とともに全く頭に入ってこない(汗)ただ、なるほど、イラン・エジプト・トルコ・マレー半島・インド・中国などそれぞれの固有の伝統と融合して、華麗な装飾表現の、いわゆる「イスラーム美術」を形成していることを体感できて面白かった。

イランのタイルの青や細かい文様の真鍮、ポルトガルの寄木、トルコの象嵌、インドの金や宝石の豪華な宝飾品などなど目を見張る美しさだった。祈りや生活を描いた絵画紹介は、19世紀ヨーロッパのもので、ちょうどその頃西洋ではジャポニズムとオリエンタリズムが大流行だったのだ。

全体を通して、最も興味深いことは、イスラームでは文字を重視していること。経典であるクルアーン(コーラン)、つまり神の言葉を引き立たせる書道芸術が発展した。仏教でも美しい料紙に金文字で書かれた経典を見るが、各地域の独自の書体で書かれた祈祷書は、多彩で、いずれも精緻豪華美麗であった。縦書きにしたらモンゴル文字のように見える書体も。書が重要であれば、畢竟、文房具もまた芸術品の域に高められる。
アラビア文字は、金属器、陶器、ガラス器、タイルなどの装飾にも用いられていて、それは幾何学模様のような独特の文様となる。

また、それが現代絵画にも反映されていて、文字が精神的・瞑想的な意味を含んで現代美術を形成している。この紹介もまた、興味深く、以降イスラーム現代アートを見る上で大いに参考になるかもしれないと思った。
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https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2109
このたびイスラーム関連の豊富なコレクションを有するマレーシア・イスラーム美術館の全面協力を得ることで、特定の国家や地域によらない、世界規模のイスラーム美術の展示が実現しました。
イスラーム教は、7世紀にアラブ人のムハンマドが預言者として唯一神に対する信仰を説き、創始した宗教です。その後、イスラーム教は西アジアのみならずヨーロッパ、北アフリカ、中央アジア、東南アジア、そして東アジアへと広がり、キリスト教に次いで世界で2番目に信者の多い宗教にまで発展しました。イスラーム教を受容した世界各地では、多くのイスラーム王朝が交替しましたが、いずれも各地の文化を融合させた独自のイスラーム文化を展開してきました。
この特別企画では、こうしたイスラーム文化の多様性を知り、イスラーム世界への理解を深める手がかりとなるような美術工芸品や歴史資料などを紹介します。

第1章 はじめに ムスリム世界の歴史と文化
第2章 初期イスラーム王朝
第3章 モスクの美術
第4章 北アフリカおよびスペイン
第5章 セルジューク朝(イランなど)
第6章 マムルーク朝(エジプトまたはシリア)
第7章 イル・ハーン朝とティムール朝(イラン)
第8章 サファヴィー朝とカージャール朝(イラン)
第9章  武器と外交
第10章 現代絵画
第11章 イスラーム書道芸術
第12章 マレー世界のイスラーム王国(マレー半島など)
第13章 ムガル朝(インド)
第14章 オスマン朝(トルコ)
第15章 中国のイスラーム(中国)

《文字タイル》イラン 13世紀》フォト

《人物文タイル》イラン サファヴィー朝 17〜18世紀フォト

《ミフラーブ・パネル》中央アジアまたはイラン(ティムール朝)14〜15世紀フォト
いずれもターコイズブルーが綺麗

《ムガル朝皇后像》インド、デリー 19世紀
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象牙板に油彩。

こちらは《王室肖像入りカージャール朝勲章》イラン(カージャール朝)1907年〜09年
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インドとイラン、やはり顔が違う。

《宝飾ヘッドドレス、儀礼用イヤリング》モロッコ 1800年頃
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すごく豪華だが、イヤリング、重そう…

《木画キャビネット》ポルトガル 1800年頃
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なんと緻密な寄木細工だった。

《クーフィー体文字文皿》イラン 10世紀フォト
アラビア文字がお皿の縁の装飾となる。下の書物は東方クーフィ体で書かれたクルアーン

これも《クルアーン》マレー半島東海岸 18〜19世紀
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こちらはクルアーンをおく台(トルコ オスマン朝 1800年頃)で、螺鈿と玳瑁(タイマイ)を用いた美しい象嵌

そして、これが祈りの風景
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《『シャーナーメ』の挿絵》イラン(カージャール朝)18〜19世紀
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シャーナーメはイラン最大の叙事詩、「王書」ともいわれる。色も優しく、馬や人の顔が可愛く、童話のよう。

《『マンスール解剖書』写本より》イラン(サファヴィー朝)16世紀フォト
10世紀の医学書の写本
《解剖学用人形》イラン(カージャール朝)1838〜39年フォト
医学、天文学、占星術のおいても中世イスラームはキリスト教世界に影響を与えたそう

《祈祷書》イラン 1715年〜16年フォト
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花の絵の表紙、蛇腹の美しい装丁にうっとり。書家は、文字書体だけでなく、紙漉き、インクの調合、装丁方法の技術まで学ばなければならなかったといい、免状制でもあった。

《ラッカー彩張子ペンケース》イラン(カージャール朝)1713〜14年フォト
書が重要であれば、文房具もまた凝る。

アラビア語圏でない国では、まずアラビア語の習得から
《アラビア文字教本》トルコ(オスマン朝)1735〜36年フォト

《真鍮水差し》スマトラ 19世紀フォト

《宝飾ノーズリング》インド(ムガル朝)19世紀フォト

《扇》イギリス(オスマン朝への輸出品)19世紀フォト
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《オスマン美人》イタリア 19世紀
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エキゾチックで憧れのオスマントルコハレムの女性

《七宝合子》中国(清)19世紀フォト
伝統の中国七宝にもアラビア文字が

《『クルアーン』(スィーニー体)》中国(清)17世紀フォト
上下の帯の紋様が唐草っぽくて中国チック。

最後に現代美術家の作品
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伝統的な書ではなく、大きなカンバスを媒体とした新しい書の形。文字の形と文字を形成する全体の形が、全世界、全宇宙を示しているようで、仏教の曼荼羅を思い起こさせる。



とても消化しきれない展示でしたが、興味深かった。
2月20日まで。機会があったらもう一度行こう。

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