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2020年06月23日09:24
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6/21 深井隆〜物語の庭〜＠板橋区立美術館
板美に初めて行ったのは10年前。毎年のボローニャも気になっていたが、座敷で屏風や掛け軸が見られるという誘惑とそこに展示された河鍋暁斎の虎図で遠路はるばる出かけて行ったのだった。その時の日記がこちら。
https:/
その後もコアな展覧会に食指が動くも再訪叶わず。いやはや遠くて不便なんだもん。我が家から高島平駅まで神保町経由でゆうに1時間、そこからのバスは1時間に2本しかない。歩くとなると胸突八丁の坂あり。
高島平駅
今回は駅に着いたらすぐバスが来そうだったので、コンビニでおにぎりを買い、目的地美術館隣接の赤塚城址公園でランチ。
帰りも郷土博物館で時間を潰そうかと美術館をでたところでバスが来たので、手を振って待たせ乗せてもらい、待ち時間一切なし。
日曜日は早い帰宅で、月曜日からの体力温存に努めたいから、これはラッキーでした。
おにぎりを食べた公園 暑くもなく寒くもなく、お弁当日和 リニューアルした板橋区立美術館 小さいながらも明るくて、スタイリッシュな建物！素晴らしい照明！
古くて、座敷があって、謎の昆虫の自販機(前回日記で確認どうぞ）があった板美とは思えない〜
休憩室の天井
深井隆氏の作品はそれ１点でも鑑賞できますが、板美の展示空間を生かした展示方法は一部屋一部屋が一つの世界を作っていて、夢心地で浸ることができました。照明がまた素晴らしく、作品がつくりだす光（箔を使っているので）と影を存分に楽しめます。
昔、庭園美術館で舟越桂氏の展覧会を見た時のように、空間が作品と一体になる心地よさ。決して広くなく、解説もなく、休む椅子ソファもないのに、気づけば1時間半も会場にいました。 遠路遥々来た甲斐があったなぁ。
https:/
深井隆（1951年生まれ）は、日本を代表する彫刻家です。東京藝術大学、同大学院に学び、その後35年にわたり同校の美術学部彫刻科で指導にあたりました。深井は素材として主に樟を使い、翼のある椅子や馬など一貫したモチーフによる作品を「逃れゆく思念」「月の庭」などと詩的なタイトルを付けて発表しています。同校退任後の現在、深井は学生時代より暮らしている板橋と故郷の群馬のアトリエを拠点として制作を続けており、作品は国内外で展示されています。
深井は彫刻の展示空間に「物語」が存在すると語っています。今回の展覧会では、板橋区立美術館の展示空間全体を舞台に、いくつかの物語が展開されます。自身のセレクションによる1990年代はじめから未発表の新作までの彫刻と平面、約30点による深井隆の新たな物語のはじまりが感じられる展覧会です。
最初の展示室は「栖」シリーズ。一際高く中央にそびえるは《詩よりも遠くく》と言う作品。
鼻炎だしマスクしているしで実際には匂ってこないのだが、展示室に入った途端木のよい薫りがした気がした。素材は楠だと言う。ああ、そうか、私の好きな舟越桂の木彫もほぼ楠だったような。ぬくもりと安らぎを与えてくれる。
荒削りのノミの跡とブルー系の着色が、素朴で詩的な世界を作っている。 屋根にちょこんと乗った羽や、箔の施された屋根、水色に塗られた家には人間の控えめで質素な営みが、それらを寄木のテーブルに乗せた様子には作者の温かい眼差しが、感じられた。 そこから 垣間見えた次の展示室におもわず引き込まれる。
《円形の庭ー覚醒ー》と《幻想の闇より》
《円形の庭ー覚醒ー》
庭というが、私には森が感じられた。夜の空の色がそのまま地面に映る。 面は寄木だ。年輪、板目がいろんな表情を作っている。
これは裏からみた。
《幻想の闇より》
ベッドに槍が突き刺さる。貫通しているものもある。ベッドの一部をそのまま荒削りに残し、そこがまるで夢と現実を行き来する時空のよう。夢の孤独な世界に落ちていく瞬間にどきっとしたが、影を見て気づいた。槍が突き刺さっているのではなく、これは光のシャワーなのではないか。漆黒の夜、睡眠の世界に降り注ぐ、光。それは覚醒？意識？作者の意図は果たして…？
中央に戻り、椅子シリーズの部屋へ。
人間のささやかな営みや、夜の光に比して、なんとも力強い作品群だ。 繰り返す使われるアイテムは、椅子、翼、りんご、本もしくは箱。
《あるいは逆さになった眼球》
圧倒的力強さと躍動感に不動明王、あるは四天王…裁かれているような気持ちになる。仏像を感じたのは私だけだろうか。
《王と王妃》
他の作品が大抵寄木だが、これは一木造り？彫り出して行っている。すごい重量感、存在感。林檎は当然アダムとイブ象徴だが、四角いものは本？ならば知性を表しているのだろうが、箱かもしれない。どっちだろう。
《逃れゆく思念ー旅の記憶ー》
《逃れゆく思念ー時の風にー》
《王と王妃�掘�
翼がたくさんあるもの、片翼のもの、翼のないもの。椅子は人間そのものだろう。では翼は何を意味する？
さらに奥にすすむと《青空2020》最新作
比べると床に置かれた翼はやや黒ずんでいる。飛び立つ翼は生命漲る鮮やかな青なのに。よく見るといろんな色が塗り重ねられていて、落ちて朽ちゆくものが刻々と色変わりしていく様が感じられる。勇者は、古い翼は脱ぎ捨てて、次へと飛んでゆくのか。
そして、一番好きな部屋はここ。
《月の庭ー言葉を聞くためにー》
満月と馬と梢。静謐で神聖な世界。青空もいいが、月に照らされた地上は神秘に満ちている。気持ちがスッと落ち着く。
深井氏の馬は、古代埴輪の馬のようでも、中世チェスの馬のようでもあるが、影のシルエットがリアルな曲線でできているのに驚かされる。生きている。
月は寄木でできていて、年輪に貼った箔の表情が宇宙の神秘を物語っているよう。
さらに進むと今度は銀の馬が。
《月の庭ー月に座すー》
馬の鼻向けた先が、球体と円錐。鉛筆の先の示す方向が微妙に違う。あ、「月の庭」とは石庭？ならばこれこそが禅問答なのかも。 ずっと居て飽きない部屋。にわか哲学者になろう。
影との対話は自分との対話だ。
《対話》
作品を載せているチェストは深井氏のものですか？係に人に伺ったら、板美の所有品、深井氏が気に入ってここに飾ることになったらしい。
コロナ対策は注意喚起の張り紙と消毒液、受付のビニールカーテンくらいか。それで十分すぎるほどの人の少なさ。
6月28日まで。おすすめです。
アルバムはこちら。全館撮影可。他の作品もありますのでよかったらご覧ください。 https:/
近所のアガパンサスが咲き出しました。
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その後もコアな展覧会に食指が動くも再訪叶わず。いやはや遠くて不便なんだもん。我が家から高島平駅まで神保町経由でゆうに1時間、そこからのバスは1時間に2本しかない。歩くとなると胸突八丁の坂あり。
高島平駅
今回は駅に着いたらすぐバスが来そうだったので、コンビニでおにぎりを買い、目的地美術館隣接の赤塚城址公園でランチ。
帰りも郷土博物館で時間を潰そうかと美術館をでたところでバスが来たので、手を振って待たせ乗せてもらい、待ち時間一切なし。
日曜日は早い帰宅で、月曜日からの体力温存に努めたいから、これはラッキーでした。
おにぎりを食べた公園 暑くもなく寒くもなく、お弁当日和 リニューアルした板橋区立美術館 小さいながらも明るくて、スタイリッシュな建物！素晴らしい照明！
古くて、座敷があって、謎の昆虫の自販機(前回日記で確認どうぞ）があった板美とは思えない〜
休憩室の天井
深井隆氏の作品はそれ１点でも鑑賞できますが、板美の展示空間を生かした展示方法は一部屋一部屋が一つの世界を作っていて、夢心地で浸ることができました。照明がまた素晴らしく、作品がつくりだす光（箔を使っているので）と影を存分に楽しめます。
昔、庭園美術館で舟越桂氏の展覧会を見た時のように、空間が作品と一体になる心地よさ。決して広くなく、解説もなく、休む椅子ソファもないのに、気づけば1時間半も会場にいました。 遠路遥々来た甲斐があったなぁ。
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深井隆（1951年生まれ）は、日本を代表する彫刻家です。東京藝術大学、同大学院に学び、その後35年にわたり同校の美術学部彫刻科で指導にあたりました。深井は素材として主に樟を使い、翼のある椅子や馬など一貫したモチーフによる作品を「逃れゆく思念」「月の庭」などと詩的なタイトルを付けて発表しています。同校退任後の現在、深井は学生時代より暮らしている板橋と故郷の群馬のアトリエを拠点として制作を続けており、作品は国内外で展示されています。
深井は彫刻の展示空間に「物語」が存在すると語っています。今回の展覧会では、板橋区立美術館の展示空間全体を舞台に、いくつかの物語が展開されます。自身のセレクションによる1990年代はじめから未発表の新作までの彫刻と平面、約30点による深井隆の新たな物語のはじまりが感じられる展覧会です。
最初の展示室は「栖」シリーズ。一際高く中央にそびえるは《詩よりも遠くく》と言う作品。
鼻炎だしマスクしているしで実際には匂ってこないのだが、展示室に入った途端木のよい薫りがした気がした。素材は楠だと言う。ああ、そうか、私の好きな舟越桂の木彫もほぼ楠だったような。ぬくもりと安らぎを与えてくれる。
荒削りのノミの跡とブルー系の着色が、素朴で詩的な世界を作っている。 屋根にちょこんと乗った羽や、箔の施された屋根、水色に塗られた家には人間の控えめで質素な営みが、それらを寄木のテーブルに乗せた様子には作者の温かい眼差しが、感じられた。 そこから 垣間見えた次の展示室におもわず引き込まれる。
《円形の庭ー覚醒ー》と《幻想の闇より》
《円形の庭ー覚醒ー》
庭というが、私には森が感じられた。夜の空の色がそのまま地面に映る。 面は寄木だ。年輪、板目がいろんな表情を作っている。
これは裏からみた。
《幻想の闇より》
ベッドに槍が突き刺さる。貫通しているものもある。ベッドの一部をそのまま荒削りに残し、そこがまるで夢と現実を行き来する時空のよう。夢の孤独な世界に落ちていく瞬間にどきっとしたが、影を見て気づいた。槍が突き刺さっているのではなく、これは光のシャワーなのではないか。漆黒の夜、睡眠の世界に降り注ぐ、光。それは覚醒？意識？作者の意図は果たして…？
中央に戻り、椅子シリーズの部屋へ。
人間のささやかな営みや、夜の光に比して、なんとも力強い作品群だ。 繰り返す使われるアイテムは、椅子、翼、りんご、本もしくは箱。
《あるいは逆さになった眼球》
圧倒的力強さと躍動感に不動明王、あるは四天王…裁かれているような気持ちになる。仏像を感じたのは私だけだろうか。
《王と王妃》
他の作品が大抵寄木だが、これは一木造り？彫り出して行っている。すごい重量感、存在感。林檎は当然アダムとイブ象徴だが、四角いものは本？ならば知性を表しているのだろうが、箱かもしれない。どっちだろう。
《逃れゆく思念ー旅の記憶ー》
《逃れゆく思念ー時の風にー》
《王と王妃�掘�
翼がたくさんあるもの、片翼のもの、翼のないもの。椅子は人間そのものだろう。では翼は何を意味する？
さらに奥にすすむと《青空2020》最新作
比べると床に置かれた翼はやや黒ずんでいる。飛び立つ翼は生命漲る鮮やかな青なのに。よく見るといろんな色が塗り重ねられていて、落ちて朽ちゆくものが刻々と色変わりしていく様が感じられる。勇者は、古い翼は脱ぎ捨てて、次へと飛んでゆくのか。
そして、一番好きな部屋はここ。
《月の庭ー言葉を聞くためにー》
満月と馬と梢。静謐で神聖な世界。青空もいいが、月に照らされた地上は神秘に満ちている。気持ちがスッと落ち着く。
深井氏の馬は、古代埴輪の馬のようでも、中世チェスの馬のようでもあるが、影のシルエットがリアルな曲線でできているのに驚かされる。生きている。
月は寄木でできていて、年輪に貼った箔の表情が宇宙の神秘を物語っているよう。
さらに進むと今度は銀の馬が。
《月の庭ー月に座すー》
馬の鼻向けた先が、球体と円錐。鉛筆の先の示す方向が微妙に違う。あ、「月の庭」とは石庭？ならばこれこそが禅問答なのかも。 ずっと居て飽きない部屋。にわか哲学者になろう。
影との対話は自分との対話だ。
《対話》
作品を載せているチェストは深井氏のものですか？係に人に伺ったら、板美の所有品、深井氏が気に入ってここに飾ることになったらしい。
コロナ対策は注意喚起の張り紙と消毒液、受付のビニールカーテンくらいか。それで十分すぎるほどの人の少なさ。
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