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2020年01月27日16:05

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1/26 ハマスホイとデンマーク絵画@東京都美術館

昨年初め1枚ペラの詳細なし画像だけのチラシができた時から楽しみに待っていた展覧会。

名称表記が変わっていました。ハンマースホイがハマスホイに、スケーエン派はスケーイン派に、ミカエル・アンカーはミケール・アンガに、ペーダー・セヴェリン・クロヤーもピーザ・スィヴェーリーン・クロイアに。
苦慮しているのはデンマーク語が日本に馴染みがないからなのだろう。ブタペスト展と同じように名前が覚えられそうもない!
デンマークという国も然り。よく知らない。ただ、ドル360円時代に父がコペンハーゲンに出張に行ったおかげで子供心にロイヤルコペンハーゲンの陶磁器だけには親しんでいた。食器道楽の実家にはコーヒーカップセットが、我が家にはサラダボウルがある。細かいひだ、ほんわりした柔らかいいい藍色、好き。

ハマスホイは2008年に西洋美術館で見て、以来ファンに。夫も同様で、覚えづらい名前を忘れないようにと、帰り道二人で「ハンマースホイ、ハンマースホイ」と唱えていたっけ。その時の日記がこちら、拙いけれど興奮が伝わるかな。

https://mixi.jp/view_diary.pl?id=987031252&owner_id=2083345

それをきっかけに西洋美術館が新所蔵した作品が、よくぞいいのを選んでくれた!と嬉しくなる作品(↓)で、常設で見かけるたびに「いいね、いいね」と言った。
フォト

今回は、前半にデンマーク画家の作品を時系列で観せて、デンマーク絵画の潮流を勉強、ハマスホイは後半40点で、しかも完成期の「誰もいない(もしくは妻イーダの後ろ姿があるのみの)シンプルな室内」の絵が少なかった。前回見た作品もあり(それはそれで良いのだが)、ハマスホイをたくさん見たいと思ったら少し残念。

でもその分、ハマスホイの絵画が生まれた土壌というのが、他の画家の絵を見て理解できるようでかなりの収穫。私のような無知不勉強では、前回の展覧会でよくわかっていなかったのである。
デンマークは、いつぞやブータンで話題になった「幸福度」でトップの国。「ヒュゲ(hygge)」とは、寛いだ、心地よい雰囲気という意味のデンマーク語だが、国民はこのヒュゲをとても大事にしているという。展覧会はまさにヒュゲであった。
「部屋に飾りたい絵」というものがあるが、この「飾りたい絵」が飾ってあるような室内や人々の暮らしを描いた絵を見て、しみじみとデンマークに行きたいなぁ、などと思う。

https://www.tobikan.jp/exhibition/2019_hammershoi.html

https://artexhibition.jp/denmark2020/

身近な人物の肖像、風景、そして静まりかえった室内――限られた主題を黙々と描いたデンマークを代表する画家ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864-1916)。17世紀オランダ風俗画の影響が認められることから “北欧のフェルメール” とも呼ばれるハマスホイの作品は、西洋美術の古典を想起させる空気を纏いつつ、近代の都市生活者特有の、ある種の郷愁を感じさせます。
欧米の主要な美術館が続々と作品をコレクションに加えるなど、近年、ハマスホイの評価は世界的に高まり続けています。日本でも2008年にはじめての展覧会が開催され、それまでほぼ無名の画家だったにもかかわらず、多くの美術ファンを魅了しました。
静かなる衝撃から10年余り。日本ではじめての本格的な紹介となる19世紀デンマークの名画とともに、ハマスホイの珠玉の作品が再び来日します。

1 日常礼賛〜デンマーク絵画の黄金期

1800年〜1864年を黄金期という。特に1820年〜1850年には多くの画家を輩出。デンマーク特有の風景にスポットを当て、肖像画は堅苦しいものでなく親密なものとなる。

クレステン・クプゲ《パン屋の傍の中庭、カステレズ》フォト
ハマスホイが敬愛していた画家

クレステン・クプゲ《ブランスー島のドルメン》フォト
ドルメンというのは巨石記念物のこと、日本で言ったら奈良の石舞台みたいなのかな。この時代の絵画は細かいところまで緻密。単眼鏡でのぞいて、やっと鳥が親子でいることがわかった。


2 スケーイン派と北欧の光
1840年代はナショナリズムの機運が高まった。画家たちはユラン半島のスケーインという場所を「発見」厳しい自然の中で労働する漁師にプリミティヴなデンマークを見出す。フランスから入った印象派にも影響され、北欧の光を強く意識。

スケーイン派は、2017年にシャセリオー展に行った時に知る。ヒロイックな漁師の絵と美しい印象派が印象的だった。
こちら
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1959735345&owner_id=2083345

ミケール・アンガ《ボートを漕ぎ出す漁師たち》フォト
遭難した船の救助に向かう仲間たち。右端に描かれた女性は難破した船の船員の妻だろうか。気丈に振る舞う少年は息子かな。

オスカル・ビュルク《遭難信号》フォト
こちらも緊迫した場面だ。何もわからないでいる赤ちゃんが余計に対照的で。

ヴィゴ・ヨハンスン《台所の片隅、花を生ける画家の妻》フォト
スケーインに魅せられて移住した画家も多い。摘んできたばかりの花を花瓶に活ける姿。このあたりから、次の3章で紹介された多くの作品〜日常の一コマを描いた室内の絵〜の登場人物が、ほとんど後ろ向きか横向きで顔が見えないことに気づく。ハマスホイの特徴の一つとして、簡素な室内にポツンと女性の後ろ姿が挙げられるが、これってデンマーク絵画の特徴なのかな。

ピーザ・スィヴェリーン・クロイア《朝食〜画家の妻マリーイ、作家のオト・ベンソン》
フォト
戸棚の上の飾り皿、壁のカップ&ソーサー、テーブルの食器、ほとんどが藍地のデンマーク陶磁器。素敵だな。

ピーザ・スィヴェリーン・クロイア《スケーイン南海岸の夏の夕べ、アナ・アンガとマリーイ・クロイア》
フォト
土地独特の夕暮れの「青い時間」を描いたという。灰色がかった青、青味を帯びた灰色、ハマスホイの通じるような。


3 19世紀末のデンマーク絵画〜国際化と室内画の隆盛

1880年代王立アカデミーに反旗を翻した独立派の画家たちが、自宅室内を描き始める。幸福な家庭、親密さが主題となり、モチーフの美しさ、色彩の調和、光の微妙な描写を重じる。20世紀近くになると、物語性のない無人の室内を美的空間と捉え、絵画的要素の洗練された統一を目指す。

ヴィゴ・ヨハンスン《きよしこの夜》フォト
ツリーの周りを手を繋いで回りながら踊り歌うのがデンマークの風習。光に照らされた子供たちの輪郭線が、暖かく美しく幸せであることを強調しているかのよう。

ピーダ・イルステズ《ピアノに向かう少女》フォト

《縫い物をする少女》フォト
ピーダ・イルステズはハマスホイの妻の弟。足の細い家具、シンプルな壁紙と同じくシンプルな額。床に届かない少女の足にはきちんとした黒い靴下を履いており、髪は三つ編み。品のいい都市の生活を感じる。

カール・ホルスーウ《読書する少女のいる室内》フォト
こちらの調度品はややディコラティブ。同じ鏡を描いた無人の絵もあった。ギーオウ・エーケン 《飴色のライティング・ビューロー》はまさしく、私が子供の頃に憧れた家具!


4 ヴィルヘルム・ハマスホイ〜首都の静寂の中で
ハマスホイの展示室は白い窓と壁で区切られていた。最近はこんなふうに趣向を凝らす。
全体の感想は、2008年の日記をどうぞ
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=987031252&owner_id=2083345

《寝室》フォト

初めての室内画は1888年、1898年〜1916年にはコペンハーゲンのアパートを何軒が移り住んだ。後期帝政時代の上質な家具を暖かな光で包み調和が取れた抑えた色彩で描く。抑えた温かみのあるモノトーンの階調は素晴らしく、私の好きなモランディの色調とも似ているが、あちらがマットなのに対して、こちらはグロス、輪郭線もすっきりとしていて、モランディが陶器ならこちらは磁器のイメージ。
物語を「拒否」したモチーフなのに「ヒュゲ」なのは、柔らかい光のおかげかもしれない。

野外の建築物もまた同様に美しかった。中でも《ライラの風景》が他と比べて鮮やかで目を引く。
フォト

《室内》フォト
ロンドンの仮住まい。クロスの折り目がいい。

《背を向けた若い女性のいる室内》フォト

《ピアノを弾くイーダのいる室内》フォト

フォト
絵に登場するロイヤルコペンハーゲンのパンチボウルとピューターのトレイも展示。パンチボウルは蓋が割れていて鎹で修理してあった。そのせいか蓋がピタッと閉まらないのだが、その有様も絵に描かれている。
どうでもいいことかもしれないが、日本なら綺麗に金継ぎして直したものを、鎹で留めてちゃ歪んじゃうよね。

《室内〜開いた扉、ストランゲーゼ30番地》フォト
扉の上の方が歪んでいるのは。カンヴァスをひっぱりすぎて張ったからだって。今更直すわけに行かないのだろうか、気になる。

《カード・テーブルと鉢植えのある室内、ブレズゲーゼ》フォト


2020年1月中best1の展覧会。3月26日まで。まだ空いています。

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