ようやくまっとうな言説に出会った。高校の国語から文学がなくなる、とまでは言わねど文学が薄くなる、それに代えて論理的な文章の読解を重視するというカリキュラム改革に対して、文学の軽視は問題だという批判を述べる文章をいくつか読んだ。
その批判は当っていないだろう、とまでは思わぬが、しかし、学校だの国語の授業だのってそんなに大切なものなのか？ あらゆる文化遺産はカリキュラムに乗り、学校化されることによってその生気を削がれてしまうのではないか？ というようなことをぐずぐず思っていた。
そこへ、保坂和志「文学と教科書」−−「もっと遠くを見ろよ」（東京新聞２０１９．１１．１８夕刊文化面）を読んだ。しかり、しかり、と思った。以下途中スキップしながら保坂の文章を引く。
［以下引用］
国語の教科書から文学がなくなるそうだが、教科書から教材としてなくなることと文学の存亡は関係ない。／私がロックを好きになったのは、音楽の授業と関係ない。私は中学二年の秋にロックにハマったが、それは学校の外に出たかったからだ。［…］文学だって同じことだ。私は高校一年のときに深沢七郎を読むようになったが、深沢七郎はもちろん国語の教科書には入ってない。私はたぶん、あの頃だと「週刊プレイボーイ」か「平凡パンチ」の記事あたりで、深沢七郎という変な人がいることを知って読んでみたんだと思う。［…］国語の授業で文学作品が載っていると、それを読解しろとか解釈しろとか言ってくる。読解は、論理的文章ならともかく、小説となると作者や登場人物の内面が問題となり、「意図」や「真意」が設問されることになる。それは「忖度」の予備演習になるか、人の感傷的な心の動きを思考と勘違いさせるだけだ。／［…］「いちいち、そんなこと言ってないで、もっと遠くを見ろよ」と思っているのに、入試の設問では足元ばかり見るようにさせられる。／文章の読解力というものが、そもそも奴隷の精神なのだ。文学は本来、自由な精神の産物なのだから、出会いは教科書の外がいい。これで小説家もロック・ミュージシャンと対等になれた。
［引用終り］
僕はかねてより、文学、とりわけて「詩」は学校などというやさぐれた場で扱わないでほしい、と思っていた。現代詩、俳句、短歌が教科書に載る。教師はその正しい解釈を教える。最後はテストに、例えば次の詩を読んで作者の気持ちを最もよくあらわしているのはどれか、１から５の中から選べ、とかいう話になる。このようにして学校という場は詩を愚弄するのだ。
学校という場に常に存在しているのは「教える−教えられる」という関係である。それは「評価する−評価される」という関係に至る。ということを教師のポジションから問い続けた茅嶋洋一さん（元福岡県立伝習館高校教諭）が先月２６日に亡くなられた。伝習館闘争を知るひとも少なくなってしまっただろうが、僕にとっては忘れることのできない問いの出発点であった。
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