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2021年06月11日09:00

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6/9 冨嶽三十六景への挑戦 北斎と広重@江戸東京博物館

江戸博は、博物館・美術館というよりインバウンドを狙ったテーマパーク的なところがイマイチであまり行かなかったのだが、同じように思っていたマイミクさんが推薦していたので、急遽行くことに。
この日は、午後に中野坂上の病院へ行く予定だったので、昼前に到着し、1時半まで江戸博で遊び、大江戸線で一気に中野坂上へ。大江戸線中野坂上の改札にはちょっと素敵な壁面オブジェがあります。


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さて、江戸博。エジプト展で大人気だったコシャリを出すレストランが三笠会館の後にできていました。イスラエル、モロッコ料理のメニューも増えてその名も「江戸博砂漠」。
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建物内側のカフェは第一ホテル両国。

アソビューで事前予約制になっていますが、ガラガラ。当日券でも問題なし。一部のキャプション以外撮影可。

北斎の「冨嶽三十六景」と広重の「東海道五拾三次之内」が比較展示してあるだけかと思ったら、そう単純ではなかった。
ストーリーは広重目線で進みます。目下、映画「HOKUSAI」が上映中、映画に広重は登場しないそうだが(実際の絡みもあまりなかった)が、広重が北斎の「冨嶽三十六景」をどう意識して、どのような独自世界を創造していったかが作品を通して理解できる仕組み。一点一点に丁寧でわかりやすいキャプションがついていて、充実した観覧となりました。
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https://www.edo-tokyo-museum.or.jp/
日本を代表する浮世絵の名作、葛飾北斎の「冨嶽三十六景」は、青を使った鮮烈な色彩と大胆な構図で人々に強い衝撃を与えました。この時、北斎は70歳を越えていましたが、長い画業の中で不断の努力を重ねていました。
 一方の歌川広重はこの時30歳代後半。風景画を描くもヒット作のない一介の浮世絵師にすぎませんでした。そんな広重も驚きを持って見たであろう「冨嶽三十六景」シリーズ。その大ヒットの陰で、広重はどのように自らの画風を打ち立てていったのでしょうか。
 これまでも北斎と広重の富士シリーズを展示する展覧会は開催されてきましたが、本展はより踏み込んだ解釈により、風景画で双璧をなす北斎と広重の挑戦をストーリー展開で浮き彫りにする試みです。一挙展示となる「冨嶽三十六景」全46図を含む作品はすべて「江戸博コレクション」。この浮世絵史を語るうえで見逃せない貴重なコレクションを通して、二人の浮世絵師のあくなき挑戦の数々を名品とともにご紹介します。
 
プロローグ 広重、絵師を目指す
第1章 風景画へ道ー北斎のたゆまぬ努力
1−1 北斎「冨嶽」に至る道
1−2 風景画ー西洋絵画の影響
第2章 葛飾北斎「冨嶽三十六景」の世界
第3章 新たな風景画への道ー広重の挑戦と活躍
3−1 「東海道五拾三次之内」での新境地
3−2 広重の江戸名所
エピローグ 広重、“富士”を描く

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最初に広重10歳時の絵フォト
夢は「絵がもっと上手く描けるようになること」だったという。古今東西天才画家の展覧会では幼年時代の絵を展示することは多い。広重の絵はその中で上手い部類ではないと思う。そうか、努力の人だったんだ。

広重、浮世絵師としてデビューした頃20代の作品フォト

一方、北斎もたゆまぬ努力の人。72歳で「冨嶽三十六景」を発表するまでには長い道のりが。勝川春郎、宗理、北斎、戴斗、為一などと絵師名を変え、肉筆画、錦絵、狂歌摺物、狂歌本、読本挿絵などを手掛け、ドイク時の画風を展開。

寛政9年の新春の摺物フォト
摺物は、私的な注文によって制作し、配り物として用いられた

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常盤津節の稽古会を知らせる摺物。こういったものが原型で残ることは大変珍しく、貴重。

「新板浮絵」シリーズ全13図の1図フォト
ピンク色の桜と霞が綺麗。透視図法も新しい時代を感じさせる。

そしていよいよ「冨嶽三十六景」
さまざまな地点からの富士山を描き出した新風景画シリーズ。ベロ藍が新鮮で、大人気。藍の輪郭線で摺られた36枚に、墨の輪郭線で描いた通称「裏富士」10枚を追加。
全46図の刊行が終了していたころは北斎すでに72歳。その時広重は37歳だったそうで、35歳も上の絵師が描いた、これまでにない斬新な風景画をどのような驚きで見ていたのだろう。

第2章では全46点を全て鑑賞ポイントのキャプション付きで紹介。本気で全部見たのは初めてかも。このキャプションがすごく良いので、頑張って全部撮ってきてアルバムに載せました。「冨嶽三十六景」全部見たいという奇特な貴方(貴女)、こちらをどうぞ。

https://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000120311510&owner_id=2083345

やはり有名なのはこれ。新千円札の裏面になるそうです。
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同じ位置からの晴れと雨。
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○と△
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鋭角の△と丸びを帯びた△
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何重もの△
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相似の△
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大きい△と小さい△
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湖面の不思議な△
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意表をついた構図は遠く欧州の画家たちに影響を与える
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ダイナミックな動きも
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折しも、すぐ近くのすみだ北斎美術館では「しりあがりサン北斎サン −クスッと笑えるSHOW TIME!−」をやっていて、しりあがり寿氏の北斎パロディを観ることができるはず。一緒に行くとなお良いかも。

浮世絵は、絵師だけでなく彫師、摺師、そして何より版元との関係が重要。
「冨嶽三十六景」の版元は、永寿堂西村屋与八。絵の中にも、永寿堂の「寿」の文字や、山笠に巴の商標をさり気なく入れている.
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展示の「冨嶽三十六景」は46点とも江戸博所蔵のものだが、裏富士10点を除いた36点には、同じ所蔵印が押されている。印は不明で、かつて誰の所蔵だったか、謎だそうだ。
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「冨嶽三十六景」の刊行が終了した頃、歌川広重「東海道五拾三次之内」が始まる。江戸から京都に至る東海道を描いた全55枚シリーズで、風情ある新たな風景画です。

枠をはみ出した尖った形の富士山は、「冨嶽三十六景」を越えようとする広重の決意表明のよう。
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馬に乗った子供の視線が左に見えてきた富士に向いているところは、広重独特の情感ある描き方
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人物のみ色を入れたモノクロームの世界。しんしんと降る雪、静寂。
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こちらは雨。
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突風や雷雨のように北斎は劇的な一瞬を捉えているのに対し、広重は人々の心情をも写し出すよう。

「東海道五拾三次之内」の大ヒットで、江戸名所を取り上げた風景画を次々と刊行。
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雪に足を取られた女性の描写

叙情性豊か
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広重の活躍が始まると、北斎は版画の製作をやめ、肉筆画に専念。需要がそうさせただけなのか、本人たちが意識したのか。北斎が90歳で亡くなった約10年後広重は62歳で急逝。コレラが死因ではないかと噂がたった。

亡くなる1年前の代表作。近像型構図という大胆な構図で、鯉が尻尾を食いっと曲げている先に富士山が見える。北斎を意識したのかな。
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どの富士も見事です。
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同じ深川万年橋
北斎は「冨嶽三十六景」のなかで橋の下から富士山を望む
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広重は橋の上から亀が見下ろす構図



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江戸の二大風景画絵師、葛飾北斎と歌川広重。堪能しました。

6月20日まで
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