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2020年09月01日17:56

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8/30 洋風画と泥絵 異国文化から生れた「工芸的絵画」@日本民芸館



小田野直武展で秋田蘭画を知り、府中市美術館で司馬江漢、亜欧堂田善などしばしば拝覧、極め付けは先日行ったKITTEのインターメディアテクでの特集展示「ポラックコレクションの泥絵に見る「江戸」の景観 遠見の書割」(こちら)で、江戸時代の洋風画にますます興味が湧く。
幕末江戸には奇才の絵師が独特の絵画文化を成熟させていた一方、西洋画の陰影や透視図で奥行きを出す方法を見様見真似で実践した、こんなにも稚拙で安っぽい絵画が人気を博していたなんてなんと面白い、というのが出会ったときの印象。以来、機会あれば見てみたいと思っていた。

入院が近づき、県外移動はもちろんのこと不要不急の外出は控えるようにとのお達しがあったので、移動による人混みリスクのあるオラファー・エリアソンもバンクシーも深堀隆介も森山大道も諦め、ギャラリー巡りも人との接触になるので自粛していたら、あまりにつまらない。鬱々した気分になるので、ここは一つ、最高の気分転換へ、と出かけました。家から近いし、空いているはず。

いやはや暑い。学生時代卒論のために「形ばかり」に行った日本近代文学館、そして帰りに寄った日本民芸館、それから喫茶店のカレー。何十年ぶりなんだろう、日本民芸館には結婚後も行ったけれどそれでも30年は経っているような気がする。

柳宗悦が建てた日本民芸館は昔のまま、重い玄関戸を開けると目の前に重厚な和モダンの階段とその踊り場が広がる。東博本館に入ったときのような高揚感。

https://mingeikan.or.jp/
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コロナ対策で、事前予約制。1時間ごとの区切りで50名が定員のようだが、残数が明記されていて多い時でも半分くらい残数があった。とはいえ、次から次へと人が来る。密ではないが、ガラガラと思っていたので少し驚いた。

受付は玄関入る前、左側の小さな小窓で済ませる。パチンコ景品交換所(笑)くらいの小さな窓口。チケットとまるまったビニール袋を渡される。もともとここは土足厳禁、スリッパに履きかえる方式だったが、使い捨てのシューズカバーで対応ということだ。トイレのスリッパは靴ごと履ける巨大な代物、へ〜、こういう商品もあるのかと感心。検温はなかったが、至る所に除菌ジェル、ありがたい。



1階は特集展示「棟方志功 師との交感」
https://mingeikan.or.jp/events/heisetsu/index.html
棟方志功が生涯にわたり、かけがえのない師と仰いだ柳宗悦と河井郤]此∂静直瓜福ここでは、「不生」「華厳」など棟方の書の代表作を中心に、河井や濱田の陶器作品などを展示し、彼らの心の響き合いを感じて頂ければ幸いです。
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子供の頃棟方志功氏はまだご存命で、テレビにも時々出られていた。岡本太郎氏もそうだったが、子供心に、うへ〜っ、芸術家って変わっているなぁ、上手いんだか下手なんだかわからない、なんて思っていたものだったが、同じ時代を生きられたことが今はありがたく感じる。今見ると本当にいいなぁと思う。

浜田庄司フォト

河井寛次郎フォト
それは、濱田庄司や河井寛次郎の陶器もそうで、力強さにため息が出る。子供の頃は分厚くて田舎っぽい益子焼なんか好かなかったのに。でも家の玄関に飾ってあった濱田庄司の花瓶は、ずっとあっても見飽きない、むしろどんどん良く見えてくるという、本物の素晴らしさを私に初めて教えてくれたっけ。濱田庄司のその花瓶のことは今でも思い出したくない思い出があるのだけれど。


つやつや使い込まれた木枠の古いガラスケース越しに鑑賞していると、窓の外からセミの声。エアコンはあまり効いていなくて汗が吹き出てきたけれど、「ザ・昭和の日本の夏」を体現、気持ちの良い空間だった。



2階が特別展「洋風画と泥絵」、他小さな3室に「日本の焼物」「朝鮮の焼物」「新受贈品を中心に」。
ここの展示品にはほとんど解説がない。年代と産地、あれば作者名と作品名くらいか。知識のない私はほとほと困る。

今回すごく気になったのは《冊架文房図屏風》、朝鮮19世紀とある。
屏風に本棚が描かれているのだ。本棚にはたくさんの仕切りがあって和綴の本が平積みされていたり、筆や硯が置かれていたり、花瓶や置物が飾られていたり。ちょっとした「騙し絵」である。ああ、そうか、自分の書斎におくのね。デスクの後ろに置けば、一発で格調高い書斎に早変わり、自撮りしたらインスタ映えするね、ってことまでは想像できた。
帰宅してググったら、朝鮮李朝では数多く作られた屏風らしい。用途は想像通り、当時中国からの本は高価で簡単に手に入らず、憧れの書架を屏風に描いてもらって書斎で楽しんだという。いろんな屏風の画像が出てきて、なかなか趣深い。これはまたコレクターがいることだろう。

《洋狗図屏風》一部フォト


白と黒の洋犬が描かれた二曲一双の屏風も気になった。見たことがあるのである。どこの展覧会だろう、と帰宅後ググってみたら、そっくりな絵が何枚も出てきた。背景が違うだけで、犬自体はおそらく模写だ。あれあれ、これは一体いかに。本当、知らないことが多すぎる…



さて特別展「洋風画と泥絵」である。
https://mingeikan.or.jp/events/
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江戸時代、長崎港を通じてオランダや中国から舶来した「異国」の文化は、日本の絵画や工芸にも新しい表現を引き起こしました。異国的風物を主題に描いた絵画、ガラス絵や長崎版画、のぞき眼鏡で凸レンズから覗き見る眼鏡絵、大名屋敷や名所の風景を描いた東都江戸の土産絵・江戸泥絵などに、西洋の絵画技法の 影響下に描かれた洋風表現が見い出せます。遠近法や陰影法は、本来は事物を見たままに写しとるためのものでしたが、西洋の画家から直接学ぶことのなかった日本では独特の描写が生まれ、さらに土産絵などとして民間に広まることで簡略化し、写生画とは異なった魅力を持つ「洋風画」や「泥絵」に変容していきます。本展では、当館創設者・柳宗悦(1889〜1961)が「工芸的絵画」と呼び民画として位置付けた、江戸時代後期の洋風画と泥絵を中心に、館蔵品から紹介します。江戸時代の人々が身近に触れた「異国」の文化をご高覧いただければ幸いです。

展示は1室と2階の廊下、踊り場のみで多くはないが、実に面白かった。
黒船や異国風景を描いたものや欧州の銅版画の模写、極端な透視図法の眼鏡絵や不思議な質感のガラス絵、それにどことなくシュールな泥絵。


それ以外にも「物品」が充実。渡来ものなのか国産なのか解説がなくて残念ではあったが。
サントリーで見たものより小ぶりな《うんすんカルタ》、さらに簡略化したと思われる《カルタ金山》は、自由で伸び伸びした筆遣の絵が面白い。

印度更紗の裂を集めた見本帳で「きもの展」を思い出し、長崎ガラスの精巧さ、美しさに目を見張る。
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画像はないが瓢箪型のガラス製鎖を繋いだ手拭いかけなどは、お洒落すぎてネックレスかと思ったほど。



黒船の絵は当時大流行したらしいフォト


アンリ・ルソーの絵みたいフォト

見たまま描こうとして不気味な美人画になった祇園井特の絵を初めて見たときはかなり衝撃的だったが、うっすら陰影をつけてなんとか立体的に描こうとしたこちらの絵もすごい。
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長崎の荒木元融作。司馬江漢には下手と揶揄されたそうだが、柳宗悦お気に入りの作品だとか。



眼鏡絵は、当時欧州でも大流行したらしい。45度傾けた鏡に映した絵をレンズを通して覗いてみる風景画の一種で、立体的に見える。
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仕掛けは欧州からの輸入だが、付け替えの絵は国産で賄おう、というわけで、極端な透視図法の絵がどんどん作られた。
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これならまだいい方で、これは一体どこ?を通り越したようなかなりシュールな絵も多数。遠近法のことばかりにかまけて描いたからこうなった?
《殿中》フォト

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ガラス絵も独特だ。やはり質感が面白い。ガラス自体が希少な当時なら尚更新しかったことだろう。そういえば、昔府中美でみた「ガラス絵」展も面白かった。さくっと歴史を辿れるので貼っておく。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1957921994&owner_id=2083345

こういうカラクリ絵もフォト
小さめな色紙のような絵3点。《観月》とあるが…

「絵が変化します。  右側面のスイッチを上げてください。
(鑑賞後は消してください。)」
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絵の裏に黒紙を貼る、月や雪洞の部分だけ抜いて、後ろから光を当てると、そこだけ光る。
西洋絵画の影響で「光と影」を意識、それを日本的に「観月」という題材で活かしたってことかな。楽しいよね。

ポラックコレクションでたっぷり見た泥絵、こちらでは《名所図四十四画》のうち。
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低い位置の地平線、透視図法、広い風景に人が点描で描かれている。人は多く登場するが、イカやキノコの形で全て同じ、ポーズ、表情はない。冷たいプルシアンブルー(ベロ藍)の色調。これがお土産になった泥絵の特徴。
なんの思い入れもなく、感情もなく、機械的に量産されたような絵、しかし、独特なシュールな世界になぜか惹かれる。

こちらは9月6日まで、KITTEインターメディアテクの展示は9月30日までだが、合わせてみたら面白い。

本館の正面には、柳宗悦の住居だった西館がある。コロナの影響で今は閉館しています。
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1時半に入り3時半に出る。暑さの盛り、セミの声はまだ続いていた。
 
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コメント

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年09月01日 18:07
    そえにゃんさんは、流石に美術に関する造詣が深いですね手(チョキ)
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年09月01日 18:31
    教えて戴いてKITTE行きましたぴかぴか(新しい)

    魅力的なものばかりご紹介で悩みます。

    岡田美術館で北斎肉筆画展はしてるのを距離と時間ついでにら2800円の御値段で悩みがく〜(落胆した顔)台風

    今明後日までのオラファー・エリアソン映画カチンコ吉祥寺に行くかどうか、と明日、芸大カラフル行くかで悩み捲りのところ、また美味しいご紹介を。

    学生時代に大原美術館で民芸について関心がわき、柳宗悦に興味も出て、日本民芸館は何回か行きました。あの建物の雰囲気も素敵。

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年09月01日 20:50
    そえにゃんさんの日記は的確な表現で、勉強になります。私はなんでも、ほんわかと見ていて、体系的にわかってなくて。棟方志功が戦後すぐは絵具を買うのにも困窮してたたって、武藤先生に訊いた時、驚きました。その頃、志功氏の息子さん巴里爾君は武藤先生の生徒だったのね。同じころ、先輩の結婚式で仲人が武者小路実篤氏だったのには驚きました。歴史的なひとだと思ってて。帝国ホテルの絨毯の上を車椅子でおいでになったの。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年09月01日 22:10
    工芸館、面白そうですね。いわゆる工芸品だけの美術館と思ってたので敬遠してましたが、建物も素敵ですね。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年09月01日 23:18
    洋狗・・・私も見覚えがあって
    ・・・そうか・・・犬模写かあ〜〜〜。
    きっと外国の犬なんて誰も見たことなかったんだ。(ナットク)
    そういえば屏風絵の象もトラもみんな似てますね。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年09月02日 09:21
    民芸館は工芸品ばかり展示していると思い敬遠していましたが泥絵の企画展・・・! おもしろそうなので予約してみました。初民芸館!!わーい(嬉しい顔)v そえにゃんさん情報ありがとう指でOK
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年09月02日 13:41
    > mixiユーザー 
    国内美術展、数だけはみているのですが、もともと地道な勉強かではないので、しらないことばかりでお恥ずかしいのです。知ったことのみ、備忘録として日記に書いています。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年09月02日 13:47
    > mixiユーザー 
    KITTE、面白かったですね。無料だし、地の利もいいのでしばしな寄りたいところですね。
    民芸館、本当に久しぶりに行きました。やはりよかったです。近くの近代文学館も懐かしい感じの建物でしたよね。駒場野公園の桜も良いなぁ〜

    岡田美術館は一押しです。北斎肉筆画いいなぁ、そそ、春画も見事でした。行かれるといいですね。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年09月02日 13:49
    > mixiユーザー 手(パー)
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年09月02日 13:59
    > mixiユーザー 
    いえいえ、私は勉強家ではないのでちゃんとしたことを知らずに、そこで見聞きしたことを備忘録として日記に書いています。展覧会で知ることは多く、そのあとネットで調べて補完。ネットは便利ですね。

    棟方志功さんの御子息が先輩、しかも同じく武藤先生の教え子だったとは全く知りませんでした!驚きです。先輩の方のお仲人さんが武者小路実篤さんというのも!みなさん歴史上の人物ですもの。
    そういえば、調布に武者小路実篤記念館と言う、お住まいだったところを開放した記念館があるのですが、大学時代に夫がお嬢さんの講義をサボったら、罰として記念館の庭掃除をさせられたと言っていました(笑
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年09月02日 14:04
    > mixiユーザー 
    柳宗悦が集めた民藝の数々を展示してあるのですが、建物がとても素敵ですので、一度は行く価値有りかと思います。本当は近くの近代文学館にも特集展示があったりするのですが、今は中止しているみたい。昔そこでみた萩原葉子氏の猫コレクションが圧巻でした。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年09月02日 14:05
    > mixiユーザー 
    そうそう、ドーベルマンのような洋犬、珍しかったはずです。誰かが絵に描いて、それを模写したんじゃないかな。虎も像も多いですものね。実物見たのはほんの一握り。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年09月02日 14:09
    > mixiユーザー 
    泥絵展がなかったら私もわざわざ見に行きませんでした。でも久しぶりに見に行って、民藝のすばらしさに感動。若い時にはわからなかった魅力ですねぇ〜
    展覧会、ほとんど解説がないのです。展示室前に図録が置いてあるテーブルセットがありますので、それを是非参考に。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年09月02日 14:35
    > mixiユーザー 
    耳が裏返った象の絵なんかもありますもんねエ。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年09月02日 14:40
    > mixiユーザー 
    象さんはインドから長崎へ、長崎から京、さらには江戸へと行ったから、見た絵師は多かったかも。
    (最後は、かわいそうに、寒さと飢えで死んだんだって。涙)
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年09月02日 16:07
    > mixiユーザー 素晴らしいご経験!
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年09月02日 16:10
    > mixiユーザー お連れ合い様のエピソードほほえましいですね。もし予定通りだと、民芸品、アイヌの工芸をするはずでならば狙っていたのですが。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年09月02日 16:50
    > mixiユーザー 
    そうそう、次回はアイヌ工芸ですね。この泥絵もコロナで繰越になったんでした。

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