2019年12月7日12時45分ごろ、6号車ダイナープレヤデスでの食事を終えた私たちは、5号車の「サロン・デュ・ルゥエスト」に移動した。
このラウンジカーで催される「瑞風茶会」に参加するためである。
茶道というと堅苦しいイメージがあるかもしれないが、決してかしこまったものではなく、ソファに座って抹茶とお茶菓子を頂く形式である。
とはいえ出されるお茶が本格的なら、お茶を点てていただく方も裏千家を学ばれた本格派である。
すでにセッティングが進められており、台の上にはお茶の道具が並べられていた。
抹茶を入れる棗(なつめ)に瑞風のデザインが施されているのも素晴らしい。
お茶室には欠かせない掛け軸もあり、床の間を表現しているようだった。
そして12時55分ごろ、いよいよ茶会が始まった。
M列車長より挨拶とお茶をたててくださる方の紹介があり、続いてお茶の道具の紹介を頂く。
その間に、お茶を点てる準備が進められていく。
裏千家流の所作も端正で美しい。
まずは作法に従って、「里の雪」と呼ばれるお茶菓子が配られ、それを頂く。
先ほどまで昼食をたっぷり賞味したわけだが、それでもおいしく食べられる控えめな甘さである。
続いていよいよ、裏千家らしくしっかりと泡立てられた薄茶が乗客の元へ。
私は、瑞風のために作られたという抹茶碗で頂けることになった。
瑞風の緑色と、沿線の山々をモチーフにしているそうだ。
飲んでみると非常に器の口当たりがよく、薄茶が心地よく口の中に染み入ってくる。
私は茶道の心得など何もないが、心地よい身の引き締まる思いを感じることができたのだった。
さて、下車観光地である城崎温泉到着まで、部屋に戻ってひと息つく。
備え付けられていた萩ガラスのコップを使って、ちょっとおもしろい写真を撮ってみたりして過ごした。
そして14時05分、再びサロン・デュ・ルゥエストへ。すでに乗客が大勢集まっており、これからの観光先の案内があった。
そして、たくさんの方に歓迎していただきながら城崎温泉駅1番のりばに降り立つ。
予想外に大勢の方が待ち構えていたので驚いてしまった。
まるで有名人にでもなったかのようだ。
ともあれ、ここで乗客専用の「瑞風バス」に乗車する。
車内の仕様は、四季島バスとよく似ていた。
参考までに、こちらが四季島バスの車内。
こうしてみると、革張りの四季島バスの方が高級感の点で軍配が上がるかもしれない。
ともあれ、たくさんの方のお見送りを受けて出発!
こちらも手を振ってそれに応えたのだった(^^)/
ここで2班に分かれて行動するわけだが、9号車の私たちがまず到着したのは、こちら。
志賀直哉が好んで泊まったという旅館三木屋である。
さっそく中に入り、まずは伝統工芸である「わら細工」の製作体験へ。
着色した藁を、箱や陶器などに貼り付けていく工芸品である。
配偶者のぐでちゃんは一輪挿し、私は風鈴でこのわら細工を体験させていただくことにした。
私の風鈴は、好きな位置に3匹の金魚を貼り付けていくだけという、比較的難易度の低いものだった。
なので、これはまあ無難に完成させることができた(^^)b
そして、格段に難易度が高いのが一輪挿しに貼り付ける菖蒲である。
ぐでちゃんも真剣に取り組む。
その結果、持ち前の手先の器用さを発揮し、見事どちらが見本だかわからないぐらいの完成度に仕上がった!
作ったものは、その場ですぐに持ち帰ることができる。
いい旅の記念になったことは言うまでもない。
続いて2階に上がり、志賀直哉が実際に好んで泊まったという部屋「26号室」へ。
ここで少なくとも10代目という館主の方から解説を頂いた。
そして、志賀直哉も座ったであろう、中庭の見える窓際のチェアーへ。
この旅のサブタイトルは「文豪と維新の歴史をたどる旅」なわけだが、その「文豪」の白眉ともいえる舞台であった。
続いて、徒歩で旅館「ゆとうや」へ移動する。
外へ出ると、あいにく雨が降ってきてしまった。
だが、この雨のおかげで、晴れの日だったら体験できないことができた。
というのは、雨のおかげで瑞風専用の傘を使うことができたのである!(^^)!
1本2万円を超えるというジャンプ傘は、手にすることができただけでも貴重で有難かった♪
また、雨もほどなくして止んでくれたので、余計に有難かった♪
途中、飲泉体験も楽しむことができる。
飲んでみるとちょっとしょっぱいが、これが城崎温泉の特徴なのだという。
そして、次なる目的地である旅館「ゆとうや」へ。
ここはもともと大名の宿泊する旅館だったそうで、廃藩置県後に他の似たようなところが廃業する中、奇跡的に遺されたという。もっとも、1925年の地震によっていったん灰燼に帰し、その後再建されたという。
その白眉といえるのが、皇室の方々も宿泊された「詠帰亭」という貴賓館である。
館内は撮影禁止ということで配布されたパンフレットの画像と記憶にしか残っていないのだが、4つの面すべてが柾目という「四方柾」の梁や柱、唐破風の車寄せ、蚊帳を吊るための金具、鳳凰をあしらった欄間などを見させてもらった。
気品はあるが、意外と簡素だなという印象だ。
意外に皇族の居所というのはこういうものなのかもしれない。
浴室は、湯気による水滴が頭の上に落ちてこないよう天井が斜めになっているなどの工夫が凝らされていた。
最後に利用されたのは1994年のことだそうだが、再び皇族が利用される際には浴室は取り壊して新しく作り変えるという。
布団も、一度使ったら二度とつかわないとのこと。
おもてなしする側の配慮の徹底ぶりはものすごいなと思った。
さあ、ここからはしばし自由行動の時間となる。
城崎温泉といったらこんな感じ!という雰囲気のある川沿いの道をそぞろ歩く。
温泉旅館の浴衣を着て湯めぐりにいそしむ観光客の姿が、この情景に花を添えていた。
道すがらのお店も賑わいを見せる。
ぐでちゃんと二人で「ここは改めて泊りがけで訪れよう!」と心に誓ったものである。
そしてふたたび城崎温泉駅前へ。
カニのモニュメントや・・・
駅前にあるカニの顔出しパネルで楽しんだのだった♪
そして、再び瑞風に乗車するべくホームへ。
すると、先ほど山家駅でメッセージを送ってくださった方と再会できたのだった。
お見送りのためにわざわざここまで来てくださることに、驚きと感謝を禁じ得ない。
こういうファン達も、瑞風を支えているのだろう。
というわけで、下車観光が終了した。
短時間の滞在であり名残惜しいが、やり残したことがあるぐらいが旅としてはちょうどいいのかも知れない。
というわけで17時10分過ぎに部屋へ戻ると、さっそく室内で着替えを始めた。
このあと始まる、食堂車でのディナーに備えるためである。
「セミフォーマル」というドレスコードに従って、私はスーツ、ぐでちゃんはワンピースを身にまとう。
そして、17時37分の発車時に部屋で見送りを済ませると、さっそく食堂車「ダイナープレヤデス」に向かったのだった。
はたして、どんな食事が待っているのか?
この続きは、また明日レポートしたいと考えている今日の私であった
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