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2020年01月20日23:59

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医学の分野においても温故知新を

 以前から気になっていた記事です。

 1000年前の医学書に記された処方薬がMRSAに効く,というのは大変心強く喜ばしいことです。今後もこの研究を進め,是非とも耐性菌という人類の大敵を打ち負かしてほしいと大きな期待を抱いているところです٩(๑˃̵ᴗ˂̵๑)۶ °

 もっとも本文中の「薬品が効く仕組みについては完全には解明できていない」という記載や「1000年前の抗生剤が本当に機能するとはいまだに信じられない」「最初の結果が出た時は、ただぼう然とした。こんな結果が出るとはまったく予想していなかった」という研究者の感想については,日本人である僕などは「おやまぁ(・〜・´)」と感じます。恐らく日本人であれば僕と同じように感じる方も多いでしょう。きっと中国人や韓国人も日本人と同じ感想を抱くと思います。
 中国の伝統医学である中医学や,そこから枝分かれして日本で発達した漢方医学,韓国で発達した韓医学においては,古い時代に開発された薬品の使用は全く珍しくありません。たとえば風邪にしばしば処方される葛根湯という薬品がありますが,これは中国後漢の医師である張仲景の著書「傷寒論」にも見える非常に古い薬品です。この他にも遥か昔に開発された漢方薬の使用はごく一般的で,特に事新しく話題にするようなことではありません。そしてそれらの多くはどのような仕組みで効くのかについて今日の医学薬学をもってしても完全には解明されておらず,ただその大きな薬効が経験的に知られているのみであったりします。また患者の体質や病状に合わせて使用される薬品を変えるのは当然のことですが,これも中国では陰陽五行説,日本では「証」という概念に基づいて判断されています。それらが西洋医学で言うところの何なのかについてはやはり完全には解明されていませんが,そうした伝統的な概念に基づいた医学が大きな成果を挙げていることもまた日本人や中国人,韓国人にはよく知られているところです。

 この点,西洋医学ではどうなのでしょうか。たとえば「医聖」と称されるヒポクラテスは四体液説という概念に基づいて数多くの病人を治療し,数多くの治療法を「ヒポクラテス全集」という著書にまとめました。これらは「傷寒論」にも比すべき貴重な文献ですが,現代の医師たちは四体液説を基にヒポクラテスの処方を用いることがあるのか・・・と疑問を覚えた僕は知人の医師に尋ねてみました。回答は「否」。ヒポクラテスの唱えた四体液説は歴史の遺物であり,彼の編み出した処方も敢えて現代において使用されることは無い・・・と。「現代の医学はヒポクラテスの時代とは比べ物にならないほど発展しており,敢えてそのような古い文献に基いて医療を行う必然性は全く無い」とのことでした。

 なるほど,現代医学は我々一般人の常識を超えるスピードで長足の進歩を遂げており,それによって僕を含めた世界中の人々が死や苦痛を免れていることは疑いの無い事実です。「何を好んで古い医学書を紐解く必要があるのか」という彼の態度は道理に叶ったものでしょう。とはいえ,古い時代の医学が今日において使用に耐えないとは断定できません。先に述べた「傷寒論」は西暦220〜230年頃の書物ですが,そこに記された医学理論や処方薬は今日においても立派に効果を発揮しているのですから。
 この指摘に対して,僕の知人の医師ならばこう答えるでしょう。「ヒポクラテスや張仲景が非常に優れた医学者であること,今日においても通用する治療法を幾つも発見したことは事実である。しかしそのように彼らの発見のうち現代に通用するものは現代医学の中に引き継がれているので,現代医学さえ学べば彼らの有益な知見は自ずと身に付くのだ」と。・・・これは恐らく真理でしょう。

 しかし,現代医学の足りない点を補う場合,現代医学では治療できない場合など,ときには古くからの治療法を活用できる事態も存在するのではないか,と思われます。優れた治療法によって陰に追いやられた治療法はたくさん存在しますが,それらには何の効果も無かったという訳ではありません。
 たとえば手術療法や放射線治療法の無かった時代,日本や中国,韓国の医師たちは癌の患者に補中益気湯や六君子湯といった漢方薬を投与して患者の体力維持増進を図りました。この治療法は現代でも,手術等で体力を失った患者や残念ながら手術の出来ない患者に対しては有益でしょう。
 この理屈は,一旦は克服したはずの病気が再び人類に襲い掛かってきた場合にもそのまま該当します。抗生物質の開発によって人類は感染症の危険から一度は逃れたかに思われておりましたが,近年は冒頭にも述べたMRSAのような薬剤耐性菌の増加により,人類の安全は再び重大な危機に瀕しています。新しい抗生物質の研究は勿論重要ですが「抗生物質の無かった時代には感染症にどのような治療を行ってきたか。それら治療法の中に効果の高いものは存在しないか」と再度研究することは非常に有益なことだと考えられます。

 今回行われた1000年前の治療薬の治療効果についての研究はまさにそうした見地から非常に高く評価されるものでしょう。そしてその方面での研究は,古くからの医学を今日においても活用している日本や中国,韓国が得意とするものであるはずです。「医学の分野においても温故知新を」と世界に訴えると同時に,この方面で日中韓各国が時に競い,時に手を携えて世界をリードしていくことを強く望んでいるところです。



千年前の薬で耐性菌が死滅 中世の医学書から再現
https://www.cnn.co.jp/fringe/35062578.html
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