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2021年09月16日16:49

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9/15 宮崎学 イマドキの野生動物@東京都写真美術館

「自然界の報道写真家」宮崎学氏は本当にスゴイ。信濃伊那に生まれ、中学を出てから独学で写真を学び、カメラを改造し、工夫に工夫を重ねて、野生動物を野生の姿のまま撮る。
たとえば、動物たちの通り道に自作の赤外線センサー付きロボットカメラを設置する。子供の頃から自然の中ですごし、動物の生態をじっくり観察してきたからこそ出来るのであって、それは、人がいたら絶対撮れない野生の姿だ。その中には、こんな茶目っ気のある写真もある。宮崎学の名前を知らなくても、この写真は見たことがある人も多いだろう。
フォト

「ツキノワグマはとても好奇心が強い。設置しておいたカメラと三脚で戯れるクマの姿をもう一台の無人カメラが捉えた」

いつだったか、「日曜美術館」で宮崎学氏の特集があった。その時からこの展覧会を楽しみにしていた。捕食する姿を見るのが嫌で夫は野生動物の写真や映像を一切見ない。なので平日ひとりで来館。

https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4025.html
フォト
宮崎学(みやざきまなぶ 1949-)は中央アルプスの麓、長野県上伊那郡南向村(現・中川村)に生まれ、伊那谷の自然豊かな環境を活かし、1972年よりフリーの写真家として活動を開始しました。「自然界の報道写真家」として、現在も日本中の自然を観察しています。
宮崎は動物たちの通り道に自作の赤外線センサー付きのロボットカメラを設置し、撮影困難な野生の姿を撮影した「けもの道」のシリーズなど、哺乳類、猛禽類の撮影において独自の分野を開拓してきました。また、人間の生活空間近くに出没する野生動物や、外来動物の影響など、動物の生態を通して人間社会を浮き上がらせる社会性のあるテーマにも取り組んでいます。
シリーズ最新作となる「新・アニマルアイズ」では、「動物たちの住む森を動物の目線で見る」をコンセプトに、動物たちの痕跡を注意深く読み解き、自作のロボットカメラで人間の目が及ばない世界をみごとに写し出しています。本展覧会は、半世紀近くにわたる宮崎の作家活動の軌跡をたどりながら、黙して語らぬ自然の姿を浮き彫りにしようとするものです。

1ニホンカモシカ 1970〜73
ウシ科なのにカモシカと名付けるほど生態が謎、1965年からは「まぼろし」と言われていたニホンカモシカを中央アルプスにて33個体見つけ、撮る。
フォト

2けもの道 1976〜77・2012〜13・2011〜12
テンフォト 

ツキノワグマフォト
ロボットカメラを自作し、野生動物たちの通り道に設置する。野生動物がカメラに気づくことなく、野生の姿のまま写し出される。この方法は、現在も続く。
テン、ヒメネズミ、カケス、ニホンザル、ニホンカモシカ、リス、キツネ、ハクビシン、ツキノワグマ、ウサギ、タヌキ、イノシシ、野生化したネコ、そして昼間はニンゲンも。ハイキングだったり、山菜採りだったり、渓流釣りだったり。動物たちの遊歩道だとは知らないのは人間ばかり。スライド上映も面白かった。

3鷲と鷹 1965〜80
絵でもなんでも、私にはワシとタカの区別がつかない。見分け方を聞いてもすぐ忘れる。宮崎氏は日本国内に生息する猛禽類16種類全てを15年かけて撮る。北は知床、南は沖縄。
やはり区別はつかないが、どの写真もめちゃくちゃカッコイイ。猛禽類を全部制覇したくなる気持ちはわかる気がする。でもそんな人、宮崎氏以外いない。
クマタカフォト

ハチクマフォト
オスが持ってきた蜂の巣をくわえ、翼を震わせて歓喜するメス。

目の周囲はハチに刺されないように硬くて細かい羽毛がびっしり生えている。片翼を広げてヒナを直射日光から守るメスの姿も凛々しかった。

4フクロウ 1982〜88
そして、ワシやタカよりさらにカッコ良かったのがフクロウだった。かわいい丸い目に丸い頭、しかもなぜか知的に見える。しかし、そこは猛禽類、獲物を捕らえる脚が思いの外長くて筋骨隆々、翼を広げるとその美しい翼を羽ばたかせる腕も筋骨隆々。
フクロウフォト
ヒナフォト
立ち枯れた木のてっぺんに番い二羽が夜のしじま静かに留まっている写真も素敵だった。魅せられた。

5死 1933
フォト
冬の死:ニホンジカの死体が雪に埋もれていた1月20日から定点観測が始まる。最初に死臭に誘われたのはカケス。雪降る日、晴れる日で鹿の姿は埋もれては現れるの繰り返し、けものたちが偵察し、2月13日とうとうタヌキが食べ始める。死体はみるみるうちに小さくなる。テンやキツネもやってきて骨髄も食べ尽くし、骨もなくなった。残った体毛は小鳥の巣材となり、残りはバクテリアが分解、8月12日痕跡はまるでない。

春の死:5月11日若いメスタヌキの死体。雨に打たれる。ウジがタヌキの腹部に入り込み猛烈な勢いで死体を貪り食う。ガが周りを乱舞。やがてウジはサナギになるため死体から一斉に離れる。ハクビシン、アカネズミがやってくる。シジュウカラが巣材に体毛を拾う。雨に打たれた死体がまた腐敗臭を放ちハエが卵を産み再び分解が始まる。8月23日完全な骨格だけが残る。

かなり衝撃的だった。動物が死んでいくところを撮った写真家はいるが、死んだ後を撮った写真家はいない。撮影は、強烈な腐敗臭やウジとの戦い。食物連鎖ではなく、腐食物連鎖という。古来からある絵巻物「九相図」を思い出す。全てが無駄なく使われ、無に帰す潔さ。「輪廻転生、死は生の出発点だ」と宮崎氏。あ、私は冬に死にたいな。ウジはごめんだ。

6死を食べる 2012〜16
「イノシシが死体を食う作法は内臓から」フォト

「冬のリスはタヌキの死体から動物脂肪を求めていた」フォト
かわいくくるみを捧げ持つリスがまさかタヌキの死体を喰らうとは思わなかった。

6アニマル黙示録 イマドキの野生生物
「漂流物の台所洗剤のキャップを宿にしたオカヤドカリ」
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「東京の新興住宅街の田んぼにもキツネが暮らしていた」
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人馴れしたタイワンリスや缶コーヒーの残り香を楽しむニホンサルやペット霊園の御供物目当てにやってくるノラネコなど…人間の生活空間の近くに出没して、うまく適応してたくましく生きる動物たち、その姿を通して、宮崎氏は人間社会も描く。
人影ない福島浪江町で暮らすテンやイノブタ、タヌキ、ネコの姿からいろんな想いがわく。
今回初めて知ったのが、凍結防止に撒かれた塩化カルシウムを求めて、シカやサルが高速道路の橋脚下の河原に集まること。彼らにとってはありがたい人間の置き土産なのだ。

7新・アニマルアイズ 2018〜21
ロボットカメラを使って、動物の森を動物の目線で見ようという試み。
テンは匂いをとるために舌で鼻をよく濡らすのだが、かわいいしぐさに見える。
フォト
木々の間を飛ぶリスの顔を正面で捉えると案外真剣な顔つきであったり、夜行性のムササビが寝起きの伸びをした姿も微笑ましい。
フォト
地中に埋められた魚眼レンズを怪訝な顔で覗き込むサルもいい味だ。

宮崎氏は「人間含め多くの生き物は全て地球の「店子」だ」という。人間は店子の一人として他の動物と同等であらねばならない、よね。

10月31日まで


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