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2020年10月24日12:13
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河内見聞記�� 60 永平寺は城に見えた！
秋という時間の線は一本の道のようでもある。故郷からの稲刈りの便りの次は、新米が届いた。例年のように、広島の旬の松茸も宅配函の一角を占めていた。
先週山茶花（さざんか）の苗を買って、数日かけて土づくりをしていた鉢に、植え替えた。山茶花、山茶花咲いた道♫、焚火だ焚火だ落ち葉焚き♬〜〜〜 花の咲くのが待ち遠しい。
夏場の食卓にアクセントをもたらしたパクチー、三鉢には新たに冬野菜、小松菜を撒いた。これは直ぐ芽を吹いた、そして慌てて間引きをするほどの生育。残り三鉢のパクチーも来週あたりで収穫し、小松菜の第二弾を撒くことにしようと考えている。この冬は、是非鴨の次を目指して、猪、鹿、羊などの鍋料理を満喫したいものだ。
さて秋の道、今年は北陸道を走ってみることにした。私の旅は大体において好い加減な閃きによって方向は決まる。普通はいくつか候補が頭に残っていて、それから引いてくることが多い。今回は、北陸の他に、和歌山・根来寺、三重・赤目の滝から伊賀の里のルートがあったが温泉とのコンビで永平寺〜芦原温泉〜東尋坊に決定した。
永平寺、道元禅師の開いた座禅修行の道場で、わが国最大の末寺を持つ曹洞宗の大本山。知らなかったが、関東には同格本山として横浜の総持寺がある由。修行の場、僧堂を全国に三十カ所持ち、駒沢大学もその傘下だという。道元の禅の教えは、日本の仏教でもっとも難解かつ単純とも言われる。釈迦本来の教え、仏祖正伝といわれ、「正法眼蔵」に説く考え方は確かに難解を極めていると言わざるをえない、がそれはまあいい。昔、正法をかじろうとして諦めたことがあるのである。
永平寺には大小70余りの建物があるが、中心をなすのは七つの伽藍（寺院の建物）で、法堂、仏殿、僧堂、庫院、山門、東司、浴室を「七堂伽藍」と呼ぶ。住持が説教をしたり法要を営んだりする法堂、昼晩のお勤め・修行をする仏殿、座禅、食事、就寝など修行の根本となる僧堂、食事を司り、接待を行う庫院、正式の門である山門、お手洗いの東司、それに浴室からなる。お参りに来る私たちは、下から上、左から右へと拝観して廻るのである。所要はおよそ1時間半から2時間かかる。
さて永平寺で最も印象に残ったことを書き記しておく。一つは、永平寺は城郭、もしくは城の天守閣に思えたこと。京都や奈良にある名の有るお寺は伽藍が数多くあり、それを一つずつ歩いて廻るのであるが、地面に沿っていくか、山のような地形なら石段を上ったり下ったりすることになる。京の仁和寺も清水も、奈良の薬師寺や唐招提寺も、長谷寺や三井寺もみなそうである。しかし、永平寺では最初の建物である、事務部のような吉祥閣で靴を脱ぎ、袋に入れて持ち歩くことになる。法要をしたり位牌安置をしたりといった信徒関連の建物を過ぎ、七堂伽藍からが本格的な拝観となる。東司から僧堂へ階段を登る。僧堂から仏殿へは平たい廊下を歩いて渡る。その廊下を戻って、また最上部の法堂への階段を登るのである。登りきると再び平面なので廊下然としてくるというわけである。勿論階段や廊下には屋根となる部分が付いているので、雨に濡れることはない。つまり、お城の一階から二階へ階段を上り、大部屋なら廊下を通って移動し、さらに三階部へは再び階段を使い、最上階まで階段で上るあの感覚なのである。実際は真上に上がるのか斜面を上がるのかの差はあるものの、外を歩き廻る感覚とは違う。これは新たな発見であったし、寺院の伽藍配置としては稀有なものに映ったのである。
二つ目。永平寺は法要を営んだり、拝観したりできる寺院であると同時に、僧侶の見習いたる雲水たちの修行の場でもある。入り口の掲示に、写真は撮っても良いが、雲水の入ったところは不可とあった。修行僧たちは厳しいと定評のある生活を通じて修行をしている。例えば、僧堂、東司、浴室の食事や風呂や就寝の場で話すことは許されず、「三黙道場」と呼ばれている。庭で掃除をする修行僧や、廊下や階段ですれ違う彼らは、拝観者に見向きもしないし足早に歩くし、目つきがきつい。明らかに京都のお寺ですれちがう人たちとは違う人たちである。この度の訪問では、恐らく普通の僧侶には会わなかったのであろう。僧の格好をした雲水、修行僧たちだけを見たのだと思う。
表参道の土産物屋はほぼ開店しており、長谷寺で見た寂しい光景はなかった。GO TO某のお陰か、人出ももどりつつあるようでやや安心した北陸路への旅であった。
その日、私たちは芦原温泉の湯につかり、翌日東尋坊の絶壁を眺めて帰阪。秋の好天を愉しんだ二日間だった。
（おわり）
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