mixiユーザー(id:2083345)

2021年04月17日21:04

469 view

4/16 国宝鳥獣戯画のすべて@東京国立博物館平成館

2015年東博で公開された時は行かなかった。外での入場待ちの長い行列と会場内の芋洗い状態に恐れをなしたためだ。
その前2007年サントリー美術館「鳥獣戯画がやってきた!」には前後期ともに行った。混んではいたが、待ちはなかった。
リストを調べてみると、断簡や模本で、その時に展示がなく、今回展示あるものは「断簡(高松家旧蔵本)」と「狩野洞益筆、松浦静山賛 模本(松浦家本)」だけのようだ。

でも、今後本物を見る機会はもうないだろうなぁ、冥土の土産に見に行くとしようか。そうそう、この展覧会も昨年7月開幕が延期したんだっけ。
フォト


11時に予約。コロナのおかげ(?)で入場人数の上限が決まっているのはありがたい。当日券も若干用意されているようだが完売。事前予約は面倒だが現場で長蛇の列に唖然!がないのは助かるので、コロナ収束後もこの方式をとって欲しい。

前日に行ったマイミクさんから「攻略法」を伝授、ありがたや。
予約時間になってから一人一人入場させるので、最初の30分は11時前から並ぶ人で長蛇の列。休憩室で早めのお弁当を食べ、ビデオ3本(計13分)を見て、トイレに行き、ロッカーに荷物を預けた頃、40分頃列が途切れたのですんなり入場。エスカレーターで第一会場へ。

入り口のキャプション、パネル展示は全て飛ばして、スロープへ並ぶ。
今回、鳥獣戯画甲乙丙丁4巻全てを一挙公開なのだが、人気の甲巻のみ「動く歩道」に乗っての鑑賞となる。そのことを昨年ニュースで知ったときは「ベルトコンベアに乗せられて美術鑑賞かよ!」と思ったが、もともと絵巻物は「繰って」みるもの、流れるように場面が自動で展開していく様の評判は上々のようだ。スロープに並んでの待ち時間は数分程度、途中途中に透過光の美しいパネルがあるので飽きない。

さて、動く歩道。マイミクさんによると、全長15m2分30秒、秒速にして10cmとのこと。そんなに速くはないけれど、じっくりみるにはやはり速い!でも、背後に人もおらず、かぶりつきの贅沢さ。
筆の運び、勢いがよくわかる。


ここからは後戻りはできなくて、次の展示室は壁沿いコの字型に乙丙丁巻が展示。展示室中央には解説しかないから、人は多くてもガラーンとした感じ。若冲の動植綵絵のような混雑はなし。皆大人しく一列縦隊。こちらは自分の足で進んでいきます。

第2会場は「鳥獣戯画の断簡と模本」、前後期展示のものがあり、一部パネルでした。
サントリーの時、私にしては珍しく図録を買い、断簡や模本から、元の姿を再現するというのをあれこれ読んでいたので、今回は純粋に絵を楽しもうと決めていた。

断簡は、どういう経緯で切り取ったかはわからないけれど、時の権力者などが「気に入った」ところを無理くり貰っちゃったのかな、そう思えば、「いい場面」選んで切り取っている風にも思える。
模本は、細部もきっちり写したものもあれば、記録として形を写しただけというものもあった。狩野探幽さん、お仕事膨大で忙しかったものなぁ、さくっと二段描きにしてたし(笑)



ここで、12時5分前、11時の回の人があらかた第2会場に移り、12時の人がまだ入場していない時間帯を見計らって、動く歩道に再び乗る。甲巻満喫。

最後の展示室は、明恵上人と高山寺について。
秘仏《明恵上人坐像》の展示は、寺の本堂に安置するかのような設えで、蔀戸越に拝むことができるようになっていたし、明恵上人が生涯大切にした蘇婆石と鷹島石は、古い木彫の展示ケースに入れられ、背景の写真が天竺への航海を思わせるような西陽射す海だった。

出展点数が少ない分、こういった雰囲気作りもよかったと思う。



しかしながら、ごった返したのはミュージアムショップ。展示より密になるのって主客転倒のような気もするが、魅惑的なキャラがさまざまなブランドやキャラクーターとコラボしているのだから仕方がない。せめてここは入場制限してほしい。

2時からは東洋館地階で「ミュージアムシアター」鑑賞。ギリギリに行ったら、一個空けの席が満席に近かった。表にウサギ、裏にカエルが描かれた団扇を渡され、クイズに参加。全問正解で、鳥獣戯画のステッカーがもらえた。
フォト フォト

フォト
https://chojugiga2020.exhibit.jp/
国宝「鳥獣戯画」は、誰もが一度は目にしたことのある、日本絵画史上もっとも有名な作品の一つです。本展では、擬人化した動物たちや人びとの営みを墨一色で躍動的に描いた甲・乙・丙・丁全4巻の全場面を、会期を通じて一挙公開! また、かつて4巻から分かれた断簡、さらに原本ではすでに失われた場面を留める模本の数々も集結します。あわせて本展では、秘仏として普段は拝観のかなわない重要文化財「明恵上人(みょうえしょうにん)坐像」をはじめとした至宝によって明恵上人の魅力に迫るとともに、高山寺(こうさんじ)選りすぐりの名宝をご紹介します。
※国宝「鳥獣戯画 甲巻」は動く歩道に乗りご覧いただきます。

第1章 国宝鳥獣戯画のすべて
第2章 鳥獣戯画の断簡と模本
第3章 明恵上人と高山寺


さて、あまりにも有名な鳥獣戯画をここで紹介するのも気が引けるが、少しだけ。

まず甲巻。
https://scrolls.uchicago.edu/view-scroll/195
兎と猿と蛙をはじめ多くの動物が擬人化され、当時の人々が行った遊びや祭りを生き生きと再現。一つ一つの仕草や表情が、墨線1本でさっと描かれ、見惚れる。

水浴び、賭弓(のりゆみ)、宴会、相撲、草合わせ、法会…。

フォト

蛙が勝って勝利の雄叫びを上げているが、前のシーンでは兎の耳を噛むという反則技。


兎は耳がネックだね。《断簡 益田家旧蔵本》では、レース優勢の兎が猿に耳を引っ張られている。
フォト


こちらは、草合わせのトラブルで蛙を殺した真犯人猿を兎が追いかけるシーン。
フォト

周囲騒然となっています。

それをみている野次馬には、狐も猫も。
フォト

鼠は猫が怖くて兎の後ろに隠れている。


甲巻に登場する動物は、兎41、蛙25、猿16、狐11、鹿2、イタチ2、鼠2、猪1、雉子1、猫1、梟1だそうだ。鹿と猪は擬人化されていない。



他に猫を探してみた。丙巻に一匹。
フォト



それと、《模本(住吉家旧蔵本)》にも登場。
フォト

これが、本編甲巻にあったのかどうか…?
フォト

↑《断簡(MIHO MUSEUM本)》と猫登場手前まで一致するから、きっとあったのね。

断簡や模本から推察する甲巻の元の姿はいくとおりの説があり、いまだ謎なのだそうだ。紙の色・質と筆遣いで、甲巻自体も2巻に分ける説があるそうだが、紙の色は分かっても筆遣いの違いまでは言われるまで気づかなかった。

乙巻は、動物図鑑。馬、牛、鷹、犬、鶏、鷲、隼、玄武(サイ?)、麒麟、豹、山羊、虎、獅子、龍、象、最後は夢を食べる獏で終わる。
https://scrolls.uchicago.edu/view-scroll/196
馬や牛や犬は喧嘩をしたり、鶏や虎は子育てをしたり、馴染みの動物も当時日本にいなかった動物も空想上の動物も皆生き生き。
「玄武(サイ)と麒麟」

フォト

「虎」
フォト

「豹」
フォト


江戸時代、虎の雄はトラで、雌はヒョウの毛皮で描かれていたけれど、この時代は虎と豹は別々の動物として描かれているね。

丙巻は、前半が人物戯画、後半が動物戯画。
https://scrolls.uchicago.edu/view-scroll/197
元々裏表に描かれていたのを二枚に剥がしたとも言われている。線描が甲巻に比べて細くこまかい。上から濃い墨でなぞった跡も見られて、それが下手。後世のぞんざいな人がやっちゃったのかね。
好きなシーンはこちら。
フォト

荷車を祭りの山車に見立てて猿、蛙、兎がはしゃぐ。葉っぱの烏帽子も可愛い。

丁巻は人物主体の巻。甲・丙巻にあるモチーフも描かれている。
https://scrolls.uchicago.edu/view-scroll/198
フォト

即興的な筆致が印象的で、今回一番興味深く鑑賞。実力絵師の席画のような、ひょうとした禅画のような、、、下手そうで実はうまい与謝蕪村(府中市美術館)を思い出す。
フォト

甲巻で猿と蛙の法会も、丁巻ではこの通り
フォト

拝む御本尊の軸絵は元三大師かな〜と想像。
フォト

じっくり見ていると、これどうなっているの?何をしているの?という疑問符がいっぱい。だから見飽きないんですね。



《断簡(東博本)》
フォト

動物たちの工夫の仮装が面白い


こちらは《模本(松浦家本)》
フォト

《断簡(益田家旧蔵本)》にもあったシーン。
上の、鹿から落ちて猿が怪我しているシーンは、《断簡(高松家旧蔵本)↓》にも《住吉家旧蔵本(模本)》にもある。
フォト


明恵上人に関連の展示としては、《春日権現験記絵》や《華厳宗祖師絵伝》もなかなか興味深いものだったし、明恵上人とともに高山寺に安置されている子犬の像が最後お見送りとはなかなか気が利いてる。
フォト
この子犬、2017年「運慶展」にも登場していましたね。



5月30日まで

29 22

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2021年04月>
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930