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2020年02月07日23:54

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談合というもの無しに地域を護るためには(土木行政のお話)

 これは土木行政というものについて知って頂くために是非とも皆様に熟読し,考察を深めて頂きたい記事です。

 昔は道路の除雪や緊急補修(陥没した穴の修繕など)は役所が直営で行っており,それを担当する作業員(技手)も公務員として役所に雇われていました。しかし現在,そういった手法を取っている役所は少なくなっており,大概は建設業者に委託されています。
 除雪については記事で説明されているので道路緊急補修について簡単に説明すると,役所の道路所管部局出先機関(以下「土木事務所」)や役所の外郭団体が道路パトロールを行うほかに警察やバス・タクシー会社などにも協力を依頼して損傷個所の把握に努め,損傷個所が発見されると土木事務所か警察署に連絡が入るような体制が取られています。土木事務所に連絡が有った場合には直接,警察署に連絡が有った場合は土木事務所を経由し(夜間休日等で土木事務所が無人の場合は警察署から直接)担当補修業者に連絡を入れ,業者は現場に急行して補修作業を行うといった形になっています。当然ながら積雪や道路損傷の後に業者を選定していては間に合わないので,事前に「今後半年間の道路緊急補修業務」といった形で行われる入札で決定されています。

 このような形で道路の安全は確保されているのですが,実はこうした事業を受注しても建設業者にとっては全くの採算割れにしかならず,このスキームが建設業者の過剰な負担を前提に成立しているということは意外と知られていません。契約時にごく僅かな委託料が払われることもありますが,記事にも触れられているように作業賃の殆どは出来高払いで,機械を用意し担当者が24時間待機を強いられるという過酷な業務には全く見合わないというのが実情です。これは近年の人手不足や工賃の高騰によるものではなく,不景気の頃から同じ問題を抱えておりました。それにも拘らず業者が落札するのは「役所に恩を売っておけば見返りがあるかもしれない」という期待感もあるでしょうが,基本的にはCSR(企業の社会的責任)を果たすという使命感としか説明のしようが無いでしょう。

 一方の役所のほうでもそうした会社を粗末にする訳にはいきません。全く利益の出ない業務をやっても会社に何の見返りも無いことが明らかになれば,除雪や緊急補修という緊急性・必要性の高い業務を誰もやってくれないという事態に陥ってしまいます。加えて言えば建設業者というのは地域において雇用を支える重要な存在であり,その倒産が地域経済に与える悪影響は非常に大きなものです。ましてCSRという高貴な使命感を持つ「地域の宝」ともいうべき会社が傾き倒産してしまうのを座視するのは公僕の良心にも著しく反することです。
 そこで除雪や補修業務を請け負ってくれた会社への謝礼として非常に儲かる別事業を用意し,それを落札させる形で埋め合わせを行おうという話になります。同業他社が空気を読んで調整してくれる場合もありますが,使命感は無いくせに儲けにだけは熱心な同業他社がその「謝礼」事業を横取りしようとした場合には土木事務所の入札担当者が補修請負業者に落札させるというための調整を行います。
 お分かりのとおり前者が談合,後者が官製談合です。

 「それはおかしい。談合も官製談合も法令違反ではないか」という批判が予想されるところであり,その批判自体は正解です。しかし「民間企業は利益が出なければ潰れる」という何人も否定できない冷厳な事実,また道路の除雪や緊急補修といった作業が絶対的に必要であるという万人が同意する事実を前に「違法性が」云々といった空虚な形式論を並べ立ててもそれは意味が有りません。事実,談合を徹底排除した結果として利益の出ない事業に対する「報酬」を得ることが出来なくなったために,道路の除雪や緊急補修作業について「誰も入札しない」或いは「入札者全員が予定価格を大幅に上回る札を入れた」といった理由で入札不調になる例が実際に発生しています。

 ではどうすれば良いか。「談合は本当に悪なのか」「『税金の無駄遣いを許すな』という口実で役所が民間企業から物品や役務を安く買い叩くことが妥当なのか」といった考察を深めていくことも有益でしょう。僕は個人的には「談合は悪」「税金の無駄遣いを許すな」といった考え方が本当に正義なのかについては相当に懐疑的だと申し上げておきましょう。
 とはいえ,現実に即して考えれば「談合の何が悪いのだ」という主張を押し通すことが容易な道ではないことは明らかです。確かに談合も官製談合も法令違反であることは否定出来ず「談合をやる」という主張がただの居直りのように思われるのは容易に想像できることです。
 ならば,道路の除雪や緊急補修といった業務の負担を平準化するか,この種の業務自体で業者の採算が取れるように是正していくしか無いでしょう。具体的には特定の一業者ではなく地域の建設業協会に当該業務を発注するように改め,建設業協会所属の業者に輪番で待機してもらうようにするといった形が考えられます。或いは特定の一業者に発注するにせよ,この記事にもあるように出動しなかった日にも業者に待機料を支払い,かつ次の段階として入札の予定価格を大幅に上げることが必要です。またどちらの場合にも「土木事務所が機材を用意するとともに,業者宿直室を設けてそこで待機してもらう」といった改善も必要かもしれません。業者の負担を減らすのみならず「道路損傷については24時間365日,土木事務所に直接連絡すれば済む」という形で対応の迅速化にも資することでしょう。

 これまで安値で発注出来ていた業務を高値にするというのは有権者のみならず役所内部でも大きな反発が予想されることです。まして機材や宿直室を新たに用意するなどという話は。しかし「建設業者も利益を出せなければ潰れてしまう」「これまでは談合等の形で業者に支払っていた適正対価を,今後は談合無しに払う必要がある」ということを強調し,必要な改革を進めていかなければならないでしょう。談合という形を取らずに地域を支えようという意欲を持つ高貴な使命感を持つ者に報い,地域を護るためには。

 今回の主張をお読みの皆様にご賛同を頂けたなら,筆者の僕としてはこれに勝る喜びはありません。



除雪車に「待機料」 記録的少雪で検討 宮城・加美町
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202002/20200204_11018.html
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