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2019年12月07日20:39

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12/6 鏑木清方 幻の《築地明石町》特別公開@東京国立近代美術館

いつだったか山下裕二先生が講演会で、日本で真に画力ある画家は、河鍋暁斎と鏑木清方と山口晃だけだと言っていた。
そして、私はといえば、子供の頃母にもらった婦人画報の付録の絵葉書を大切にしていた。上村松園、伊東深水、そして鏑木清方の美人図だ。日本髪のも洋髪のもあるが着物を着ている婦人の絵、いずれも楚々としてほんのり色香があって美しい。何枚かは使ってしまったが、今でも家にあるのではないかと思う。

鏑木清方の名品《築地明石町》が44年振りに発見されたという。3部作となる《新富町》《浜町河岸》も同時購入され、近美の新所蔵品となった。先週日曜日に観に行こうかと思ったが、ちょうどその日の朝テレビで紹介され、皇居乾門も公開されていることから、混むだろうなぁ〜と思い断念。3年後に鏑木清方展もあるし、行かなくてもいいや…が、なんだか3年後に自分が美術館に行く体力があるか不安になってきた。やはり思い立った時に観ておこう…。悔いを残さないために。

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https://www.momat.go.jp/am/exhibition/kiyokata2019/
東京神田に生まれ、挿絵画家として画業をスタートさせた鏑木清方(1878-1972)は、美人画で上村松園と並び称された日本画家です。今年、当館では、清方の代表作として知られながら、1975(昭和50)年以来所在不明であった《築地明石町》と、あわせて三部作となる《新富町》《浜町河岸》の3点を新しく収蔵しました。これを記念し、三部作のお披露目と、所蔵の清方作品をあわせた特別展示をおこないます。小規模ですが、重要文化財《三遊亭円朝像》や12幅対の《明治風俗十二ヶ月》など、粒よりの名作が並ぶ贅沢な展示です。
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果たして、平日なのに混んでいた。紅葉狩り帰りの人も多いようで、美術館慣れしていないのか、ロッカーにコートを預けることをせず、モコモコのダウンコートに大きなリュック、暑くてチラシでパタパタ仰ぎ、大きな声で喋る。うう、日曜日にこなくてよかった。もっと酷かっただろう。この手の混雑が一番気が散って見づらい。

特別展は、いつも日本画所蔵品を常設している3階のコーナーだけ。なので、いつも見られる他の近代日本画作品はなし。近美の所蔵品の半分は前衛アートになるので、近代日本画がないと所蔵品展としてはイマイチ面白くない。私の好みでは800円は割高(セコくてすみません)な感じは否めない。

作品リストは4つ折りにしてA4になる、つまりA2サイズ。力、入っているなぁ。全作品の写真(モノクロ)入りだ。当時の地図も載って場所も示している。そう、鏑木清方の絵には情報がいっぱい詰まっているのだ。遠近法で淡くさらさらと描かれた背景で場所や時代がわかったり、調度や草花で行事がわかったり、着物の柄、しかもチラと見える裏地や長襦袢の柄で季節がわかったり、細部まで見るのが楽しい。

その点では、《明治風俗十二ヶ月》は見ごたえあり。
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右から4月、6月、10月、12月の画像だが、8月のかき氷などは新しい風俗だろう。10月の夜、思い思いの作業を照らすのはランプ、柱時計は8時を回る。これも新風俗。楽しい。

《鰯》フォト
鰯売りの少年が勝手口から鰯を売るシーン、さすが挿絵画家、その様子が生き生きと描かれていて、細部まで見ていて飽きない。簾越しに見えるものの描き方が上手くて唸る。

《初冬の花》フォト
そうかと思えば、全く背景のないこの屏風、実は表装が当時流行りの描き表装、山茶花の花が描かれている。粋な縞の着物、線の描き方の見事なことと言ったら!

そしていよいよ三部作
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《浜町河岸》フォト
踊りのお稽古帰りの若い娘。つまみ簪とバラの花の簪。他の2点と比べて色が艶やかで赤が多用なのも若さを強調。

《築地明石町》フォト
イギリス巻という髪型の上流夫人。羽織の裏地と口紅の赤が差し色となって効いている、すごくオシャレ。再現した羽織と着物の展示もあり、羽織には細かい地模様。ならば絵にも地模様があるかと、目を凝らしてみたら、単眼鏡でなんとか確認。小紋の着物といい、気の遠くなるような細密画。

《新富町》フォト
こちらは芸者さん。劇場が多かった新富町、背景は絵看板で演目は「仮名手本忠臣蔵」だそうだ。チラと見える襦袢の模様が紅葉と菊であることから秋雨の図。《築地明石町》が初秋で、《浜町河岸》が枯れ柳から初冬だから、3部作はわずかな季節の移ろいを巧みに表現している。こちらも着物の柄が細かい。

美人画の中に、いつも展示してある清方の円朝の肖像と、清方の弟子伊東深水が描いた清方の肖像、お爺さん二人が混じる展示も面白い。

12月15日まで



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