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2019年11月11日21:19
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11/10 齋藤芽生とフローラの神殿＠目黒区美術館
気持ちが落ち込んでいる時に最も効くのが美術館。たとえ体調不良を押しても出かけた方がいい場合が多い。美しい絵や考えさせられる作品、面白いアート、夢中に見入る時間は憂いを払拭する。ただ、混雑だけは苦手だ。世界に入り込めないから。
先週のエドワード・ゴーリーに続いて、ブラックでマニアックな独自世界を楽しめそうな展覧会が目黒区美術館であった。全くノーチェックだったのだが、さくら☆さんが山下裕二先生の対談に参加、レポしてくれて初めて知った。齋藤芽生。若冲や暁斎ブームの火付け役、山口晃はもとより吉村芳生など、独自の世界観を持って超絶画力で緻密に描く現代作家を推す山下先生が講演会を開く作家ならば、面白いに決まっておろう。
目黒区美術館には権之助坂を下りなければ行かれない、たった１駅なのにバスに乗る。その１駅が歩けない。が、公園に入ると秋の木漏れ日が気持ち良い。歩いていたくなる。
https:/
目黒区美術館では、これまで「線の迷宮〈ラビリンス〉」と題し、線の魅力と可能性に迫る企画を、「細密版画の魅力」展（2002年）、「鉛筆と黒鉛の旋律」展（2007年）とシリーズで展開し、好評を得てきました。第3回目となる本展では、過去と現代のはざまを独自の視点で捉える画家 齋藤芽生の絵画世界と、19世紀植物図鑑の名作《フローラの神殿》を紹介します。
「美術と文学の間で揺れ動いていた若い私にとって、博物学への興味は新鮮なビジョンをもたらした。一枚で独立した絵画ではなく、言葉と複数の絵からなる博物図鑑として、ものごとの体系を表現するアイディアを得たのだ。観察対象は外界の自然物ではなく、「表立って語られることのないひそやかな人生の縮図」だった。」
このように作家が語る、制作初期の《毒花（どくばな）図鑑》や《日本花色考》には、花に託された思春期の心理が、図鑑のかたちで表現されています。やがて花のモチーフから離れ、箱型の団地の窓を扱う一連のシリーズが始動。自らが幼少期を過ごした団地の記憶を元に描いた《晒野団地四畳半詣（さらしのだんちよじょうはんもうで）》では、窓枠の奥に人々の気配が描かれます。そしてその後、窓のうちの居住者へ向けられていた作家の観察眼は、外へと向かいます。図鑑や窓といった形式から脱し、日本各地への旅を重ねながらイメージを収集した現実の記録と過去の記憶がモチーフとなった《密愛村（みつあいむら）�掘Ν検佞筺毀邁仟院覆里咾召�）》。ここでは、ロードムービーの一場面をみるかのように、今も街道沿いに遍在する歓楽施設の跡地などが再構築されています。同時に、学生時代の作家にも刺激を与えたという植物図鑑《フローラの神殿》を展覧します。本作には、28種の花々の堂々たる姿が描かれるとともに、他に類を見ない詩的な背景描写がなされ、19世紀における世界へのまなざしを見て取ることができます。
本展は、齋藤芽生作品（約100点）と、植物図鑑の至宝《フローラの神殿》（30点）を同時に展覧し、「図鑑」のように複数の絵画と言葉で社会を描く現代作家の魅力に迫ります。
展覧会は空いていた。ゴーリーと同様、すごく細かいので単眼鏡は必須。テキストもまた作品の一部なのでじっくり読む。
初期作品の短歌のようなテキストもハッとする語感。図鑑スタイルの作品に直接書き込まれたテキストや作品横にタイトルと一緒に掲げられたキャプションは、ブラックなユーモアが満載で面白い。架空の花なのにまことしやか、その実、まるで人間のことを皮肉っているようでもある。
全体的に70年代アートの香りがしたが、作家自体が1973年生まれなので、ズレがある。が、幼い時の記憶をたどったような、或いは生まれ出ずる前に仕込まれたような記憶から作られた作品だから、70年代アートと感じても不思議はない。特に晒野団地シリーズは、実家の近所に高度経済成長象徴の巨大団地があったので、その面白さにグイグイ引かれた。
齋藤芽生の作品はまるでCGのように色が美しかった。特に赤色が印象的。遊郭や花魁を題材にした絵や写真で見た赤と似ている。禍々しく、淫靡で、物悲しい。
花は彩度上げすぎの造花のようで、細い鋭い線の累積が変質的だったりするが、彼女が影響を受けたという19世紀の植物図鑑《フローラの神殿》一連の作品を見てなんだか納得。
大真面目な博物学図鑑なのだが、世界の珍奇で美しい植物に対する飽くなき探究心と世界各地の風景に対する盛り盛りの好奇心が異常なほど画面に込められていて不気味、却ってドン引き。そこが齋藤芽生が引き継いだ系譜。
風景は嘘っぽい夢の中のようで、テラテラに光る配色が毒々しかったり、そのグラデーションが綺麗すぎて、ワンテンポ遅れて変なものが描かれていることに気づく。奇妙奇天烈。やたら目を引くが、遠い記憶にあるような懐かしい風景であるところが不可思議。
会場内とカフェのあるロビーに彼女の撮った写真がスライドショーで流れていた。写真も上手！場末の寂れた歓楽街や昭和の匂いのする観光地、目の付け所が好み。彼女の視線がそこにあるから、こういう作品が生まれるんだと納得。私より15歳ほど若いが同年齢に感じる。
ミーハーのようだが、山下裕二氏蔵と絹谷幸二蔵の作品を発見、いい作品買っているなぁ。
第１章 花の迷宮〜齋藤芽生とフローラの神殿
《毒花図鑑》
《徒花図鑑》
《徒花園》
《日本花色考 二十四の図案・二十四の読解》
《自画像》
《フローラの神殿》
第２章 窓の光景
《晒野団地四畳半詣》
《晒野団地聖母子堂》《晒野団地聖処女堂》
《ロビリンス》
《香星群アルデヒド》
第３章 旅をする魂
《密愛村�掘奸�
《密愛村�検�
《野火賊》
《獣道八十八号線》
《暗虹街道》
赤字になっているシリーズは写真撮影可なので、全作品を撮ってきました。下手な説明よりキャプションを読んでもらった方がいいので、アルバムにしました。ご興味ある方、ぜひご覧ください。
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面白かったです。ハマる人にはハマるかも。12月1日まで
先週のエドワード・ゴーリーに続いて、ブラックでマニアックな独自世界を楽しめそうな展覧会が目黒区美術館であった。全くノーチェックだったのだが、さくら☆さんが山下裕二先生の対談に参加、レポしてくれて初めて知った。齋藤芽生。若冲や暁斎ブームの火付け役、山口晃はもとより吉村芳生など、独自の世界観を持って超絶画力で緻密に描く現代作家を推す山下先生が講演会を開く作家ならば、面白いに決まっておろう。
目黒区美術館には権之助坂を下りなければ行かれない、たった１駅なのにバスに乗る。その１駅が歩けない。が、公園に入ると秋の木漏れ日が気持ち良い。歩いていたくなる。
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目黒区美術館では、これまで「線の迷宮〈ラビリンス〉」と題し、線の魅力と可能性に迫る企画を、「細密版画の魅力」展（2002年）、「鉛筆と黒鉛の旋律」展（2007年）とシリーズで展開し、好評を得てきました。第3回目となる本展では、過去と現代のはざまを独自の視点で捉える画家 齋藤芽生の絵画世界と、19世紀植物図鑑の名作《フローラの神殿》を紹介します。
「美術と文学の間で揺れ動いていた若い私にとって、博物学への興味は新鮮なビジョンをもたらした。一枚で独立した絵画ではなく、言葉と複数の絵からなる博物図鑑として、ものごとの体系を表現するアイディアを得たのだ。観察対象は外界の自然物ではなく、「表立って語られることのないひそやかな人生の縮図」だった。」
このように作家が語る、制作初期の《毒花（どくばな）図鑑》や《日本花色考》には、花に託された思春期の心理が、図鑑のかたちで表現されています。やがて花のモチーフから離れ、箱型の団地の窓を扱う一連のシリーズが始動。自らが幼少期を過ごした団地の記憶を元に描いた《晒野団地四畳半詣（さらしのだんちよじょうはんもうで）》では、窓枠の奥に人々の気配が描かれます。そしてその後、窓のうちの居住者へ向けられていた作家の観察眼は、外へと向かいます。図鑑や窓といった形式から脱し、日本各地への旅を重ねながらイメージを収集した現実の記録と過去の記憶がモチーフとなった《密愛村（みつあいむら）�掘Ν検佞筺毀邁仟院覆里咾召�）》。ここでは、ロードムービーの一場面をみるかのように、今も街道沿いに遍在する歓楽施設の跡地などが再構築されています。同時に、学生時代の作家にも刺激を与えたという植物図鑑《フローラの神殿》を展覧します。本作には、28種の花々の堂々たる姿が描かれるとともに、他に類を見ない詩的な背景描写がなされ、19世紀における世界へのまなざしを見て取ることができます。
本展は、齋藤芽生作品（約100点）と、植物図鑑の至宝《フローラの神殿》（30点）を同時に展覧し、「図鑑」のように複数の絵画と言葉で社会を描く現代作家の魅力に迫ります。
展覧会は空いていた。ゴーリーと同様、すごく細かいので単眼鏡は必須。テキストもまた作品の一部なのでじっくり読む。
初期作品の短歌のようなテキストもハッとする語感。図鑑スタイルの作品に直接書き込まれたテキストや作品横にタイトルと一緒に掲げられたキャプションは、ブラックなユーモアが満載で面白い。架空の花なのにまことしやか、その実、まるで人間のことを皮肉っているようでもある。
全体的に70年代アートの香りがしたが、作家自体が1973年生まれなので、ズレがある。が、幼い時の記憶をたどったような、或いは生まれ出ずる前に仕込まれたような記憶から作られた作品だから、70年代アートと感じても不思議はない。特に晒野団地シリーズは、実家の近所に高度経済成長象徴の巨大団地があったので、その面白さにグイグイ引かれた。
齋藤芽生の作品はまるでCGのように色が美しかった。特に赤色が印象的。遊郭や花魁を題材にした絵や写真で見た赤と似ている。禍々しく、淫靡で、物悲しい。
花は彩度上げすぎの造花のようで、細い鋭い線の累積が変質的だったりするが、彼女が影響を受けたという19世紀の植物図鑑《フローラの神殿》一連の作品を見てなんだか納得。
大真面目な博物学図鑑なのだが、世界の珍奇で美しい植物に対する飽くなき探究心と世界各地の風景に対する盛り盛りの好奇心が異常なほど画面に込められていて不気味、却ってドン引き。そこが齋藤芽生が引き継いだ系譜。
風景は嘘っぽい夢の中のようで、テラテラに光る配色が毒々しかったり、そのグラデーションが綺麗すぎて、ワンテンポ遅れて変なものが描かれていることに気づく。奇妙奇天烈。やたら目を引くが、遠い記憶にあるような懐かしい風景であるところが不可思議。
会場内とカフェのあるロビーに彼女の撮った写真がスライドショーで流れていた。写真も上手！場末の寂れた歓楽街や昭和の匂いのする観光地、目の付け所が好み。彼女の視線がそこにあるから、こういう作品が生まれるんだと納得。私より15歳ほど若いが同年齢に感じる。
ミーハーのようだが、山下裕二氏蔵と絹谷幸二蔵の作品を発見、いい作品買っているなぁ。
第１章 花の迷宮〜齋藤芽生とフローラの神殿
《毒花図鑑》
《徒花図鑑》
《徒花園》
《日本花色考 二十四の図案・二十四の読解》
《自画像》
《フローラの神殿》
第２章 窓の光景
《晒野団地四畳半詣》
《晒野団地聖母子堂》《晒野団地聖処女堂》
《ロビリンス》
《香星群アルデヒド》
第３章 旅をする魂
《密愛村�掘奸�
《密愛村�検�
《野火賊》
《獣道八十八号線》
《暗虹街道》
赤字になっているシリーズは写真撮影可なので、全作品を撮ってきました。下手な説明よりキャプションを読んでもらった方がいいので、アルバムにしました。ご興味ある方、ぜひご覧ください。
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面白かったです。ハマる人にはハマるかも。12月1日まで
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