たばこと塩の博物館がまだ渋谷にあったときは何回か行った。猫に特化していなかった時の岩合光昭氏の写真展や文豪のポートレートで有名な林忠彦氏の写真展、それからハイライトやピースの煙草のパッケージデザインをした和田誠氏の展覧会など…
もう何年も前にスカイツリーの側に移転してからはその存在すら忘れていた。しかし今回たまたま目にしたチラシにかなり惹かれた。なんだ、これは。みてみたい!
押上といえば、リハビリ病院へ行く途中駅ではないか。ほんの1時間程度なら帰りに寄っても夕食準備には間に合う。
倉庫や工場が立ち並ぶ一角に立派なビルが建っていた。
スカイツリーがこんなに近い!
この像は、渋谷の時からあったような。
https://www.tabashio.jp/exhibition/2021/2102feb/index.html
ミティラー美術館は、新潟県十日町市の雪深い森にある旧大池小学校の校舎を利用した私立の美術館です。同美術館は、インドのミティラー地方において母から娘へと3000年にわたって伝承されてきた壁画であるミティラー画をはじめ、インド先住民族ワルリー族が描くワルリー画やゴンド族の描くゴンド画、5000年以上の歴史を持つテラコッタ(素焼の陶器)などを数多く所蔵しています。また、インド人の描き手を招へいし、新たなアートの創造の場を提供しています。新しい作品を含めて、その量と質は世界に類がないものとインド政府からも高く評価されています。
たばこと塩の博物館では、これまでに5回、同美術館と共催で展覧会を開催してきました。2006年以来約15年ぶりとなる本展では、美しい自然の中にある美術館のゆったりとした時間の中で制作された作品を中心に、伝統的な手法を守りつつも、現地の生活環境では生まれることのなかった創造性豊かな作品約90点を紹介します。自然との共生の中で生まれた作品たちをお楽しみいただきます。
全て写真撮影可。壁面の作品は全部撮影してきたので、ご興味があったらどうぞ。
アルバム
https://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000117397772&owner_id=2083345
まずは【ミティラー画】
インド・ビハール州北部のミティラー王国。ここには、母から娘へと3000年も伝承されてきた壁画と床画の伝統芸術がある。宇宙の創造や神を描いた壁画、神々を招来するための床画は全て宗教的生活から生み出されたもので、現在は現地の女性たちの自立と独立の美術運動を通して紙に描かれるようになった(ワルリー画やゴンド画も同様)。
ガンガー・デーヴィー《上弦の月を喰べる獅子》
ミティラー画の第一人者。夢枕獏が強く感動し、同名の作品を生んだ。
なんて独創的で、装飾的で、緻密で、力強いんでしょう。私ものっけからやられちゃいました。
ガンガー・デーヴィー《アシタダル・アリパン》
こちらは床画。婚礼を描いている。婚礼があると、女たちは床に絵を描いて神を招来する。まるで絵本の表紙や、刺繍のタペストリーのような可愛らしい絵。
ガンガー・デーヴィー《スーリヤムッキーの木》
遺作で未完ながらも大きく素晴らしい絵。自然への讃歌が聞こえるよう。
シーター・デーヴィー《クリシュナとラーダー》
インドの神々を描いた作品も多い。東博東洋館でもう少し勉強しておけばよかったか。
ポーワ・デーヴィー
《クリシュナと牛》
《馬》
動物の親子が画面いっぱいに描かれる。素晴らしい迫力。気の遠くなるような細かな装飾。
カルプーリー・デーヴィー《クリシュナとラーダー》
刺し子刺繍の作家としても有名。小さな動物たちが愛らしい。
ゴーダーワリー・ダッタ《両性具有のシヴァ》
ピカソもミティラー画におおいに感動したそうで、彼がしばしば一つの顔に二つの顔を好んで描いたのはミティラー画のシヴァの影響かとも。
【ワルリー画】
先住民族ワルリー族によって描かれる。結婚式や祭りに際して、男女主に参加して壁画を描く。生計は農耕、季節によっては漁労。万物を育む女神、祖先、精霊、自然神を崇拝。
もともとは赤土の壁に白い米汁を絵具にして、竹を削った筆を用いて描くという。単純化された線描で婚礼、村祭りの様子や民話を描いている。素朴だが、細かい線描がまるで絹糸のように美しく、童話の世界に誘ってくれるよう。一つ一つの意味まではなかなか推し量れないが、ワルリー族の生活全てが凝縮したような画面に感動。
ジヴヤ・ソーマ・マーシェ《ベールから生まれた娘》
シャンタラーム・ゴルカナ《カンサーリー女神(豊穣の女神)》
なんと米粒の山!
シャンタラーム・ゴルカナ《月から雪の大地に落ちた枯れ葉》
バルー・ジヴヤ・マーシェ《きつね》
いろんな物語が想像できるね
【ゴンド画】
デカン高原に住むゴンド族。ゴンド画の創設者ジャンガル・シンは、それまでの民俗アートの枠を超え、想像力を駆使して、ゴンドの森に住む生き物、神々、伝説などを独自スタイルで描く。
ジャンガル・シン・シュヤム《虎》
わぁ、これが虎だなんて。力強くてしなやかな四肢、鱗のような模様の動体、なんと自由なのでしょう、楽しすぎます。
ジャンガル・シン・シュヤム《飛行機》
ジャンガル・シンにかかれば、飛行機もまるで動物のよう。1999年に初来日して、応接室の壁に描いたものが元となっているそうな。
展示室はひとつですが夢中になってみていたら、あっという間の1時間。たばこと塩の常設展示には入り口から覗く時間も残っていなく、大急ぎで帰還。別の展示の時に改めてこよう。
ミティラー美術館はインド現地の美術館ではなく、新潟の雪深い元廃校なんですね。ミティラー画に魅せられた館長が建てたそうな。そこから文化交流が。国も民族も気候もまったく違うところだけれど、自然豊かで、精霊たちが住むという点では一緒なのかなぁ、本当に素敵な展覧会だった。
入館すると15頁ものパンフレットをいただけるのも嬉しい。
5月16日まで
ログインしてコメントを確認・投稿する