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2020年10月02日18:49
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河内見聞記�� 55 故郷の今
実家の二階から見える瀬戸内海
GO TOトラベルは残念ながら、GO TOトラブルになってしまったが、今週は久しぶりに広島へ帰ることになった。心躍る帰省なら良かったのだが、残念ながら近い親戚の人に不幸があったのである。実は台風とほぼ同時併行的に、最終段階に至っていたのが、少し伸びて今週になったわけである。人間齢（よわい）を重ねて行けば、どうしても周りの人々も年をとり、別れの時を迎えるのは必然である。それ以上のことはここではやめておこう。
書いておきたいのは、故郷の今のこと。最後に広島へ帰ったのは1月末だった。正月の喧騒を避け、時間差で帰省していた。それからコロナが襲撃してきた。直後に守口市まで健診に出かけたが、それ以降、自分の町から出ないようにした、所謂ステイホームの日々。6月から車で奈良、岡山、徳島へ行ったが、電車で大阪や京都へ行くのは完全に控えていた。今回広島へ向かうのに7か月ぶりに大阪市に入った勘定だ。如何に3密を避け、マスクをして消毒を心掛けても、症状のない感染者が東京に次いで多くいるわけだし、電車内のつり革や手すりに見えないウイルスがウヨウヨしているのは事実であろう。すべての人が感染の危機に直面しているといってもおかしくないだろう。だから広島での行動には細心の注意が必要だった。とにかく控えめに、興奮しないようにして、飛沫の拡散にならないようにと意を尽くしたつもりである。
先ず、故郷の山野、田園の香りと色彩に心奪われた。これらの写真のとおり、稲田と住宅、背後は500ｍ級の山並みが迫る典型的な瀬戸内の海岸線。10月初旬といえば、稲が実り黄金色の稲穂が光り、穂の香りが車窓から入り込んでくる。私の住む大阪の郊外でも田んぼはほとんど消えていき、わずかに残る水田の脇道を散歩するとその穂の香りが感じられるが、故郷の県道を走るとその香りが途切れることなくつづく。それと印象的だったのは、この時期が旬の彼岸花の群れ。我家の近くの公園にも結構花を咲かせるが、今回見た赤い花の連続は百メートルを超えていた。さらにその近くにはコスモスの群れもあった。彼岸花もコスモスも幼年期より慣れ親しんだ花であるが、この度殊更に驚いたのは、この時期田園地帯を走ることがなかった所為であろう。確かに秋に帰省したことはほぼ記憶にないのである。（残念ながら駐停車できなくて、花の写真はない。）
次に、同じ廿日市市にある宮島の今。写真は対岸の地御前から撮ったものだ。夏の広島の風物詩とも言える厳島神社の管弦祭で、本土側から出艇する地御前神社より少し島に近い田尻海岸からのものである。島の中心に聳えるのは弥山（みせん）で、晴れた日には頂きから愛媛の石鎚山も見えると言われている。私は経験上、凝視すれば厳島神社の正門ともいえる朱の大鳥居が見えると思って探したが、らしきものがないのである。確かに左に豊国神社（千畳敷）は見える、すぐ右手に鳥居があるはずなのにない。が、勘で、神社の位置と思われる点を拡大し、ピントを合わせて撮ったのが右の写真だ。昨日帰阪し、その拡大した部分をよーく見ると、何か箱のようなものが見えるではないか。というので、鳥居の今をネット検索してみると、判った。例の大鳥居は、自分も承知していなかったが、1875年に建立され、すでに140年も風雨に耐えて来ているのだそうだ。かなりの損傷も見受けられ、昨年より大改修中とのことである。最後に鳥居を見たのは昨年の初詣のときで、何度となく訪れていながら、最新の事実は把握していなかったわけである。
「故郷は遠きにありて、想うもの」、との名言がある。かつての私は、特に海外で生活していたとき、その言葉のとおりに、時として故郷・広島を想ってきた。が、今のように、年に二度三度と往復する近い存在になっていても、やはり故郷を想わない自分はありえないように思う。ただし、その対象としての故郷は、心の中にある山野や田園であって、今の故郷の姿ではないようにも思われるのである。時間とともに言葉の持つ意味も変化していると思ったのである。
（おわり）
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