チラシを手にしたのはだいぶ前。見たいと思った。なぜなら、写真だと思ったからだ。ショーウインドウに映り込む景色が面白くて写真を撮る時がある。中のモノと外の風景が重なり、光の反射と空気の層が響き合って、予期せぬけしきが生まれる時があるからだ。
チラシを見て、絵だと知った。ますます見たくなった。撮った写真を絵にしている、わざわざ何故?知りたくなったのだ。
コートールド美術館展を見終わり、足が少々痛い。まだまだリハビリ中。でも9日までだから入場。コートールド展半券提示で300円引きの500円、ありがたい。
https://www.tobikan.jp/exhibition/2019_yasukoiba.html
画家の眼とモティーフのあわいにある世界に魅せられた伊庭靖子(1967-)は、触れたくなるようなモティーフの質感やそれがまとう光を描くことで、その景色を表現し続けてきました。自ら撮影した写真をもとに制作するスタイルは変わりませんが、近年、それまで接近していたモティーフとの距離が少しずつ広がってきました。空間や風景といったものへの関心が高まり、まわりの風景が広がることで、伊庭の絵画は新たな展開を見せています。
東京都美術館で撮影した写真をもとにした絵画をはじめ、版画、さらに新たな試みとして映像作品を発表します。伊庭の個展は、2009年の「伊庭靖子――まばゆさの在処――」(神奈川県立近代美術館)以来、美術館では10年ぶりの開催となります。本展覧会では、近作・新作を中心に紹介しながら、そこに至る以前の作品も併せて展示することで、この10年の変化とともに伊庭靖子の変わらない関心の核に迫ります。
クッション、寝具シリーズ
器のシリーズ
アクリルボックスのシリーズ
ヴェールのシリーズ
版画作品と映像作品
まず、大画面のクッションに息を飲む。光がまばゆい。眺めていると指先にその質感が伝わってくる。視覚が触覚を刺激する。柔らかくて、でもハリがあって、存外冷んやりして。
次の器シリーズは、クッションに比べて、心地よさが少ない。硬質だからだろう。触れるなら、やはりクッションだ。コートールド美術館展を見た後だからちょっと疲れていたせい?ソファに身を投げ出したくなった。
でも、モティーフをアクリルボックスに入れたシリーズは、思った通りよかった。本展のために東京都美術館での撮影も行われたそうだが、それらの作品は、アクリルボックスの手前の景色の反映と向こう側の景色が溶け合うように重なって美しい。ピントを当てるポイントとボケの絶妙なバランス。「まなざしのあわい」…あわいは漢字で書くと「間」、いいタイトルだ。
こちらは撮影可
次のヴェールシリーズは静謐。アクリルボックスの光の反射に対して、モティーフをヴェールの向こうに置くことで奥行きを感じる。深淵な世界。
版画シリーズは粒子の粗いモノクロ写真のようで、既視感がありながら、寄る辺のなさが不思議な作品だった。写真と絵画との境界がよくわからない。
最後の立体視、残念ながら私にはわからなかった。室には数人いたが、見えた人は一人だったみたいで、盛んに友人に説明していた。
10月9日まで
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