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2019年12月15日08:26

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異議なし! …… 高島裕『バカの幸ふ国』

「短歌人」の時評欄を担当していた時(2017年〜2018年)、他の結社誌の時評欄はどんな方がどんなことを書かれているのだろう? などということが気になり始めて、「未来」「塔」「かりん」など、それぞれの結社のサイト上で時評が読めるものについては時々チェックしていた。「短歌人」のサイトも時評を公開してもいいのでは? と思っていたら、今年になって公開が始まったのだった。

昨年12月号で僕の時評の担当は終了したのだが、その後も時々他結社の時評を覗いてみる癖がついてしまった。今年の「未来」3月号の高島裕さんの時評は、「短歌研究」(2019年1月号)の「平成の大御歌と御歌」を大いに歓迎するものだったのだが、この地点で思考を停止してはいかんだろうと思い、拙稿(「『大御歌』『御歌』の位相」[「短歌人」2019.7])で批判的に論及したのだった。その後、高島さんからの反論があるだろうかと思って時々チェックしていたのだが、特に反論はなさらなかったようだ。

で、ついさきほど直近の高島さんの時評(「未来」2019.12)を読んで、このたびは彼の説に諸手を挙げて賛同したいという気持ちになった。下記のページにて、今のところ一番上に掲載されている『バカの幸ふ国』という文章である。

http://www.miraitankakai.com/comments.html

くだんの「表現の不自由展・その後」をめぐる問題について、「松井や河村の発言やそれに続く動きは、そんな[「検閲」などという]上等なものではない。『問いかけ』として置かれているものと、政治的主張との区別がそもそもできていない者たちが権力・暴力を行使して表現を圧殺している、ということであり、つまりは群れなすバカが芸術を狩る、という事態が進行しつつあるのだ」と彼は書いている。とても大事な所を突いている発言だ。さらに「反対者はこの企画展に税金が使われていることを言い募っているが、日本国やその地方自治体に税金を納めているのは、日本人だけではない」とも彼は書いていて、ああ、そうだった! と改めて気づいたのだった。参政権は認められていないのに納税の義務は負っているひとたちもまた、日本国やその地方自治体に税を納めているのだ。

高島さんの文章は後段で角川「短歌」2019年8月号の特集「戦中のうた」から何首かを引き、「危機は繰り返される。しかし、同じようにではない。この先、わたしたちが向き合わねばならないのは、大東亜戦争の際の国家権力よりも、なお一層愚劣で幼稚な、未知なる『権力』である」と記している。傾聴に値する指摘である。

高島さんは新左翼から転向して[*]熱烈な皇室ファンになった、というようなお方なのだろうかというようなイメージを、なんとはなしに抱いていたのだが、このたびの文章を読んで、確実にこの同時代の問題と向き合っておられる論者なのだ、と思ったのだった。

[*]『セレクション歌人 17 高島裕集』巻末年譜1989年〜1991年の項参照。


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