山種美術館で現在開催中の展覧会「上村松園と美人画の世界」の関連イベントとして、山種美の顧問をなさっている山下裕二先生の講演会があり、聞いてきました。
http://www.yamatane-museum.jp/event/2020uemurashoen.html
山下先生の講演は、いつも時間通りに始まって時間通りにピタッと終わる、雑談のようだけれど、ポイントがはっきりしていてわかりやすく、裏話やエピソードが面白く、宣伝と称した前情報にワクワクする。夫もファンで、山下先生と山田五郎さんの講演は仕事のやりくりをしても聞きに行くほど。ただ、こういう募集って、アンテナを張っていないと見落としちゃうのよね。それをいつも教えてくれるのがさくら☆さん、ありがたい美術展友達です。
これも昨年11月半ばに満員になる直前に申し込めました。今日は朝から氷雨、昼前には雪やみぞれに変わって、予報外れて夕方まで降り止まず。2時開演、1時半受付で、1時少しすぎに着いたらボチボチ並んでいる人たちが。満席だそうです。年齢層はかなり高め、かくいう我々もその代表。さくら☆さんと落ち合って、夫も開演前に間に合いました。
渡された資料は昨年8月から9月に藝大美術館で開催された「円山応挙から近代京都画壇へ」展のチラシコピー。ああ、しまった！これ、行きたくてチェックしていたんだけれど退院直後で体力不足、行かれなかったのよね。
お話は、この展覧会の目玉、応挙の孔雀の襖絵（大乗寺）から。襖絵は、美術館で見るよりやはりその場で見なくちゃ良さがわからないという話。そりゃそうだろうと思うが、なるほど、寺の照明は天井にはなく光がフラットに当たらない、入り口から差してくる外光が畳に反射して見えるものだから、金箔の陰影が味を出し、墨の濃淡も余白もそれを計算されて描かれていると言われると、ますます納得。ああ、古都のお寺巡りも昔は趣味だったのに、もう何十年も前のことだわ。
さらに、別の絵だが、応挙描く孔雀の首の迫り出しがいかに上手か、それに比べて、上手いと言われる長沢蘆雪さえも叶わない、という話にもまたなるほど。
自ら流行らせてしまったが、蘆雪や蕭白、暁斎など「奇想の系譜」もいいが、生真面目で丁寧な円山応挙をもっと評価すべきとのご意見でした。
さて、円山派は円山応挙から発した流派だが、その弟子呉春が円山四条派、虎図が得意な岸駒が広めたのが円山岸派、猿が得意な森祖先が円山森派と言われる。岸派では岸竹堂を紹介。また、山元春挙については、早世だったため埋もれてしまったが是非とも再評価したい絵師だと紹介していました。うん、以前もその話をされていたので、ついつい気になって見ていたが、カラフルで独特な色遣いが不思議な雰囲気を醸し出している。
さて、上村松園はというと、円山四条派をしっかり受け継いだ画家であること。応挙の絵と並べて見ても、時代の差を感じないという。ああ、そのことに気づいていなかった。なるほど、松園の美人画は近代の女性を描いたのと、江戸時代そのままの女性を描いたのと２通りある。
抑揚のないすっきりした線描、岩絵具の色そのままの発色を生かした美しい色遣い、生涯安定した描き方をした画家であることを話されました。
ちなみに、戦後の日本画家には岩絵具を混ぜてわざわざ汚い色にして盛り上げて描く画家もいると嘆いておられたが、それって高山辰雄とかのことかな…とちょっとドキドキした（私は高山辰雄が好きなので・汗）
後半は出展の作品についての解説でしたが、私は明日観覧予定なので、先生の解説はそのレポで紹介したいと思います。
最後に、明治以降の絵画に国宝がまだないこと、重文も驚くほど少ないことを主張。これも毎回話されているな。きっとあちらこちらで運動されているのでしょう、嬉しいことです。
そして、最後にワクワクするお得情報。来年春には、今山下先生一押しの渡辺省亭の大回顧展が藝大美術館で開催。そうか！それで2日に東博で省亭の絵を熱心に写真に撮っていらしたんだ（
こちらの日記）、《群鶏図》が貸し出されるのでしょうか。
また、名古屋では曾我蕭白展があり、東京の三井記念美術館には、これまた推しの小村雪岱展が回ってくるとのこと。小村雪岱はわざわざ川越まで見に行ったけれど、また見たいな。
それから、もう一つのいい情報、上村松園と並び称される美人画の大家鏑木清方が渡辺省亭を尊敬していたと山下先生に教えてくれたのが、あのキャバレー王の福富太郎氏だそうです。福富太郎氏のコレクションは名高いが、戦争画はまとめて現代美術館に寄贈され、もうひとつのコレクション美人画は、再来年東京ステーションギャラリーでお披露目となるらしい。先の楽しみがまたできてしまったわ♪
あっという間の１時間半、内容盛り沢山のノンストップ、しかも見事に1分違わず時間通り終了でした。
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