55 私の父の暮らし向きは非常に窮屈であったので、私達は必要に迫られて自分の手で働き、機会ある毎に日雇いの仕事やその他で雇われて働いた。私達はある時は家で働き、またある時は外で働き、絶え間なく働く事で不自由のない生活をする事ができた。
56 千八百二十三年に、父の家族は、私の長兄アルビンの死によって酷い苦難に遭った。千八百二十五年十月に、私はニューヨーク州シェナンゴ郡に住むジョサイア・ストールという名の老紳士に雇われた。彼はペンシルベニア州サスケハナ郡ハーモニーでスペイン人によって開かれた銀山の事を聞き、私を雇い入れるに先立って、できればその銀山を発見しようとして試掘を行っていた。私が行って彼と共に生活するようになってから、彼はほかの使用人達と共に私を伴って、その銀山を探す試掘に当たらせた。私はそこで一か月ほど働き続けたが、私達の仕事は上手くいかなかった。それで遂に私は、その老紳士を説き伏せてその試掘をやめさせた。この事から、私が山師であったという話が広く言われるようになったのである。
57 私はこのように雇われていた間、その地のアイザック・ヘイルという人の家に下宿していた。私が(ヘイル氏の娘である)私の妻エマ・ヘイルに初めて会ったのは、そこでの事であった。千八百二十七年一月十八日、私がまだストール氏に雇われて働いていた時に、私達は結婚した。
58 私が示現を見たと主張し続けたので、私に対する迫害は尚も続き、妻の父の家族は、私達が結婚する事に酷く反対した。したがって、私は彼女をどこかよそに連れて行く他なかった。それで私達は出掛けて行き、ニューヨーク州シェナンゴ郡サウスベインブリッジのタービル治安判事の家で結婚した。私は結婚後すぐに、ストール氏の元を去り、私の父の家に帰って、その季節は父と共に農業に従事した。
59 遂に、版と、ウリムとトンミムと、胸当てを手に入れる時がやって来た。千八百二十七年九月二十二日、私がいつものように満一年目に、それらが隠されている所へ行くと、あの同じ天の使者が、それらを次の責任と共に私に渡して下さった。即ち、私はそれらに対して責任を持たなければならない、もし私が不注意や自分の怠慢でそれらを失うならば、私は絶たれるであろう、しかしその方、つまりその使者がそれらを取りに来られるまで、私がそれらを保存する為あらゆる努力を尽くすならば、それらは守られる、というのであった。
60 私は間もなく、なぜそれらを安全に保つ為にそのような厳しい責任を課せられたのか、また私が自分に求められた事を成し遂げた時にそれらを取りに来るとなぜ使者が言われたのか、その理由が分かった。私がそれらを持っている事が知れるや否や、私からそれらを奪おうとするあらん限りの努力が払われたからである。その為に思いつく限りのあらゆる策略が実行に移された。迫害は以前にも増して激しく、容赦のないものとなり、大勢の人が、できれば私からそれらを奪おうと絶えず機会をうかがった。しかし、私が求められた事をそれらによって成し遂げるまで、それらは神の知恵によって、私の手の中で無事であった。そして、前もって定められた通り、使者がそれらを取りに来られた時、私はそれらを使者に引き渡したのである。そして、千八百三十八年五月二日の今日まで、その使者がそれらを管理しておられる。
61 しかしながら、騒ぎはなおも続き、父の家族について、また私自身について偽りを言い広める為に、常におびただしい噂が流された。もし私がその千分の一を述べたとしても、何冊もの本になるであろう。しかし、迫害が耐えられない程になったので、私はやむを得ずマンチェスターを離れて、妻と共にペンシルベニア州サスケハナ郡へ行く事にした。私達は非常に貧しく、迫害が酷い為に貧しさから抜け出せず、苦難の只中で出発の準備をしていた時、マーティン・ハリスという名の紳士と親しくなった。彼は私の所に来ると、私達の旅の助けになるようにと五十ドルくれた。ハリス氏はニューヨーク州ウェイン郡パルマイラ町に住んでいる人で、社会的地位のある農場主であった。
62 この時宜にかなった援助によって、私はペンシルベニアの目的地に着く事ができた。そしてそこに着くとすぐに、私は版から文字を写し取る事を始めた。私はかなりの文字を写し取り、ウリムとトンミムによってそれらの多くを翻訳した。これを行ったのは、十二月に妻の父の家に着いてから翌年の二月までの間の事であった。
63 この二月のある時、前に述べたマーティン・ハリス氏が私達の所にやって来て、私が版から書き取っておいた文字を取り、それを持ってニューヨーク市へ向かった。彼とその文字に関して起こった出来事については、彼が帰って来て私に語った彼自身の言葉をお伝えする。それは次の通りであった。
64 「私はニューヨーク市へ行き、翻訳された文字をその翻訳と共に、文学上の学識がある事で広く知られている一紳士、チャールズ・アンソン教授に披露した。するとアンソン教授は、この翻訳は正確であり、エジプト語から翻訳されたものでこれほど正確なのを見た事がないと述べた。その後、私がまだ翻訳されていないものを彼に見せたところ、彼は、それらはエジプト語、カルデア語、アッシリア語、及びアラビア語であると言った。また、それらは本当の文字であると言った。そして、それらが本当の文字である事と、それから翻訳されたものの翻訳も正確である事をパルマイラの人々に証明する証明書を私にくれた。そこで、私はその証明書を取ってポケットに入れ、正にその家を去ろうとした時、アンソン氏は私を呼び返して、どうしてその青年は金版を見つけた場所にその金版のある事が分かったのかと尋ねた。そこで私は、神の天使が彼にそれを明らかにしたと答えた。
65 すると彼は、『その証明書を見せて下さい』と私に言った。それで私がポケットからそれを取り出して彼に渡すと、彼はそれを取って細かく破って、今どき天使の働きのようなものなどないと言い、また、その版を持って来れば翻訳してあげようと言った。そこで私は、版の一部は封じられており、持って来る事を禁じられていると告げた。すると彼は、『私は封じられた書を読む事はできない』と答えた。私は彼の元を去り、ミッチェル博士の所へ行ったが、彼も文字と翻訳の両方に関してアンソン教授が言った事を認めた。」
ログインしてコメントを確認・投稿する