mixiユーザー(id:1980861)

2016年05月13日01:21

417 view

【300字で掌編、短篇】濁色も乳色も混じらず斑も無い深紅

皇帝の戴冠式の絵の依頼を受けた画家が居た。
その皇帝は国家の統一のみならず、周辺諸国を平定し欧州に大帝国を築いた。
画家は戴冠式の風景を思い出し描き始めた。
マントの赤、ヴェールの赤、絨毯の赤。
画家は硫化水銀、ルビー、紅花とあらゆる画材を試したが、
画材の濁りや色むらで納得できる色が出せなかった。
暫くして、赤を残して全てを描き終えた画家は、自分ひとりと食料を残し
弟子に部屋を封印するように命じた。
弟子はそれに従った。
食料と水が尽き果てた10日後、弟子は封印された扉を開ける。
そこには濁色も乳色も混じらず斑も無い深紅が塗られた絵画が飾られ、
黒ずんだ画家の死体が横たわっていた。(完)

拓也◆mOrYeBoQbw
1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する